26.真実を告げる③
「ねぇ、それじゃぁ、エン」
遠い目をしている私に、わが姫は楽しそうに言いました。
「公家が王家になったのなら、今のあなたは姫なのね?」
「‥‥仰せのとおりです」
とはいえ、至高の王国の姫と並び立つことなど考えられません。
私のメンタリティはわが姫に仕えるものであった宵闇のエン、そのものです。確かにあのボンボンどもにかけた呪いを考えれば、わが姫に傅いていたはずの私が他人に傅かれる立場に立ってしまうことは分かり切ったことだったのですが、それにしても誰かに仕えられるというのは落ち着きません。それはまぁ、かつてだって姫の騎士であったのですから立場はかなり上だったはずですが。
「仰せのとおりですが、わが姫。
私は今一度、貴女の騎士となりたい」
それ以外であった覚えなど一度もありませんが。
「姫なのに騎士だなんて‥‥」
「私は姫である前に貴女の騎士です」
わが姫は楽しそうに私を姫と呼びますが、私にとって姫とは目の前にいらっしゃる、ようやく出会えたわが主、ただ1人です。私が姫などおこがましい。それは確かに、クルサンドの王国の第二王位継承権保有者であるのは変わりありませんけれども。
だから、お願い。
「今一度、私を貴女の騎士に」
跪いたまま、いつしか私は懇願していました。
それに、もうひとつ理由があります。あまりに情けないのでずばりと言えませんが、どうしても今この場で二人だけの叙勲の儀を執り行っていただきたいのです。
わが姫が、かつての時代から、己に並び立つ友人を求めていたことは知っています。けれど、私ではその願いを叶えることは畏れ多すぎてできません。呼称の上とはいえ同じ、姫という立場になった今であっても、私は自分がわが姫と並び立てるとはかけらも思えないのです。あまりに畏れ多すぎます。
私の懇願に、わが姫は結局憐れみを垂れてくださいました。
少し淋しそうに、えぇそのような顔をさせてしまうのは忸怩たるものですが、けれど頷いてくださいました。心苦しくも天にも昇る心地です。
「‥‥そうね。分かったわ。あなたはたったひとりのわたしの騎士だもの」
えぇ、誰にもこの地位は譲りませんよ。
主人公は異常に視野が狭くて頑固です。依怙地です。妥協すればいいのに。




