EX 道化のジャック
彼は幼くから両親に捨てられ、サーカスにて劇団の1人として活動していた。その腕は凄まじく、あらゆる芸を完璧にこなせるものだったがために、劇団では重宝されていた。彼は常に笑顔を絶やさず、皆を笑わせ楽しませてきてが、その心情は全く笑っていなかった。
彼は自身の両親を憎み、これが自身の役割だということをすぐに理解していた。また、彼は自身の姿を非常に嫌悪しており、常に服は厚着しており、顔も仮面で隠している。彼の顔を見た人はごく僅かで、デスマウント部隊の中でも彼の顔や過去を知るものは少数である。
彼は常に練習と新しい芸の習得に明け暮れており、彼自身、このことは苦とは思っていなかった。むしろ、自分の嫌なことを忘れ、ただそれだけに没頭できる、ある一種の心の逃げ場であった。
そんな彼、いや、劇団に対して国からの通達で兵士らの鼓舞をして欲しいという依頼が舞い込んできた。劇団長はこれに対して拒否をしたが、国はそんな彼らへ圧力をかけた。最終的に武力行使してでも連れて行くという脅しを何度もされ、劇団長は嫌々ながら団員らと共に戦場へ赴くことにした。劇団長は国に対し憤りを滲ませていたが、それとは別に観客に求められるのならやらざるを得ないとして劇団員達へ謝罪をした。
彼らは最前線から離れた将校らのためにわざわざ戦場へ向かわされたと初めて知り、劇団員達は自身らの現状に反発した。しかし、これでまた反発したらどうなるか分からないため、渋々見せ物をするしかなかった。
初めの方こそ多くの将校らを喜ばせていたが、日が経つにつれて芸も同じものが多くなり、将校らも溜め息を吐くようになった。そんな中、彼は戦場での様子と将校らの態度に嫌気が増していき、徐々に精神を病んでいくようになっていった。まだ若い彼にとって、戦場という環境はあまりにも悲惨なものであった。
ある日、彼はいつもと変わらぬ顔と服装を纏っていた。しかし、彼が着ている赤と白の服には濃い赤が染み込んでいて、彼が普段ショーで使っているナイフには鮮やかな赤が彩られていた。彼と親しかった劇団員は、恐る恐る彼に何をやっているのかと尋ねたが、彼は上機嫌な声で「次の新しいショーの下拵えをしている」と答えた。
彼はやがて、いつものように将校らの前で芸を披露しようとした。その名も針千本。箱の中にいる人をナイフで何本も刺すが、その人は生きた状態で出てくるというもの。それを将校らの前で披露したが、その箱には少し赤い何かが付着しており、昨日はいた1人の将校がどこかへ行っていた。
彼がナイフを箱へ刺したが、その度に中から叫び声が聞こえてくる。それを眺めている将校達は本当に大丈夫かと彼に聞いたが、彼は何も言わずに次々にナイフを差し込んだ。そして手持ちのナイフが無くなったので、中の人を取り出した。
箱の中にいたのは、昨日まで見ていた将校であり、彼は血まみれであったが、まだかろうじて生きていた。しかし、体はナイフによって穴だらけで、口も縄によって縛られていた。そんな様子を見た将校らは激怒し、彼を殺すように命じたが、彼は観客が劇団に手を出すのは御法度として彼を劇団に加え、強制的に次のショーへ参加させることにした。
今度はリンゴ刺し。落ちてくるリンゴへナイフを当てるというもので、奥の的は将校で、その将校は頭をナイフで刺され死亡、そして次は高いバランス取り...のように、1人ずつゆっくりと劇団の道具として処刑していった。
その時の彼は既に精神が狂っており、甲高い笑い声と共に、見境なくあらゆる者を愉快に惨殺して回った。敵だろうが、味方だろうがお構いなしだった。だが、彼は劇団の人達には一切手を出さなかった。一方で、その劇団の者達は彼をどうするべきかと真剣に悩み、彼のショーを止められるのか分からなかった。
彼が戦場で見境なく人を殺すようになってから、ピエロが笑いながら人を殺して周り、その様子を周囲の人間に見せつけるという噂が広まるようになった。そんな中、彼はハンソンと相対。ハンソンは彼に話し合いを持ちかけたが、彼は躊躇いなくハンソンを殺そうとした。ハンソンは嫌々ながら、彼と戦うことにした。最終的に、彼の持つ塗料がほぼ無くなるという窮地にまで追い詰められたが、彼の暴走を止めることはできた。
その際、ようやくハンソンと彼は対話をし、お互いの状況や心境を語り合い、彼はハンソンへ心を開いた。勿論、簡単に彼はハンソンを信用はしていなかったが、どうしてか自身と同じような感覚があったという。
その後、彼はハンソンによってミラベルの元へ連れて行かれ、治療を受けた。疲弊しきって動けない彼の前に、劇団長が現れ、彼と対話した。その内容は彼からも劇団長からも何も聞き出せなかった。しかし、彼の精神は多少なりとも落ち着いていた。
その後、彼はしばらくショーから離れるべきだと劇団長から言われ、しばらくデスマウント部隊の裏方、料理班として従事した。その際、マートンとも交流したが、その際のマートンは人肉料理を作った後の状態である。この時、彼はマートンから料理に関して色々な技術を学び、最終的にほとんどの料理が作れるようになった。
終戦後、彼は最後まで料理を作っていたが、毎日ショーについて考えていた。こればっかりはどうしようもなく、生まれながらにして劇団に属していたため、それ以外の生き方を知らなかったからだろう。
彼は一応ではあるが称号を与えられたが、英傑とはされなかった。敵味方共に与えた被害が大きすぎるというのが要因であった。彼はそんな称号には興味がなかった。それよりも、彼は劇団長と少し話したい気分だった。
彼は自ら劇団からの脱退を表明したのである。劇団長はそれを良しとしたくなかったが、彼は自分なりの生き方を見つけたいという言葉から、かなり悩んだ末にそれを承諾した。が。その結果、彼はギャンブラーとなった。酒場で賭け事をしては勝ち、それで日々を過ごしていた。彼自身、これはこれで楽しいからありだと思っていたらしい。彼は今日もチップと人生をオールインしながら賭け事を楽しんでいる。
只今、ちょっとばかし短編小説を作成中です。そのため、本作の更新がかなり遅くなります。ホンマごめん。で、その短編のやつなんですが、大学の学園祭で出す用兼ここにも出す用のやつです。それは収益化しない予定ですので、気長に待ってくだされば嬉しいです。あとそれが作り終えたら、またこちらも更新頻度を上げる予定...なんですけど大学の期末試験もあるのでなんともですね。まぁとりあえず良い感じに待ってくださればと思います。以上




