49.手合せとそのあとに
懐に飛び込んで背負い投げで、決着はあっという間につきました。
「‥‥殿下?」
近年まれに見るほどきれいに投げられてしまいましたよ。あまつさえ、地面にたたきつける直前に少しお体を浮かせて、衝撃を吸収する余力すらありました。
まぁ、要するに何が言いたいかと言いますと、
「‥‥この程度の腕で、私と手合せしたいなどとおっしゃったのです?」
やはりこの王弟殿下は、舞踏でひらひらしていらっしゃればいいと思います。
「‥‥本気でお強いのですね」
「遊びだとでも?」
全くなめられたものですね。私の前身は宵闇のエン、一の王国最後の姫の、ただ一人の騎士ですよ。もっとも内外にはただ魔法使いとしてしか認識されていませんでしたけど。確かにかつては専ら魔法をよく使いましたが、今でも実は結構使っているのですが、かつてだってそれなりに剣は使えましたよ。
もっとも今回は無手でしたけどね。
「それにしても殿下、組手を了承するならば受け身くらいは取れていてくださいませんと」
危うく地面にたたきつけて、再起不能なダメージを与えるところでした。
「ごめんなさい。侮っていました」
私と同じ程度だと、‥‥喧嘩を売られているのでしょうかね。
「‥‥兄殿下と一緒にしないでいただきたい」
「兄君はその程度でしたか、やはり」
まぁ、普通の王侯貴族の子女はその程度かもしれません。そう考えれば、別に殊更喧嘩を売られたわけではないのでしょうか。腹は立ちますけれど。
「貴女がそんなにお強いとは思いませんでした」
「左様ですか。
お望みなら鍛えて差し上げましょうか‥‥?」
結論を言えば、何故か王弟殿下ではなく、騎士団のお歴々のお相手をすることになっておりました。何故。
むさい男性方に囲まれはしましたが、久方ぶりに思い切り体を動かせたので気分は悪くありません。大の男連中を千切っては投げ千切っては投げしていましたら、最終的にはものすごく引かれましたが。別に殊更力持ちなわけではありませんよ、ただ力の使い方を知っているというだけですよ。
途中で旦那様が見ているのに飽きられて、わが姫を連れ出して、ちょっといちゃついていたのは勿論気づいておりましたが、‥‥不問にいたしましょうか、わが姫も夢見心地といった表情ですし。できれば私が揃っていたほうが、結界の効きはよろしいのですけれどね。わが姫の恋の成就のために、結界を強化しておいた方がよいでしょうか。具体的には、わが姫と、私か旦那様かどちらかが共にいるときに効力を発揮するように。




