EX 料理人のマートン
彼は普通の家に生まれ、普通に暮らしていた。学校での成績はかなり優秀であったが、ただそれだけという、平凡の枠に入る少年であった。
しかし、彼は青年となったがそこで苦悩を抱えていた。つまり、将来は何になりたいのかというものである。今まで普通に生きてきていたが、これといってなりたい職業はなかった。とはいえ、大人になる以上やはり金を稼ぐ必要があった。
そうやって悶々としながら暮らしていたが、そんな最中に分断戦争が起こった。無論、彼は徴兵され、自身に将来などあるのかすら分からなくなってしまった。
彼は開戦から終戦まで食料配給に従事していた。というのも、彼はとてつもない運動音痴であった。走るのが非常に遅く、戦場で戦わせたら誰よりも早く頭を撃ち抜かれるだろうと言われるぐらいだった。そのため、部隊の満場一致で彼は後方支援に回すこととなった。
しかし、彼は料理など作った事などなかった。強いて母親の料理の手伝いをしたぐらいだったため、何を作ればいいのか、どうやって作ればいいのかなど分かりもしなかった。
ただ、彼は才能を開花させた。持ち前の知識を使い、どうすれば戦っている兵士らの士気を上げられるのか、限られた食材の中でどのように調理すれば戦い続けられるのかと考えた。
結果、彼は初めての料理で食材も限られている中、兵士らの士気を上げ、栄養がバランスよく摂れる料理を独自に作った。味はともあれ、初めてにしてはかなり上出来の料理だった。
しかし、戦争が長引くにつれ、食料もどんどん減っていき、満足のいく料理が作れない状況に陥った。そこで彼は苦肉の策を使うことにした。人肉を調理したのである。
彼はベルから貰った人肉を使い、料理として提供した。その事は事前に周知させていたが、やはりそんな料理は作りたくなかった。そんな彼に対し、兵士らは二度と彼にこのような料理を作らせないと誓い、人肉料理は破棄して、それ以外だけの料理だけを食べることにした。
その甲斐あってかは定かではないが、それから間も無くして戦争は終結した。彼はそのことに安堵したが、同時に深いトラウマを植え付けられるきっかけとなってしまった。人だったものを調理し、それを仲間に振る舞おうとしたこと。そして自身と仲が良かった者達の亡骸の山。果たして自分は何かを為せたのだろうかという、自己不信に陥ってしまった。
彼は戦場にて多くの仲間の士気を上げ、兵士らのパフォーマンスを著しく増加させた一人として称号を与えられた。また、生き残った多くの兵士らからの声によって、彼の料理は店として出すことになった。彼が経営している店は多くの仲間が集まり、かつて食べたものよりもずっと良い料理を食べている。ある一種の憩いの場として機能し続けている。
彼らの様子を見た彼は、自分が彼らの役に立てたのだと思い、過去とは決別して新しい自分だけの道に進んだ。かつてのようなものを二度と作らず、いつまでも美味しい料理を提供できるよう今も研鑽を続けている。それこそ「料理人のマートン」という男であった。
体調不良なのでちょっと更新頻度下がります...。許してください...。




