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48話【割れたペンの音は始まりの音だったようだ!】


◇◇◇◇◇◇???side◇◇◇◇◇◇◇◇


 学校に行くことが嫌いだった。

理由は無い、今になったら思い出せない。

7歳の頃から学校に行くことに駄々を捏ねるようになって、毎日無理矢理連れて行かれた。

怒鳴れたりもしたけど、毎日ママの布団に忍び込むくらいにママが大好きだった。

10歳になると怒鳴れたりしても休んだあと…小説を書くのが好きだった、たった500文字も無いけどそれを毎日毎日、書いていた。


「…設定決まってるのにこの子名前……

永遠に決まらない…」


 それ以外は学校に行く代わりに家事をした。

楽しかった、褒められるのが嬉しかった。

けどやっぱり、お母さんはあたしが学校に行くことを望んでいたから。

何の価値も無い。

…御使いを頼まれて、らんらんと行こうとして年の近い姉が着いてきた。

理由は多分、年の近い姉が外に出る事が少なかったから外に出すためだったと思う。


「アンタ、クラスで一番嫌われてるよ。」


 そう言われた事を覚えてる。

学校にも行っていない、年齢だって何歳も違う、妹だから事実は分からないけど。

それでも、姉(・)の中の自分のイメージはそうだったんだろう。

嫌われて居たんだろう。

家族間の空気を険悪にして、休んでて、羨ましかったんだろう。

知ってるよ、知ってる…ごめんね。


 父はいつも仕事で居なかった、居ても母の事が大好きで学校に無理矢理連れて行かれるだけだったから好きとは思えなかった。

 年の離れた兄は比較的に甘やかしてくれては居たけど、それでもきっと泣き虫のあたしのことを煩いと思って居た部分はあるだろう。

それでも元々あんまり関わろうとはして来ない、話すことも珍しかった。


「アンタのせいで死ぬんだよ。」


 ある時に母が…ママが目の前で自殺をしようとした。

理由はあたしが学校に行かなかったから。

学校に行けないのにも、理由が無かったから。


 それなのに、あたしは何も出来なかった。


「ごめんっ…なさ…たすけて……おねがい…おねがい…だから…っ…いっかいで……いいからっ……

たすけてよ…ぉ……

ごめんなさ…い…まま……

……ごめん…なさい……いきてて…ごめん…ね…」


 どれだけ愛しても、どれだけ縋っても、どれだけ書いても、 それが助けてくれることは無い。

それを知っているから、ペンを強く踏みつけたのに、何も…何も変わらない。


知ってる、知ってるのに。

あたしはそ(・)れ(・)にずっとずっと無意味に縋っていた。


「…もう…いやだよ…いやだ…

もう…いきたくない…よ…

かきたくない…゛…か゛き゛たくないっ!

こんな゛…こんな駄作゛…っ!」


 もしも、こんな作品を書いていない私だったら。

 もしも、書くことに1ミリも興味の無い私だったら。

 もしも、私が学校に行けていたなら。


「…かき…たく…なかった…」


 その世界は少し、変わっていたのかもしれない。


 昔の自分に会えたならあたしは殺すかもしれない。

いや、それで今のあたしが楽になるなら。

家族が幸せになるなら。


「……ちゃん…」


 ずっとずっと願ってる、あたしが過去の自分に会ったなら、こんな無意味なことをする前に絶対に!


「こんな人生(物語)!書きたくなんて……!!」


 死にたかった


「えいきちゃん。」


 だけどそこで初めて、ペンの割れた音がした。


◇◇◇◇◇◇◇ミチルside◇◇◇◇◇◇◇◇


「……だ…れ……」


 彼女がペンを落とした音だけが、その場に響く。


「ふふ、そうだね【未来の貴女】かなぁ。」


 …きっと私は、【睡蓮】じゃない。

【ミチル】、ただのミチル。

主人公補正も何も無い、【睡蓮】の記憶を持たされただけの、ミチル。


それでもね!このスキルのお陰で何よりも【睡蓮】を…思い出せるの。


「未来のあたし…

未来から……あたしを殺しに来てくれたの…?」


「あらら、殺しに来るって随分と物騒ね。」


 いつかの私は、貴方(過去の自分)に死んで欲しかった。

全てがゼロになればと思った。


「…殺しに来る以外に…何の意味があるの。」


「うーん、少なくとも貴女の考えてる足に障害残して介護人生では無いかな。」


「なら…どうして……」


 それでも、私が人生を通じて思っていたのは。

ゼロにしたいとかじゃないから。


「恨んでるけど、悲しいけど。

それ以上に好きだったの。」


「……えっ?」


「大好きなママも。先生も。綺麗な世界も。人間も。パパも、姉も。

勿論過去の自分(貴方)も。

恨みを忘れちゃうぐらい幸せだったから!」


 どうしてかしら、少なくとも悟った訳では無いわ。

食欲はあるし。

でも、ある程度の恨みはすぐに忘れちゃうし。


「…人間って、そんなものなんじゃないかしら。」


 これは持論だけど、そもそも同一人物だしね。


「昨日話した相手にイラついても、今はただ会いたかったり話したかったり。」


 仲直りする時は意外と呆気なくて


「今日捨てたものが、明日にはかけがいのない宝物になってたり。」


 捨てたものより後悔の方が重くって


「死にたかった過去が、今は生きたい未来になってたり。」


 それでも最後は惜しいと思った。


「…案外そんなもんなんじゃないからしら。

幸せな人生なんて。」


 辛いことが、苦しいことが、終わった訳じゃない。

瞬間的には怒ったり、泣きたくなったりすることもあったしね。

でもその分だけ、幸せだったものがあったから。


「…少しサビースしてあげるわ。」


 折角昔の私と話せるんだから少しサビースしても良いわよね!!

うん……うん!多分大丈夫!!


「これから貴方はね!沢山家族とファミレスに行くの!美味しいものが沢山食べれる!」


 ……あれ?喜んでない…ハッ!この時ファミレスはあまり好きじゃなかったんだったわ!!


「そして今貴方が書いてる物語には大大大大ファンが出来て、なんと物語も語り合える大親友が出来る!どう?素敵でしょう?」


「今居ないなら……別に…」


 ……喜んで無いわ…まぁ…うん、そうなるわよね……

自分を励ますのはちょっっっと難易度が高いわね、原作ミチルくらい。

……でも、でもね。


「…だから今…こう言うのもなんだけどね。」


「…っ…」


 きっと、何も言わないと私みたいになっちゃうから。

私みたいに早死にしちゃうから。

……ママのことを置いて先に死んじゃったから。


「人生(物語)の続きを書いてくれてありがとう、えいきちゃん。」


「……………ぁ…」


 どうか、この言葉が貴方に残って欲しい。

……やっぱり過去の自分を目にすると、気恥ずかしいというか…苦しくなっちゃうわね。

……でも、でもやっぱり。


「……私ね、そんな貴方が死ぬ程大好きだから!

貴方は…長生きしてねえいきちゃん!♪」


 苦しくても、辛くても、人生が満ちて無くても、ずっとずうっと生きて欲しい。

私の分まで。


「待って……!」


「ん?♪」


 人生の答えを見つけて欲しい。


「……あたしがこれを書き上げたら、ママ…喜んでくれる…かな?」


 私の人生が素晴らしい人生であったように、大好きな貴方が大大大大好きな人生になることを願ってるわ。


「…ええ、きっとね!♪

私の大好きな1000点満点の人生だもの!♪」


 過去の私へ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 世界樹の上に建つのはたった一つ、生前私が大好きだった。

【神社】、そこに何が奉られてるかなんて決めて無かったけど…

私ならやりそうなことね。


「でっ多分この物語を書いてるの貴方なのよね?『睡蓮』」


「ふふ。」


 ねぇ、この世界の神様。





























◇◇◇◇◇◇◇◇???side◇◇◇◇◇◇◇◇


「…ね…ねぇ、まま…

…最近使ってたペンが…壊れちゃったから……新しいの…」


「なら土日ね。

丁度日用品も買いたかったし、貴女も着いてきて。」


「っ……!う…うん。

ありがとう…」


「あっねぇ、えいき。」


「え?うんっ、なに?」


「買い物終わったらご飯、どこ寄りたい?」


「……!……

…………っ












…ハンバーグ…食べたい……」

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