表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無限に死ぬ私  作者: お菓子い
第二章 調査・究明編
PR
43/63

EX 剣豪のアイラ

 彼女は幼い頃からかなりの暴れん坊だった。毎日喧嘩しては家に帰り、服はいつもボロボロだった。

 そんな彼女に振り回され続けた両親は、ついに彼女を残して何処かへ消えてしまった。金も、服も、居場所も失った彼女は、それ以降、路上で生活することを強いられたのである。

 当然、幼い彼女にはその様な場所で生きていくことは不可能に近かった。昔は周りの人を殴りつけてはいじめていたが、今では大人達に蹴られ、笑いながら半殺しにされるようになってしまった。

 ボロボロで、もう死ぬしかないと思われていた彼女の前に1人の男が現れた。それを契機にして、彼女の人生は大きく転換することとなる。

 その男は老人で長髪に白髪、着物を着て腰に肩を携えていた。そして物腰柔らか雰囲気を醸しており、何もかもを見透かしたような顔だった。彼女は最初こそ男を警戒していたが、対話をした後に男の家へとついていった。彼女曰く、「ムカつくことにあのジジイは私がどんな流れであそこに行き着いたのか全部言い当てやがった」とのこと。それでもその男は彼女にチャンスを与えてくれたのだから、その手を逃すつもりはなかったそうだ。

 男の家に入った彼女は、ひとまず風呂に入れられ飯を食わされたそうだ。そして服は彼の持っている服を借りたそうだが、彼女はまだ子供なのに対して男の持っている服は全て大人用だったため、あまりにもサイズが合わなかったそうだ。その後、その男は急いで彼女用の服を買ってきたらしい。

 男の名前は今も不明であるが、唯一教えてくれた名前は「守見」だけだった。もちろんだが、これは本名ではない。しかし、これ以上名前を教えられることはなかったそうだ。守見という男は、彼女へ剣術と人としてあるべき精神を教え込んだ。幼い彼女は彼の教えを理解できていなかったが、今では完全に理解しており、もっと早く自分の愚かさに気付くべきだったと後悔している。それでも、今は彼の教えを忠実に守っている。

 彼の剣術は非常に難しく、習得するのに10年以上もの歳月を費やした。鍛錬や稽古、実践などがとてつもない厳しさであったが、その男は彼女に与えた鍛錬を何倍も早く終わらせ、かつ汗一滴もかかず涼しい顔をしていた。彼女は男に負けないと努力していたが、ある日、彼女は1つのことに気が付いた。

 負ける負けないではなく、これは鍛錬であって勝負ではないと。そのことに気が付いた彼女は、前よりも急速に成長していった。そして長い年月をかけた末、ついにその男、いや、師匠との実戦にて対等になれるほどの力を得たのである。

 それでもなお成長し続けるために鍛錬に明け暮れていたが、ある日1枚の便りが来た。それは戦争への招待状、地獄への切符であった。これを受け取った彼女は、師匠へその便りを見せた。すると、師匠は見たこともないような顔をしていたそうだ。笑顔を消し、何かに怒っているような表情。今まで彼女には見せてこなかった顔であり、彼女はかなり驚き、戦慄したという。

 師匠は真剣な顔をし、彼女を自室へ招き入れた。そして、彼女に1本の刀を渡した。その刀はかつて師匠が使っていた刀であり、使いたくはない代物であった。どうしてこのような物を急に渡したのか疑問に思った彼女は、師匠へ聞いてみることにした。すると師匠はいつものように誤魔化さず、自身の過去について全てを教えてくれた。

 かつて、その男は今住んでいる国から遠く離れた国で暗殺者として活動していたそうだ。国家お抱えの暗殺者であり、数えきれないほどの人間を斬り殺してきたという。しかし、ある日を境に自身の行い、国の命令は果たして本当に良いことなのかと疑い、分からなくなってしまった。そのある日とは、国から反乱分子の子供を殺せという命令が下された時のことであった。

 結局、彼は子供を殺せず、国から命を狙われることになった。だから彼は全てを捨てることにした。家も金も名誉も名前も居場所も国も。何もかもを捨て、ただ行きたい場所へ自由気ままに行くことにした。そうして流れ着いたのがこの国であったそうだ。

 彼はこの国で人を殺さず、守り助けるということを誓い、困っている人々を助けるようになった。そのおかげで彼は今の居場所を手にし、老後の生活はのんびり暮らす予定だったそうだ。しかし、彼女を拾ってしまったがためにのんびりは暮らせなくなった。それでも、自分も幼い頃はこんな風に拾われて育てられた記憶があったからこそ、彼女を自身の育て親のように責任を持って育てたそうだ。実際、彼は彼女のことを自分の子供のように可愛がっていた。性格には難があったのには愚痴をこぼしていたが。

 そんな大切な子供を死なせたくはなかった。親ではないが親心からの本心だった。だからこそ彼がかつて使っていた刀を渡したのである。自身の身を守るために斬り、敵を殺すための刀を。彼は刀は人を助けるために扱う物であり、斬り殺すためのものではないと強く言い聞かせていた。しかし、彼は、どうしても彼女に死んでほしくなかったからその決断をした。

 その刀の名は「清殺無思」。何もかもを斬り捨てた、かつての刀。長く鞘に納められてもなお、過去のように変わらぬ形を留めている。この刀を使い、彼はかつての日々を過ごしてきていた。

 師匠から手渡された刀を強く握り締め、師匠との約束を守ると誓った彼女は戦場へ赴いた。そして、その刀で多くの敵を殺してきてた。教えられた剣術を使い、教えられたように動いた。それはまるで、師匠の過去と同じようで、非常に怒りを募らせていた。師匠にこのような真似をさせた者共への憎悪、そして自分が本来とは違う刀の使い方をしていることへの、自身への怒り。だからこそ、彼女は目に映る全てを斬り飛ばした。流れに身を任せ、いつかこの戦争を終わらせるために。

 長い年月を経て、ようやく終戦が訪れた。彼女はただ黙っており、いち早く戦場から脱したかった。刀を鞘に納め、外の景色を見渡す。そこには多くの死者が転がっており、見たくもない光景を目に焼き付けてしまった。

 彼女は多くの敵を単身で斬り、最前線を円滑に推し進めたとして称号が与えられ、英傑とされた。しかし、彼女にとってそのようなものはどうでも良く、早く家に帰りたいとしか思っていなかった。

 家に帰った彼女は、師匠と再会した。しかし、その師匠は見ないうちに体が弱っており、自力で立てなくなっていた。それでも、彼女を見た時は涙を流し、再会を喜んだ。

 それから徐々に以前の日常へと戻っていった。やがて、数年の月日が流れた後、師匠は老衰で死去。彼女は生前に受け継いだ2本の刀を携えることとなった。しかし、そのうちの1本は滅多に抜かず、ずっと使われないままでいる。

 彼女は師匠の家を守りながら、他の人達を助けたりもしている。未だ性格や口調は荒々しいが、それでも師匠から培ったあらゆるものを守り、大切にし続けている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ