24.真実を告げる①
これから怒涛のネタばらしが続きます。
祈るようなそのひとの前に跪きました。
目を開いたその人の、初めて眼にするものが私であることのこの幸福といったらありません。
「わが姫」
ゆっくりとまたたくその瞳は、蒼穹の色。
「‥‥?」
あぁ、かつてもこうして、この無二の主の尊顔を見上げた。
「‥‥エン?」
黄金の髪が、宵闇の中で光を放つよう。涼やかな声が私の名を呼ぶ、それだけで、私は泣きそうなほど嬉しかった。叫びだしたいほど誇らしかったのです。
「‥‥お分かりいただけると、思っていました」
「‥‥ずいぶんと可愛らしくなって‥‥」
そう、私はかつて姫の傍に侍った、宵闇のエンと呼ばれる魔法使いでした。
*******************************************
「それで‥‥あなたが迎えに来て、わたしが目覚めたということは、争いは終わったのね?」
当然のことながら、主をそのまま立たせている私ではありません。懐から取り出した清潔なハンカチーフを床に敷き、姫には腰を下ろしていただきました。そしてまた当然のことながら、私自身はその前に膝をついています。
「はい、わが姫。貴女が願った通り‥‥とは少し違った形になりましたが」
あぁ、首をわずかに傾げるその仕草もまた可愛らしく麗しい。
「‥‥わたしの願い、は」
「‥‥御身が争いの種になることのないように」
一の国の一の姫は、その存在以外はまだ封印されたまま、今のこのお方を見てそれが一の姫であると思いつくこともないでしょうし、時代も下って、たとえ畏れ多くもその目にかなったとて、大陸全土を覆った一の国を継ぐことなどできないのですから。
「その願いは、私が貴女を隠した時に、すでに成っておりましょう。
王国は、解体して数百年が経ちました」
「それは‥‥」
「‥‥私自身、御身を隠してのちのことはあまり詳しくはないので、どのように解体したのかは存じませんが」
憂いていてもわが主の美しい事。けれど私はその憂いを出来うる限り晴らしたいと願う者。
「ただ、現在までかつての公家が王家として存続していることを思えば、血で血を洗うような争いなど起こらなかったのではないでしょうか」
「‥‥そうなの?」
ただ名前だけ続いているのかもしれませんが、そんなことは口にしません。わが姫はそれは聡いかたですから、私が呑み込んだことくらい考えていらっしゃるでしょうけれど。
「わが姫、私の現在の名は、エン(マール)・クルスというのです」
「‥‥あなたが、蛇蝎のごとく嫌っていたクルス公爵の血をひくなんて‥‥」
「いえ、忌み嫌っていたのはあの公子だけです」
あれ、けれどあのボンボンの血をひいてしまっているのは変わりがないのでしょうか?
‥‥考えるのはやめましょう、それよりも姫に告げなければならない真実はいくらでもあります。




