↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
35/44

第34話:死を恐れぬ勇気 1

  荒い息遣いだけが、辺りの空気に響き渡っていた。


  紛争武士は一歩、また一歩と、ゆっくり奕德と妤玟のいる方向へと歩み寄っていく。その身から放たれる殺気は、周囲のすべてを容赦なく呑み込んでいた。


  二人は緊張のあまり、呼吸することさえ忘れていた。足も震えが止まらない。それでも妤玟は拳を固く握りしめ、命を懸けて攻撃を仕掛ける覚悟を決めていた。だが、いざ飛び出そうとした瞬間、奕德に引き戻されてしまった。


  そのとき、一匹のネズミが二人の隠れていた木箱の中から飛び出し、慌てふためきながら出口へと走っていった。


  それを見た紛争武士は剣を収め、その人物に向かって言った。


  「どうやら本当にネズミだったようだな! 次からはちゃんと掃除しておけ。ネズミがここで好き勝手に暴れ回るのは見たくないからな」


  それを聞いた人物は、慌てて紛争武士に答えた。


  「承知いたしました、武士様! 今後は必ず、ここをきれいに掃除しておきます!」


  紛争武士はその人物に告げた。


  「分かればいい。それじゃあ、行くぞ! このあと重要な会議があるんだ。お前は出る前に、荷物を運ぶあの男に、ここのゴミを陣地まで持ち帰らせておけ」


  そう言うと、紛争武士は古びた木の扉を再び閉めた。


  二人は紛争武士が本当に立ち去ったことを確認してから、ようやく大きく息を吐くことができた。


  しばらくの間、二人はその場から動けず、あまりにも凶暴な殺気によって乱された心を落ち着かせるのに時間がかかった。


  妤玟は怒りに任せて床を殴りつけ、悔しそうに叫んだ。


  「どうして……どうして私はこんなにも臆病なの! 自分の両親を殺した仇が目の前にいるのに、怖くて足が勝手に震えてしまう! どうしてなのよ!」


  奕德は静かに慰めるように言った。


  「君だって分かっているはずだ。今の僕たちの実力じゃ、あいつに傷一つ負わせることすらできない。それは分かっているだろう? もう少しだけ待とう。今はまだ、その時じゃないんだ。いつかその時が来たら、僕が必ずこの手で詩おじさんの仇を討つ。今、一番大切なのは、できるだけ早くここを離れて、颶風騎士に報告することだ」


  妤玟は立ち上がると、その瞳に再び闘志を燃え上がらせた。


  彼女は棚から一つの壺を手に取り、奕德に向かって言った。


  「そうね。でも、その前にもう一つやることがあるわ」


  奕德は不思議そうに尋ねた。


  「何をするんだ?」


  妤玟はいたずらっぽく笑いながら答えた。


  「一滴だけで大火事になるって言っていたでしょう? だったら、龍血酒の壺をいくつか開けたって問題ないわよね?」


  その計画を聞いた奕德は、妤玟の悪知恵の働きぶりに感心せずにはいられず、思わず褒めた。


  「それはいい考えだ。君のこと、ちょっと見直したよ」


  二人はすぐに息を潜め、龍血酒の入った壺をいくつも開けると、中身をすべて床にぶちまけた。


  妤玟は鼻をつまみながら、小声で尋ねた。


  「これで、あとは火をつけるだけね」


  奕德は懐から李建復に渡されたライターを取り出し、妤玟に向かって言った。


  「そろそろ、こいつに幸運を運んでもらうとしよう」


  奕德はそっとライターの火をつけ、古びた木の扉の上に置くと、暗黒の加護の力を使って部屋の外へと脱出した。


  妤玟は興奮した様子で言った。


  「あとはライターが地面に落ちれば、ここに火がつくはずね。でも、これで本当に誰にも気づかれないかしら?」


  しかし、奕德は自信満々に答えた。


  「心配いらないよ。今、この部屋は龍血酒の臭いでいっぱいだ。ライターが燃える臭いなんて、誰も気に留めないはずさ。早く行こう。ここに一秒長くいるだけでも、危険が増すんだから」


  妤玟は小声で尋ねた。


  「それで、どうやって戻るの? 来るときよりも巡回している兵士の数が増えている気がするんだけど」


  奕德は笑いながら答えた。


  「もちろん、来たときと同じ方法で帰るんだよ!」


もし私の作品を気に入っていただけたら、ぜひ星をつけて応援していただけると嬉しいです!


星をつけていただけたら、とても励みになります。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。