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無限に死ぬ私  作者: お菓子い
第二章 調査・究明編
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EX 時間のフローラ

 彼女は幼少期からずっと魔法に苦しめられていた。彼女が生まれた時から有していた固有の魔法「時間」。この魔法の効果は至って単純で、時間遡行・時間停止・時間加速を行えるという魔法。単純ではあるが扱いが非常に困難であり、幼少期の彼女はまだ扱いに慣れていなかったせいでこの魔法を制御しきれずに暴発することが度々あった。暴発すると、他者や自分の時間を早めたり遅めたりと、自分が意識しなくても少なからず周りへ影響を与えてしまっていた。

 日常生活もこの魔法のせいで不自由であったが、幸いにも彼女の苦労に理解を示してくれる友達と先生、そして親の存在がいたことで、何とか普通の生活はできていた。しかし彼女は、他者へこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないと思い、独学で魔法の制御を試みた。

 その甲斐あって、3年後には完璧に扱えるようになり、魔法が暴発するなんてことは起こらなくなった。時間を早めたり止めたりは自分で決めることができ、早める速度も細かく制御できるようになっていた。そのおかげで、彼女はようやく魔法という束縛から抜け出せたのである。

 しかし、そんな彼女に分断戦争からの徴兵令が伝えられ、戦場へ行くことになった。彼女は家族や友人らから離れる不安と、生きて帰ってこられるかという恐怖しかなかった。今すぐにここから逃げたいと思った。それでも、彼女には戦場へ行かないという選択肢は与えられていなかった。

 彼女は戦場で後方支援を行なっていた。敵軍からの攻撃魔法への反撃や防御、負傷兵の回収などを行っており、彼女はまさに地獄の真ん中で奮闘していた。

 当然だが、彼女の魔法は戦場で大いに役立てられた。周りの時間を止め、動けない敵兵を仲間が魔法で殺したり、銃で撃ち殺すなどしていた。自身の魔法が正しい使われ方をしていないことに嫌気が差していたが、それでも勝って生き残るならとそんな考えを捨て去っていた。

 ある日、戦場でかつての友人と再会した。どうしてこんな場所で再会するのかと思ってしまったが、お互いに生き残ろうと言い合っていた。しかし、その友人は死んだ。急な敵軍の爆撃から彼女を守るため、覆い被さるようにして死んだのである。そのおかげで彼女は生き残ったが、その友人の死体は見るも無惨な有様になっていた。その友人は、下半身がなくなっていた。

 それを見てしまった彼女は魔法の制御を捨てた。ただ泣き叫び、戦場の時間を破壊した。時間が止まっては加速し、加速したら遅くなり。時間の流れが場所や物体問わずしてメチャクチャになり、戦場にいる全ての兵士らは何が起こっているのか理解できなかった。何が起こっているのか誰かに聞こうとしても聞けず、動こうとしても動けずにいた。

 やがて彼女は急に辺り一帯の時間を急速に加速させ始めた。敵味方なりふり構わず、全てが滅んでしまえと願いながら。時間がメチャクチャになっている中、時間が急に加速したせいで空間に歪みが生じ始めていた。遂には様々な場所で黒い空間が出現し、あらゆるものを飲み込んでいた。戦場の兵士らはそれから離れようとしたが、上手く体が動かせず、その空間に飲み込まれていった。この空間は何だったのか、今でも知る人はいない。そしてこの空間に飲み込まれた人は、何処へ行ったのか未だに不明なままである。

 味方は彼女をどうすることもできないと諦めていたが、驚いたことに彼女を庇って死んだと思っていた友人が最後の力で言葉を発した。この言葉をきっかけに、彼女はようやく自分の行動を抑えたのである。「また遊ぼうね。」

 彼女は時間魔法の行使を止め、時間の進みが元通りになっていった。味方が彼女に何をしたのかと問い詰めたが、彼女はただ涙を流し、笑っているだけだった。そしてこんなことを呟いた。「また会ったら何して遊ぶ?」

 彼女が作り出した混乱は敵兵へ大きな打撃となった。無論、味方も困惑はしていたが、彼女の魔法だと分かっていたため、敵兵へ素早く奇襲を仕掛けることに成功した。敵を混乱させ、戦力を大きく削ることに尽力したとして、彼女は称号を与えられた。

 終戦後、家に帰ってきた彼女はどこか達観しているようだった。それは戦場で見た光景と、時間魔法の暴走によって起こった記憶の混同が原因だった。過去・現在・未来の記憶が混在し、自分が今どこにいるのか、どうやって時間が進んでいるのか良く分かっていなかった。しかし、彼女は少しずつ日常を取り戻していき、今の自分を確立させていった。

 時間はやがて全てを捨て去っていくが、彼女だけは全ての時間を忘れずに握り締めている。さながら、友人と遊んだ帰りのように手を繋いで。過去の苦悩と友人の死すらも乗り越え、今と向き合い、未来を眺め続ける彼女は、今も毎秒の時間を心に刻んでいる。

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