22話『狂喜共演果てでは無い』
探し続けて1ヶ月、随分とかかってしまったわね。
そろそろにぃ様に心配されるのは慣れてきたけど……やっぱり心が痛いわ。
でもこれもにぃ様と一緒に居る為だもの。
「ここが、世界樹ね。」
巨大なキャンバスでも描ききれることは無いでしょうね。そして、高いわ。
巨大な木の中は階段状になっているため落ちることはない…と言っても何時間かかるかしらこれ…
「嫌なのだ!登りたくないのだ!」
「ええ、レイテルはここに居なさい。」
正直に言えば二人で行くのは得策ではないわね。
強制力がどう発動するか、そっちの動向も見たいもの。
「んな!?喜んで良いのだそれ!?」
「見張りよ。
そして強制力の動向も観察したい。
あとは~…ノリ?」
「私に似てきたのだお前。」
にぃ様以外にここまで関わる人間というのは、滅多に居ないもの。
少々の特別扱いくらいはするわ。
まぁにぃ様が一番だけれど。
「そして、最後。
一番大切なことを話し合っておきましょう?」
◇◇◇◇◇フィルミアside◇◇◇◇◇◇◇
「世界樹が落とした実がドラゴンが産まれた…?」
「うん、ドラゴンは…元々世界の秩序を守るために産まれる存在だったから……」
でも…ボクは…
偶然地面に落ちてしまった実の一つだから…そこまで力は無いんだけど…
「世界樹にそんな効果がっ!」
「ボクは正しく落ちこぼれだけどね……」
ドラゴンは普通なら成熟しきるまで世界樹に栄養を与えられ続け、地上に出る時には強大な力と知能を持つ神話上の生物……と本に書いてあった…
「ボクは……そんな力持ってなかったから……」
けどボクは…産まれた直前で混乱して周りが見えなくて…母さんの腕を火傷させてしまった。
腕を黒く火傷して苦痛に息を無理矢理吐き出しながら笑う母さんの姿を、忘れたことは一度もない。
「…まだ…火傷残ってるよね……」
どれだけ治療魔法を使おうと、母さんの火傷の一部はその身体に染み付いてしまった。
「フィルミアくん…」
「何でもないよ、急ごう。」
母さんと住んでいた所は覚えてる、忘れたことなんて無い。
……また…母さんと一緒に過ごしたいよ。
「ここで母さんと初めて会ったんだ。」
岩の隙間から光が照らして草花が宝石のように光っている。
……綺麗な森の中だ。
「………フィルミアくんが小動物と触れあってるスチル欲しい…
……
…あ…えっとフィルミアくんのどんなお母さんだったの??!!!」
ここでいつも、母さんは布にくるまって寝ていた。
「……母さんは…
生きるのが下手な人だった。」
木登りも、火をつけるのも、魚を捕るのもも、全部下手でいつもボクが手伝ってた。
その度に母さんは褒めてくれたし、ボクも嬉しかった。
「でも、一番生きるのが楽しそうな人だった。」
魚を捕って食べようとして焼き焦がすのも、五時間かけて火をつけようとして結局ボクに頼るのも、木の実を採って剥く時に手がべちゃべちゃになるのも。
楽しそうな人だった。
「……でも…何時からかな…
避けられるようになったんだ…」
「!……」
少しずつ、少しずつ母さんはボクのことを避けるようになった。
「えっ酷いこととかされてないよね!?」
「……そんな興味関心も…向けられてなかったから…
分からないんだ!今も母さんが……何を考えてたのか…」
何時からか放置されるようになっていった。
微笑んでくれなくなって、撫でられることもなくなった。
「ずっと一緒に寝てたのに…避けられて……
それどころか夜はいつも居なくなっちゃって……」
母さんの腕を掴めば、母さんはいつもボクを振り払った。
そんなこと…前まではなかったのに。
「でも…何もされなかった……」
ミツルが心配するような…傷つけられたりとか、突き放すような言葉は一度も言われてない。
……ただ、母さんは少しだけ…笑わなくなっただけなのに…
「……町に行って…二人の親子が手を繋いでて…羨ましかったんだ……」
苦しくなった。
母さんと手を繋いで、お店を回りたいと思ったから。
楽しそうな笑顔を…また向けて欲しかったから。
「…ミツル、お願いがあるんだ。」
…だから…探したい。
…母さんが……ボクを捨てた理由を、知りたい。
「僕に出来ることならなんでも手を貸すよ。
フィルミアくん!」
それがどんな障害になろうと。
「…あのミチルから…母さんの匂いがしたって言ったけど……本当は……」
ここの近くにある世界樹の匂いがしたんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




