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第五話:運命の女神に寵愛されている? 1

「そうです!あの頃、私を育ててくれた老婆がそう教えてくれました」


 奕德は素直に頷き、ありのままを話した。


 それを聞いた詩孝榮は、慌てて問いかける。


 「では、あなたのお父さんが誰なのか、その老婆は話していなかったのか?」


 奕德は首を横に振り、答えた。


 「父は、とても遠いところから来たとしか聞いていません。まだ赤ん坊だった僕を岸へ連れてきた後、ほどなくして亡くなったそうです」


 詩孝榮は顎に生えた髭を撫でながら、何かを考えるように尋ねた。


 「父親が君を岸へ連れてきた後に亡くなったというのなら……君はどうやってここまで来たんだ? ここから一番近い海だって、何千キロも離れているぞ」


 奕德は頷いてから、話を続けた。


 「はい。父は亡くなる前に、僕を『メアリー』という名の修道女に託したそうです」


 メアリーという名前を聞いた瞬間、詩孝榮は思わず声を上げた。


 「メアリーだと!? まさか、本当に彼女なのか? ……すまない、すまない、奕德。頼むから、その話を続きを聞かせてくれ」


 奕德は話を続けた。


 「その修道女は、父の遺言に従って西へ向かいました。でも、その途中で凶暴な魔獣に遭遇したそうです。その修道女は僕を守るために、その魔獣との戦いで亡くなりました。そして僕は、今まで僕の面倒を見てくれていた老婆に発見され、育てられました。でも、その老婆は一か月ほど前、『一路西行』と書かれた紙を残したまま、突然姿を消してしまったんです」


 奕德の話を聞き終えた詩孝榮は、そっと奕德の肩に手を置き、独り言のように呟いた。


 「まさか……いつの日か、ここで君に会えるなんてな」


 奕德は心配そうな表情で、詩孝榮に小さな声で尋ねた。


 「叔父さん、大丈夫ですか? 僕が話したことは全部、あの老婆から聞いた話です。僕自身も、本当のことなのかは分かりません」


 詩孝榮はただ笑って答えた。


 「大丈夫だ! 大丈夫だ! あの人が言ったことなら、きっと本当だろう。私はただ……あまりにも感動してしまったんだ。まさか、何年も別れていた私たちが、こんな形で再び出会えるなんてな……」


 そこまで話したところで、詩孝榮は堪えきれないように笑い出した。


 笑っているうちに、一滴の気づかれないほど小さな涙が、頬をゆっくりと伝って地面へ落ちた。


 「叔父さん、一体どうしたんですか? この話の何がそんなにおかしくて、そんなに笑っているんですか?」


 奕德は困惑した表情で、詩孝榮に尋ねた。


 詩孝榮はゆっくりと深く息を吸ってから、口を開いた。


 「実はな、君の父親と私は……昔、生死を共にした仲だったんだ。私は彼と一緒に、数え切れないほどの冒険を経験し、数え切れないほどの場所を旅した。彼はとても強く、それでいて他人に対していつも惜しみなく手を差し伸べる、正真正銘の善人だった。だが、私たちが冒険の終着点へ辿り着いたその時……彼は一人の大神官の娘と駆け落ちし、そのまま消息を絶ってしまった」


 「まさか、この歳になって彼の息子とここで出会うことになるとはな。本当に、運命というものの不思議さには驚かされるよ! 君の名前を初めて聞いた時から、私はすでに疑っていたんだ。何しろ、君の姓はこの大陸ではかなり珍しいからな。それに、メアリーという名の修道女は、かつて君の父親に仕えていた侍女だった。彼女は昔、君の父親に命を救われた人間でもある。だから、君を連れて風の国からここまで来たとしても不思議ではない」


 「もっとも、君が話していたあの老婆が何者なのかは、今の私には分からない。だが、君が間違いなく彼の息子だということだけは、確信しているよ」


 奕德は興奮した様子で尋ねた。


 「本当ですか? だったら、僕の父さんが昔どんな人だったのか、教えてくれませんか?」


 詩孝榮は愛おしそうに奕德の頭を撫で、優しい声で答えた。


 「もちろんだとも! だが、もう時間も遅い。それに、ここまで歩いてきた君はきっと疲れているだろう。今日はゆっくり休みなさい。話は明日にでも聞かせてあげよう。どうだ?」


 奕德は素直に頷き、簡単に「おやすみ」と告げると、書斎から出ていった。


 そこには、窓の外を一人静かに見つめる詩孝榮だけが残された。


 奕德が書斎を出ると、部屋の外で陳銀霞が彼を妤玟の部屋の前まで案内した。


 部屋の扉を開けると、妤玟は純白のパジャマ姿で、両手に枕を抱えながら、時折こくり、こくりと首を揺らしていた。


 奕德がやって来たことに気づくと、妤玟は目をこすりながら、不満そうに言った。


 「どうしてこんなに遅かったの? もう少しで寝ちゃうところだったんだからね。今日は友達とお泊まりするときにやることを、全部やってみるんだから! じゃあ、まずはあなたの話を聞かせてよ」


 奕德は頷き、自分のために用意されていた布団の上に座ると、ここまでの旅で経験した出来事を話し始めた。


 しかし、奕德が再び妤玟を見ると、彼女はすでに抱き枕を抱えたまま、ぐっすりと眠っていた。


 それを見た奕德も、さすがに話すのをやめ、ゆっくりと自分の布団へ横になった。

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