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33話『にぃ様の日記』


◇◇◇◇◇◇◇ミチルside◇◇◇◇◇◇◇◇


「ねぇにぃ様!お肉が食べたいわ!」


「えっ?でももう野菜…」


「食べたい!今食べたいのっ!」


「も~……ミチルは我が儘だなぁ。」


「わぁい!かんきつ♪かんきつ♪」


「かんきつ…?」


「あっそれは私の鳴き声♡」


ふっ、楽な仕事ね♡


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 私の部屋ににぃ様が訪れることはあっても、にぃ様の部屋に私が訪れることは無かった。


「此処が男子の部屋……」


 それは私が部屋を開けるよりも、ノックしてからにぃ様が出てくるのを待ってたから。


「初めてだけど意外と普通なのね。」


 そして、私がにぃ様のことを探ろうとはしてなかったから。


「イタッ…こんな所に家具?」


 でもにぃ様が物を隠すならきっとにぃ様自身の部屋の中に隠すと思うの♪


「隠し部屋を開ける時は必ず震動がある、にぃ様が少しでも私にバレたくないなら部屋の中に隠す方がにぃ様らしいわ。」


 それに部屋の中にある方が色々と都合が良いし、隠し部屋に入るなら私が散歩や外に出ている時の方が感付かれにくいから、きっとにぃ様はすぐには隠さない。

だってにぃ様は心配性だもの。


「やっぱりにぃ様は子供ね。

リビングから盗み出したゲームを、タンスに隠すような単純な幼児♪」


 でも、どうして盗み出す必要があったのかしら?

私は大体言ってくれたら何でも貸すようにしてるのに。


「私に何も聞かず盗み出すより、一度聞いてから断られて盗み出す方が自然よね。」


 だって一応、私はにぃ様のお願いを殆ど拒否したことは無いもの。

そこまでして私に知られなくなったの?


「…あら?この日記帳。

満月みたいで綺麗ね。」


 にぃ様の机の上、入ったこと無かったから見たこと無かったけど。

意外と几帳面なところもあるものね、


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【…新月の日


 今日はレイテルが来て、二周期目。

……ミチルとレイテルが最近夜まで帰ってこない。

散歩だって言ってるけど絶対に違う、怒れないのが悔しい。

今度こそ問い詰めないと……】



「……日記?」


 にぃ様は確か私とは違って、貴族としての教育で文字を一時期習って居たことがあったわね。

……まぁ『睡蓮』としての知識があるから読めるのだけど…


【…三日月の日


 問い詰めたらレイテルが逃げようとしてた。

あといつまで僕の前でレイテルは狸の姿のまま何だろう?

ミチルの前はいつもお姉さんの姿なのに。

でもミチルが前より楽しそうなのは見ていて気分が良いから気にしてない。


…でもレイテルが来たせいでミチルが遊んでくれなくなったのは許してない】


「まぁ…にぃ様ったら…。

……あとレイテルとっくにバレてたのね♪」


 ふんふん……なるほどね。

にぃ様の日記を見る機会なんて滅多に無いもの。

今の内に目に焼き付けて置かなきゃ。

……あら?


【上弦の月の日


 …ミチルとレイテルは、『世界樹』を探してること。

僕は知らないけど、本で見た。

……世界の運命を意のままに出来るって。


ミチルが何をしようとしてるかは分からないけど、もしその世界樹が本当なら僕は。】


「にぃ様が……

世界樹のことを…知っていたの?」


 知らないと…思っていたのに。

だってそんな設定、した記憶が無いもの。


 【…もうすぐ月が満ちる日


 ミチルは世界樹の場所を知っていた。

……この近くにある。

居ても立っても居られなくなって僕は、ミチルが隠していた『炎』を取ってきてしまった。


…僕は分かってる。

ミチルにとって、最善のことは。

それはきっと……

ミチルが僕の妹として、産まれてこないこと。】


 ……途切れてる。

これが、昨日の書いたもの?

…………………………………………………………

…………そんな。


「……何も…」


 ……ふふ。


「原作と何も変わってないじゃない……」


 にぃ様に望まれる妹としてやって来たと思ってた。

ミチルが居て良かった、そう思ってくれるような妹になりたかった。

だけど。


『ミチルが妹じゃなかったら良かった。』


 結局、変わって無かった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「操られた人間に責任なんて無い。

貴方達が決めたことでしょう?」


 それはアズの大罪を擁護するには到底、言い訳にもなら無いことだ、それでもシナリオのミチルは心底どうでも良さそうに。

嘲笑うこともせず、涙も流さず。

……アズから視線を外した。


「ミチル……っ!」


「私より有象無象の同情の一欠片の方が大事なら、自分が悪くないって思いたいだけなら。

勝手に自責の念で死んでろよグズ。」


 ミチルの目の焦点はもうアズを見てはいなかった。

ただ爪の成長を見ているように、薄く広がるように。

『場面』を見ていた。


 アズの投獄は、ミチルの策略により無しとなり。

そして、それに対となるようにミチルは一人で永遠に。


「馬鹿な人、ばいばい。」


 ……ただそこに残る永遠に混じること無いお互いへの愛憎だけがどちらの肩にも重くのし掛かった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「お帰りなのだ。

見つかったのだ?」


 …別れる運命。


「……ごめんなさい、レイテル。

少し外に出て居てくれないかしら。」


「……んなー。」


 知ってたわ。

最初から、でもこれで変わると思い込んでたの。


「お願い、余裕が無いの。」


 面白いだけで描かれたこの光景が。


「リビングのソファー借りるのだ。」


 心というもの程、扱えないものは無いというのに。


「ええ……扉は閉めて行ってちょうだい。」


「んなー」


 扱い切れないものを操ってる気になって、それでも安心しようとしていた無様も

 簡単には変わらない心情も、傲慢に安心しようとする様も

どうせ


「私が『睡蓮』だからでしょう?」


 ずっと見てないふりをしてきたけれど

いつかは限界が来る


「違うってどうせ誰も言ってくれないんでしょう?」


 でもね本当にこの世界なんかよりも、にぃ様の方が大事だったの。

最初から、今まで


「ねぇッ!!睡蓮っ!

あなたは…!!」


 でもこの世界を産み出したのも、私達を造り出したのも『睡蓮』で

その『睡蓮』はきっと


「……わたし…なの…?」

 

 …この世界から許されたらいけない

でも…悲劇を玩具のように遊び尽くした彼女を…許したくないのに…


「私は…ただ……」


 『睡蓮』の自覚もない私が『睡蓮』だから結局自業自得なんでしょう?


「記憶を押し付けられただけでしょう…?」


 ……そう考え付いたとしても

貴女を許せないの


「わたし……わたしね……

あなたが大嫌いだったブドウジュース…嫌いじゃないのよ?」


 今でも覚えてるの。

この物語を描いた時に抱いた悦楽を


「…睡蓮……

……貴女は…ブドウジュース…本当に…飲めなかったわよね?」


 ……書き留めた感情を


「…だって……可笑しいじゃない……」


 それでも私は貴女じゃない。


「…『睡蓮』が居なかったら私は産まれなかったのに…産まれなかった方が良かった筈なのに

……わたしが『睡蓮』だなんて」


 ………………………………

…………………………

………………

……ふふ、少し気を病んじゃうわね。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「…………んなぁー……」



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