14話『……確かに罪で…あるかもしれない』
◇◇◇◇◇◇|主人公《ミツルside◇◇◇◇◇◇
…………
「アリスっ!…アリスっ!……」
アリオンがアリスを抱き抱えて泣いていた。
「……アリス…たん……」
……原作ではこんなシナリオでは無かった筈だ。
確かにアリスは幼少期にアリオンに劣等感を抱えていたけれど…それでも、こんなアリスが死んでしまうよう結末では……
『流石!兄上ですね!!』
「…っ!…」
…違う、原作でも同じだった。
アリスたんの劣等感は。
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『流石です!兄上!』
一番見た目が好みだっただけの、天使みたいな女の子。
アリオンに全肯定で、イマイチストーリーでは目立たない。
「アリスちゃん、推しで可愛いけどアリオン君が好き過ぎてぴえんっ……
これ本当に攻略…出来るのかな……」
そんな、何処にでも居るようなキャラクターだった。
性格が好きか嫌いか、正直に言うと興味無かった。
どんなゲームにも居るような容姿で、これと言って特徴の無い女の子、それが初めて抱いたイメージだった。
でも。
『……ばっかみたいですね。
こんな他責思考、ぶっ壊れろよ。』
そう言った彼女は、凄く【人間らしい】と思った。
『なんで?なんでですか?
皆兄上が好きなのに、私も好きじゃなきゃいけないんですか?
あんなっ……あんな』
自分よりも優れた人間に向ける羨望、そして劣等感、それをひっくるめた。
『…自分よりも望まれてる奴をどうして愛さなくちゃいけないの?』
【愛憎】
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「アリス…っ起きてください……」
そして僕はそのアリスたんの劣等感を娯楽として消費してきた。
「…う…っいやです……アリス……」
愛おしいと、可愛いと思ってきた。
「アリオン、まだアリスは生きてる。
絶対に死んだと思わないで。」
「ミツル…くん……」
でも、これは現実だ。
「生きていることを、願い続けて。」
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僕は最初は、ただ何の感情もない観客だった。
現実に飽き飽きして刺激を求めて飽きたらすぐに立ち去る、そんなどこにでもいる無関係で無関心な人間だった。
僕が最初『満ちるの月末』にハマったのだって、いつもよりも一秒、ゲームタイトルを眺める時間が多かっただけだ。
一目で人生を変えたとか、そんな大層なものでも無かった。
最初嫌いなキャラもいて、推しもいて、グッズも最初は嫌いなキャラの奴は欲しくなんて無かった。
……それでも変わったのは。
「……こんな過去…あったんだ。」
またも王道に、キャラクターの人生に、確立された人生観に惹かれたからだった。
……悲しい過去も、普通の過去も、劣等感を持った過去も、全てに本人の答えがあったから。
「私の過去が悲惨なら、他人の人生もめちゃくちゃにしてやれば私の人生は素晴らしいものになるでしょう?」
幼い見た目ながら、誰よりも不幸と哀を理解したラスボスの片割れミチル。
「僕の人生は家族の為にある。
利用されても、放置されても、それがあの子が泣かない為の行動なら構わず駒になるさ。」
誰よりも泣き虫でありながら、何よりも愛と家族を優先したラスボスの片割れアズ。
「愛って一瞬で忘れちゃうものだから。
だから声を出すんです。兄上、流石ですって。
そうしないと泣きたくなっちゃうから。」
本当は目立ちだがり屋なのに劣等感と親愛の間に閉じ籠ることを選んだアリス。
…それだけじゃない、沢山の答えがあったから。
好きになったんだ。
此処がそのゲーム通りなんかじゃなくても。
僕が本当に好きなのは。
物語じゃない、キャラクターだ。
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鏡の前で肩まで延びた髪を一つに結んで、考える。
『全員を助ける方法』
きっとそれは無理だ。
キャラクター一人一人に課題がある。
ミチルたんの世界への憎悪、アズきゅんの家族への罪悪感、アリスたんの兄への劣等感、アリオンきゅんの妹への依存。
一人を解決した所で全ての課題を解決せるのは、時間も無ければ方法も分からない。
だけど、解決しないといけない。
事件解決エンド?ハーレムエンド?
違う、もっともっと、常識、感情論、倫理観、全部取っ払って。
僕は
「…キャラクター全員を嫁にする。」
経済的余裕、最善のコミュニケーション、そして僕が全員幸せに出来ることが絶対条件。
「僕は今までの僕をやめる。」
全員を守る立場に着くこと
一人も不自由にさせないこと。
『好き』を全員に尽くすこと。
「誰も苦しませない。」
◇◇◇◇◇◇ミチルside◇◇◇◇◇◇◇
「嫌なのだぁ!お風呂は!お風呂は!
ていうか何で二人で入るのだ!一人で入れるのだ!」
「しょうがないじゃない、別々に入ってにぃ様に不審がられたら駄目なんだから。」
それに女の子同士でしょうに。
あぁ!もう!床に這いつくばらないで!!
「やだやだ一人で入るのだ!!
お風呂が狭くなるのだぁ!!」
「なら狸の姿で入れば良いでしょう!?
もう!埃被っちゃってるじゃない!」
このまま騒ぎ続けるなら昼ご飯抜きにしようかしら……
「きゅーん。」
「取り敢えず服を脱いでてちょうだい、私も準備するから。」
全く…ていうか違和感なかったけどレイテルの服とか私の服とかどうやって着てるの?
……構造複雑過ぎない?
「…ねぇレイテル。
ちょっと」
「んなー?」
今思ったらレイテルの肩だし制服…どうやって森を過ごしてたの!?
……まさか…服を焼いて…?
「…?」
…って…制服脱いだ姿初めて見たけど意外と素朴な顔してるのねこの子。
…あれ?
「ねぇ、レイテル。
その腕って?」
赤黒い…痣?
「んな?ああ火傷なのだ。
まだ残ってたのだ?」
ふーん火傷…両腕にあるのね。
珍しい。
あっでも、もしかしたら火傷痕を気にしてたから一緒にお風呂を入りたがらなかったのかしら。
意外と闇の深い系?
「別に火傷痕があっても何も思わないのに♪」
「いや普通に他人に全裸を見られるのは嫌なのだ。」
んーん…案外健全なのかしらこの子……?




