47.剣の姫君
さて、数日後です。私はわが姫を傍らに、中庭を散策しております。
馬車の中で3人語り合ったことには、結局結論は出ませんでした。
それと言うのも、私の結界が完璧すぎたせい。普通は漏れ聞こえてくるはずの声が一切聞こえなかったものですから、周囲の方々に要らぬ心配をかけさせてしまったようでした。不意に止まった馬車、咄嗟に結界を解除したからよかったものの、そうでなかったら不要な警戒をさせてしまうところでした。
不要な警戒。すでにされているかもしれませんけれどね。
「義姉上」
あれに見えるは旦那様の弟様ですね。
「殿下」
どうやら王弟殿下の目的はやはり私のようです。まっすぐ近付いてきますね、逃げ場などないではありませんか面倒臭い。弟君が王弟と呼ばれるということは、そう、旦那様はすでに国を継いでいらっしゃるのです。先王陛下はまだまだお元気でいらっしゃるのですけれどね。恐らくは、野心溢れる旦那様にとっとと位を譲ることで、保身を図られたのでしょう。尊敬に値します。保身と言えば今私に向けて歩いていらっしゃる王弟殿下にしても、まだ若いですのにすでに出家して、継承権は放棄していらっしゃいます。どれだけ恐れられているのですかね、旦那様は。
「殿下、あの、私はまだ旦那様の妃になってはいないのですから、義姉と呼ぶのはおやめくださいと申しました」
半ばあきらめつつ、苦言を申します。無駄だと分かってはいるのですけれどね。言わないわけにはいかないのですよ、どこにどんな目があるか分かりませんし。
「いいえ、義姉上」
「‥‥大体、殿下のほうが歳上でしょうに‥‥」
まぁ、義理の兄弟なんてそんなものですけれどね。
「それで義姉上、いつになったら手合せ願えるのでしょうか?」
色々な意味で、深い息をつきました。そういえば旦那様も私の腕を見たいとおっしゃっていましたが、そんなに血の気が多いのですかこの王家は。
「‥‥普通、姫君にはそんなもの似合わないとでも言って、取り上げるべきなのではないでしょうか‥‥」
そう簡単に刃を奪われる私ではありませんが。
それにしても、と、私は王弟殿下をちらりと見ました。
兄であるところの旦那様によく似た面差しです。すなわち見本のような王子様。立ち居振る舞いも完璧ですし、ただ笑顔が素晴らしく胡散臭いと感じるのはおそらく、旦那様が意外といい性格だと知っているからでしょう。褒めていますよ、他人とは思えないくらいですし。
「それに手合せと申しましても、失礼ですが、殿下は剣を持たれるようにはあまり思えないのですが」
どちらかと言えば、武闘より舞踏の方が似合いそうと言いますか。‥‥すみません、くだらないことを申しました。




