45.馬車の中の会談
「‥‥それで、一方的な思慕だとは思われないのかな?」
そう苦々しそうな顔をしないでください。いつもの王子様然とした態度はどこに落としてしまったのでしょうね、それほど動揺いたしましたか。
「思いませんね。
だってわが姫には私の魔法がかかっているのです。誰にも気にされない魔法が。姫が気にされたいと思われない限り、私にもおいそれと解けない魔法が」
だから、多分、一目惚れはお互いでしょうね。恥じらう姫も愛らしいですね、その表情を引き出したのが旦那様ということ。私にはついぞ無理だったことです。恨めしい。
「それで、姫、旦那様にはどこまでご説明を?」
何せこの二人、私がしばらく忙しかったものだから、ほとんど二人きりで過ごされていたはずです。あ、ちょっと苛としました。
「あ‥‥いえ、まだ、何も‥‥」
「‥‥そうだな、何やら事情があるのだとは思ったが、私からは何も聞いていませんよ」
あぁ、ということは、甘酸っぱい沈黙の時を過ごされていたわけですね、数日間も。多少あきれましたが、まぁ、それならそれで構いません。私がわが姫にないがしろにされていたというわけではなくて、安心しました。
「それでは、事情と役回りを説明させていただきましょうか」
「‥‥役回り?」
「‥‥あの、エン、何を考えているの‥‥?」
私はにこりと微笑みました。
「もちろん、わが姫の幸せを」
「‥‥信じられない」
「そうですか?私の存在は、かなり規格外だと自覚しているのですけれど」
どうせ心がつながっていることですし、正直に全てを語りました。生涯の友であるのだし、隠し事はする必要もないでしょう。数百年前に宵闇のエンが起こしたことの本当と、エン(マール)・クルスとして生まれてから私がしたことの全てを。
「‥‥それで、どうする気なんだ」
「そう、それですよ。
ここからわが姫と私の立場を入れ替えるか、それとも表面上は私が皇太子妃をやったほうがいいのか、どちらがいいと思います?」
実質旦那様の妻はわが姫でしょうけれど。
私は私にとって至極当然のことを口にしたのですが、なぜそこまで唖然とされるのでしょうね?




