第九 壊滅を与えよう
静かになった部屋で本を読んでいた。あの戦争を題材にしたであろう小説であんまり面白くなかった。内容が微妙だね。小説だからそんなものなんだろうけど、もうちょい鮮明に描写して欲しい箇所が多くあったなぁ。
あの戦争は小説に向いていないものだ。何もかもが残酷で、正義とか勝利とかそんなものは何もないものだった。それなのに、皆は戦争を美化してる。我々の勝利だとか、栄光は色褪せないとか。「分断戦争」はそんなに生半可じゃなかったものなのに。
小説を速読していたら、クロンがまた部屋に入ってきた。
「どうしたの?なんか用?」
「仕事が終わったから来た。」
「えっ、もうそんな時間?」
「じゃなかったら私は業務放棄したことになってるだろうな。」
「時間って早いねー。」
「それでだ。今のうちに君に聞いておきたい事があってきた。」
「答えられる範囲なら答えてあげるよ。」
「・・・王国が滅亡した要因は何だと思う。」
「・・・自然現象ではないと思う。多分だけど人為的なものっぽい。」
「なぜそう思う。」
「地面に付着した呪い。そして僅かに感じた魔力。あれらは自然に存在するようなものじゃなかった。」
「なるほど。生憎、私は魔法を君ほど知ってるわけじゃないが、確かに人間が使った後の魔力の残滓と空気中に存在する魔力は少し性質が異なっているのは分かる。」
「だけど、一番の問題はあの規模。」
「あの規模なら君も出来るだろう。」
「出来なくはないし、やろうと思えば全然出来る範疇。でも、私だけで魔法と呪いをあんな大規模に行使はできない。」
「そうなのか?呪いは魔法の区分ではなかったのか?」
「世間の認識的には魔法の区分ってなってるけど、めちゃくちゃ厳密に言えば違う。魔法はあくまで魔力を凝縮したもの。呪いは魔法を使いはするけど、魔法を直接的じゃなくて間接的に使うもの。例えばなんだけど、魔力を使ってそのまま炎を出すものは魔法。呪いは、炎魔法以外の魔法を使って、その魔法を道具とか物を介して炎を発生させるもの。・・・分かりにくいね。」
「めちゃくちゃ分かりにくいな。だがまぁ、要は魔法をそのまま使うか、道具を介して魔法を使うかの違いってところだろう。」
「そうだね。まぁその認識でいいと思う。で、呪いは一手間加えるだけあって効果が強力になるし、長持ちする。その代わり使う魔力量も増大していくけどね。」
「つまり...王国を壊滅させた奴は莫大な魔力量を誇っているというということか?」
「そう。はっきり言って、私以上の魔力を持ってる化け物だね。魔法自体もとんでもない破壊力だったと思うから、魔法と呪いの腕も凄まじい。もしかしたら私と同格か、それ以上の存在がやったことになる。」
「・・・分かった。ありがとう。聞きたいことは以上だ。今日はゆっくり休んでくれ。」
「ねぇ。」
「なんだ。」
「シャワー連れてって。」
「・・・。」
「なんでそんな目をするの!」
「別にいいだろ一日ぐらい。」
「乙女心を分からないからモテないんだよ。」
「誰が運ぶのか分かってるのか。」
「はいすいません私が悪かったですからお願いなので連れて行ってくれないでしょうか。」
「はぁ...仕事が終わったのにまた仕事か...。」




