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第35話:死を恐れぬ勇気 2

  二人は日光の届かない隅に身を潜め、じっと機会を待った。


  すると、ほどなくして、以前馬車に乗っていた男が、手にいくつものゴミ袋を持ち、ゆっくりと馬車へ向かって歩いてきた。


  男は嫌そうにゴミ袋を馬車へ放り投げると、腹立たしげに愚痴をこぼした。


  「まったく、臭くてたまらない! どうして俺ばかり、こんな割に合わない仕事を押しつけられるんだよ!」


  二人は男が愚痴をこぼしている隙に、こっそりと馬車へ乗り込んだ。


  そして、山を下っていたからなのか、道中では一度も荷物を検査されることなく、二人は無事に最初に馬車へ乗り込んだ場所まで戻ることができた。


  馬車から飛び降りた妤玟は、自分の服の臭いを嗅ぐと、嫌そうに顔をしかめた。


  「ちょっと、臭すぎない!? もう少しで吐くところだったわ!」


  奕德も鼻を押さえながら言った。


  「早く行こう! 一刻も早く、颶風騎士にここの状況を報告しないと!」


  二人は全速力で李建復のテントへと向かった。


  道中、二人の体から漂う悪臭に気づいた兵士たちは、皆そろって鼻をつまみ、わざわざ道を空けてくれた。


  李建復は二人の姿を見ると、少し意外そうな顔をして尋ねた。


  「どうして、もう戻ってきたんだ? まさか任務を諦めたのか? それに、その臭いは一体何なんだ?」


  妤玟は笑いながら、得意げに大きな声で答えた。


  「まさか、私たちが任務を諦めるわけないでしょう? それどころか、もう任務は無事に達成しましたよ!」


  しかし、李建復は明らかに信じていない様子だった。彼は厳しい表情で妤玟に告げた。


  「軍情を偽って報告することが重罪だということは分かっているな? 最悪の場合、極刑に処されることだってある。発言する前に、よく考えるんだな」


  それでも妤玟は怯むことなく、確信を持って李建復に答えた。


  「本当に嘘じゃありません! 私たちは、敵が一体何を秘密裏に企んでいるのか、突き止めたんです!」


  それを聞いた李建復は、二人が一体何を突き止めたのか気になり、興味深そうに尋ねた。


  「それなら、何があったのか、最初から最後まで詳しく話してくれるか?」


  妤玟は素直に頷くと、奕德とともに馬車へ潜入したところから、紛争武士との遭遇、そして最後にはゴミの山に隠れて敵陣から脱出するまでの一部始終を、詳しく説明した。


  話を聞き終えた李建復は、信じられないといった様子で尋ねた。


  「今の話は……本当に全部事実なのか?」


  妤玟は力強く頷いて答えた。


  「もちろん、本当です! 信じられないのでしたら、豊穣の神に誓っても構いません!」


  李建復は二人に向かって言った。


  「いやいや、信じている! ただ、まさか君たちがそこまでの勇気を持っているとは思わなかったんだ。あの微風遊侠でさえ、何の準備もなしに敵陣へ潜入するような真似はしないぞ! まったく、君たちは実力があるうえに、大胆不敵だな!」


  そう言うと、彼は椅子から立ち上がり、テントの外へ歩きながら二人に告げた。


  「二人とも、ひとまず下がって休んでいてくれ。私はこれから、敵軍の状況を確認してくる」


  テントを出た奕德は、すぐに新しい服へ着替え、自分のテントへ戻ると、ぐっすりと眠りについた。


  そのまま午後まで眠り続け、ようやく妤玟に起こされた。


  「もう起きなさいよ、『暗影』! 颶風遊侠が私たちを待っているんだから!」


  妤玟は奕德のテントのファスナーを開けると、目を覚ましたばかりで、まだぼんやりしている奕德に向かって、苛立たしげに言った。


  奕德は簡単に服装を整えると、妤玟の後ろについて、李建復のテントへと向かった。


  その道中、奕德は鋭い感覚で、目に入る人々の様子がおかしいことに気づいた。


  辺りには殺伐とした空気が漂い、誰一人として笑顔を浮かべていなかったのだ。


  李建復のテントに入ると、奕德は蔡思琴が李建復の隣に立ち、黙り込んでいることに気づいた。


  二人がようやく到着したのを確認すると、李建復は口を開いた。


  「すでに確認してきた。敵軍が今日の夕方に行動を起こすという情報は事実だ。龍血酒については、私にも確認できなかったが、今となっては重要なことではない。そこで、君たちに新たな任務を与える。絶対に戦場の中央へ近づくな。そして、決して自分から紛争武士を探しに行くんじゃない」


  それを聞いた妤玟は怒りを露わにし、李建復に向かって反論した。


  「私は反対です! そもそも、私がここに来たのは、あいつに復讐するためなんです。だから、たとえ戦場で命を落とすことになっても、私は構いません!」


  それを聞いた蔡思琴は、怒りに満ちた声で怒鳴った。


  「自分の命を一体何だと思っているの!? あなたがそんな簡単に自分の命を投げ出すことなんて、私は絶対に許さないわ!」


  奕德は、なおも怒りをぶつけようとする妤玟を引き止めてから、李建復に尋ねた。


  「僕たちはもう、以前のように何もできなかった頃の僕たちじゃありません。今の僕たちは風の兎を捕まえられるようになったし、あなたから与えられた任務だって無事にやり遂げました。それなのに、僕たちが努力してきたことを、そんなにも信じられないんですか?」


  李建復はため息をついて言った。


  「まったく、今どきの若者は相変わらず、人の話を最後まで聞こうとしないな! 私はただ、戦場の中央に近づくなと言っただけだ。復讐するなとは、一言も言っていないぞ」

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