48.手合せの前に
ちと短いです。
そういえば、兄でさえ多少は剣を扱うのです。であれば、一般的な王家の子女でも、多少は武芸の造詣はある、ものなのでしょうか。正直うちの王家はあまり一般の範疇に入らないような気がするので何とも言えませんが。
「‥‥なんだ。手合せと言うから来てみたら‥‥」
お暇なのですか旦那様。というよりも、周りにはわらわらと騎士服を着た男性がたが大勢みえています。騎士の皆様もお暇なのでしょうか。
「別に剣だけが能ではありませんでしょう」
流石にドレスは免除していただきました。そこそこ動きやすい、これは騎士服なのでしょうかね、それに着替えて、今は少し身体をほぐしています。その私と王弟殿下は無手です。つまり、せいぜい格闘技か組手と言ったところ。ある意味正しく手合せなのですよ。
「私の剣は、切り捨てる剣なので、こういった手合せには向かないのです」
「切り捨てる?」
「はい。
立ちはだかるものに対しては、死んでも構わないつもりで剣を振うのです。師の剣もそうですし、だから手加減の仕方も分かりません」
かつて宵闇のエンクエントロスが大陸全土に張った、人を殺せなくなる呪いは、本人であるところの私には効いていません。だから本当は、私は人を殺せます。あえて殺そうとも思いませんけれどね、あぁ、でも、わが姫に手を出そうという愚か者が現れたら保証の限りではありませんけれどね。それでも、建前上は私にだって呪いは効いているべきでしょう。変なふうに目立ちたくはありませんし。
正直に事実を告げたのですが、旦那様はひきつっていらっしゃいました。
「‥‥拳なら大丈夫なのか?」
「‥‥まぁ、剣よりは」
撲殺という現象が存在する以上、確実とは言えませんが、必ず流血を伴う刃物よりは余程ましでしょう、多分。




