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41話『生き灰』

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ミチルside◇◇◇◇◇◇◇◇


「大丈夫?立てるかしらにぃ様?」


「…なら……なら!

…どうして…ミチルはお母さんとお父さんを……殺したの…?」


「んー♪面白かったから。

そっちの方が盛り上がるじゃない?」


 悪役に悲しい過去なんて魅力を伝えるための常套句じゃない。

そんなものに同情する程、作品は甘くスパイスが効いてくるものよ?


「所詮紙の上のインクでしか無いのにね♪」


 まぁ、そんなものが愛おしいのも良いと思うけど。


「…ミチルは……!

ミチルは…最初から誰も助ける気なんて無かったの……?」


「物語の作者が改変してまで全員救うなんて…折角書いたのにもったないじゃない?」


 あたしにも、神様にも二礼二拍一礼やったて意味なんて無い。

現実が明らかに好転するわけでも、救ってくれるわけでもない。

だけどね、そんな日々も悪くないと思うの。


「結局僕達は全員!ミチルの玩具だったんでしょ?!」


「違うわ。にぃ様。」


 だってあたしは『神様』のことが大好きだから。


「あたしもね?神様(物語)の道化なの。」


 人生ってそんなもの。

苦しんでも踠いても、救われたとてそれは神様(読者)の娯楽なのかも知れない。

ずっとそう思いながら。思いながら生きてきたから。

こんな事になったんだ。


「でもね、あたしも道化だったから。」


 自身になぞった悲劇も、物語に描いた悲劇も全部が尊く見えたから。


「悲劇を創りたいと思ったの!!」


 他者(キャラクター)の悲劇なんて結局。

他(・)人(・)事(・)でしょう?


 元から『睡蓮』としての自分の名前なんてどうでも良いし、わざわざ思い出す必要性も感じない。

『睡蓮』だって結局は読者(神様)の娯楽だもの!


「…ちがう…っ!ちがう!

こんなのミチルじゃない!!!」


「ふふ、にぃ様!人間なんてすぐに変わるものでしょう?」


 それに、物語を造る時の読者の反応は嫌いじゃないわ。

好きが嫌いになって嫌いが好きになる。

そんな儚いが、移ろいが、悲(・)劇(・)を繕ってくれるもの、下らない自業自得でも読者(他者)が認めれば悲劇になる、可哀想と思えば悲劇になるもので。

そんな現実しか無いのなら。


「ねぇにぃ様!

今生きているあたし達だって紙の上で踊ってる存在かもしれない、そう思ったらどんな感情が湧くかしら?」


 苦しい?恨めしい?悲しい?そんな人間らしい感情だって紙の上の存在かもしれない。

あたしも…貴(・)方(・)も!


「……ミチル…っ」


「だからあたし、どれだけ人が苦しんでも他人事だと思ってるの。」


 読者(神様)の娯楽で産まれた存在なら、役を楽しんでいれば良い、流されて遊んでいれば良い。

そんな軽薄な考えさえ、紙の上の創作ならどうしようもないじゃない!


「……僕がどうなっても…ミチルは気にしないの…」


「いいえ、あたしはね?にぃ様に幸せになって欲しいわ。

その為なら命だって投げ出しても構わないもの!」


 だって人間の庇護欲(愛)なんてそんなものでしょう?


「ならどうして…!こんな物語を創ったの!?」


「楽しかったから!」


 加虐心も庇護欲も人生の醍醐味でしかない。

そうじゃない?だって苦しむ主人公を可哀想と思いながら見続けられるのが人間なんだから!


「…もう……いいよ……

…もう」


「……にぃ様……

あたしがずっと居ればそれで良いの?」


「…えっ?」


 にぃ様、依存から抜け出すのはそんなに簡単じゃない。

でもね、あたしはね。

憎悪と一緒の依存はね、駄目だと思うの。


「あたしに憎みながら、あたしのことは離せない。

そんな気持ち悪い感情は向けないでくれるかしら?」


 あたしね本当は愛されるの嫌いなの。

責任を押し付けてくるような身勝手な感情。

だからもっとちゃんと選んで。にぃ様。


「……ならどうすれば良いの!?

母さんも父さんも!!僕のせいで!!僕達のせいで死んだんだよ!?」


「違うわにぃ様、世界が、あたしが。

読者(神様)がそう造ったの!」


 それでもねにぃ様の人生の答えを出すのはあたしじゃない。

もうあたしは答えを出したもの。


「復讐が出来るなら…したいよ……!

でもミチルは…っ…!ミチルは…殺したくなんか……」


「考えて、選んでみて。にぃ様。」


 どんな胸糞悪いエンドであろうとにぃ様に振り回されるならあたしはどうなろうと構わない。


「あたしはにぃ様が選んだ賽(現実)を護るから!」


 …にぃ様の妹で居れるのなら。


「……狂ってるよ……ミチル……」


 ……そう、思ってたんだけどなぁ。


「…ごめんね…ミチル、こんな方法しか思い付かなくて。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇??side◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ……冥縛に縛られて眠りにつけるなら。


「ミチル…ごめんね…」


 息の無くなったミチルをアズが横にする、その手には、いくら優しくしようとしても隠せない確かな破(・)壊(・)衝(・)動(・)があった。


 さて、読者の諸君にはここで皆ずっと不思議に思っていたであろうことに答えようか。


題は…そうだなぁ……

【世界樹の力をその身一つに宿し、世界を滅ぼしかけた大罪人が、どうして処刑されなかったのか。】

……どうして、檻の中に閉じ込められただけだったのか。


 その理由はたった一つ、ミチル・ハーベスト……彼女には『不老不死の呪い』がかかっていたからだった。


 未来永劫、無力のままに檻の中で移り行く世界を見ながら幽閉され続ける。

それが、彼女に与えられた罰だった。


……その呪いはミチルのどんなルートを攻略しようと、解けない呪い。



ただ一つのルートを除いて


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