昔話②
食器を洗っている時、ノワールはぽつりとつぶやいた
ノワール「昔は…ヴォルは体も弱かったな…今はもう強い体になったけど」
ヴォルフ「あの頃は魔力が上手く使えなかったからな…あんまり外にも出れなかったし、でもノワと出会ったあの時は珍しく体調も良くて、城の外を散歩していた…そこで…」
ノワール「そこで俺と出会ったのか、今でも覚えているよ。俺の黒い毛をかっこいいって…凄く嬉しかった…初めてこの色に誇りに思えたよ」
ヴォルフ「あの時は本当にかっこよくて、咄嗟に口に出しちゃった。今もかっこよくて大好きだけど」
ノワール「ノワールって名前をくれたのも凄く嬉しかった、俺の色にぴったりな名前でかっこよくて大好きな名前…」尻尾を振りながら
ヴォルフ「ノワール…その名前もすごく大好き…僕にはない、かっこいい色…その蒼い瞳も大好き…サファイヤみたいで綺麗で黒の毛に似合っている」少し照れながら
ノワール「ありがとう、俺もヴォルの白い毛は美しくて大好き、その紅い、ルビーのような瞳もかっこよくて純白の毛に似合っている…ヴォルフって名前も強くて、大好き…」顔を赤く染めながら
ヴォルフ「ヴォルフ…この名前も僕は大好きだよ…強くて、逞しい狼獣人になれるようにって、僕の親がつけたらしい…」
ノワール「ヴォルの親かぁ…どんな人だったんだろう…」
ヴォルフ「僕もあまり知らないけど、母親は僕と同じ髪の色で耳も大きかったらしい、父親は華麗な体格で純白の毛だったらしいよ…あと性格も両親共に優しい人だって聞いた事がある…」遠い目をしながら
ノワール「そうか…ヴォルに似ていて良い人だったんだろうな……あ……色々聞いてごめんな…」耳と尻尾を下げる
ノワールは無神経に普段聞くことのない親のことを聞いてしまい、ヴォルフの心の事を気にしている
ノワールは親に捨てられて、親の事が嫌いだった事もあり
あまり相手の両親の事を聞く事はしないが
ヴォルフの親の事を聞いてしまった事に罪悪感を感じた
ヴォルフ「なんで謝るの?…別に僕は気にしてないし、皿ここに置いとくね」食器棚に皿を置く
ノワール「いや…こういう事ってあまり聞かないし、嫌な思いをしてないか心配になったから…」尻尾を下げている
ヴォルフ「さっき言ったでしょ、気にしてないって…僕はあの王族が嫌いなだけ、だから関係ない親を憎んでないよ」
ヴォルフは特に親の事を気にする事もなく、恨む事も憎む事もしていない
嫌いなのはあの王族達だけだと
ノワール「そうか、ヴォル…んっ…大好き…ずっと…永遠にいるからな…」
ヴォルフの背後から包むように抱きしめ、体温を共有した
あったかくて、落ち着く匂い
ヴォルフはその包む腕を握り、頬に唇を落とした
ヴォルフ「ん…ノワ、僕も大好き…ずっと…一緒にいるから…僕と出会ってくれてありがとう、ノワ」
ノワール「お礼を言うのは俺の方だ…ヴォル…ありがとう、俺と出会ってくれて……」
2人は少しの間、体温や魔力を共有した
その後は夕食の準備を一緒にし、食事を終えた後は部屋で一緒の時を過ごした
部屋
ヴォルフはノワールの手を握り、囁いた
ヴォルフ「ノワ…僕、ノワと出会ってから色々と変われたんだ…弱かった体もノワと初めて会った時から少しずつ良くなってきたし、何より心から信頼できるパートナーに出会えて生きるのが幸せになった」
ノワール「俺もヴォルと出会ってからは変われた…住む場所もなく、明日生きていけるかもわからない野良の時に、ヴォルと出会えて初めて安心できた。信頼できる大好きなパートナーと出会えてよかった…生きる事が幸せになった。ありがとう、ヴォル」
ヴォルフ「うん…なんか言葉にすると恥ずかしいな…でも本当にノワと会えてよかった、これも運命ってやつなのかな…」
ノワール「俺も恥ずかしいんだから…運命…いやこれは俺とヴォルが選んだ道だ、だからあの時も俺とヴォルが願って今があるんだと思う」
ヴォルフ「選んだ道…うん、そうだね。これは僕とノワが決めた人生、だからこれからも一緒に決めて歩もう」
ノワール「あぁ、そうだな。何年、何百年もずっと一緒に時を歩もう、どんな事があっても」
2人は抱きしめあった
今夜は深く愛し合う事はせず、そのままふかふかのベットに入り、見つめ合いながら
少しだけ初めて会った時のことを話した
ノワール「あの時の、初めて会った時のヴォルは今にも消えてしまいそうな感じだったな…」
ヴォルフ「あの頃は本当に弱かったから…それに魔力も凄く不安定で…いつ命を落としてもおかしくないって言われていた…」
ノワールは驚いた、初めて会った10歳の頃はそんなにも弱い体だったのかと
ノワール「えっ?!そうだったのか…そんなに弱い体だったんだな…初めて会った時は元気そうだったのに…」
ヴォルフ「うん…何度か死にかけたし、明日死んでもおかしくないって言われていたな…」少し笑いながら
ノワール「そんなに…その頃は治療とかしていたのか…?…」
ヴォルフ「魔力が原因だから、特に治療法もなかったし、最低限だけの世話だけだった」
狼獣人のスノータイプの紅い目はほとんどいないとされていた
ある血統のごく一部にその個体が誕生すると
魔力も多く、特殊な個体だと
だがその個体は長く生きられない、特にメス獣人は10年を超えられない
ヴォルフも例外にもれず、魔力もその歳にしてはかなり多く、一度だけ暴走をしていた
当時は短い命に対して、治療法もなく、しかもメス獣人で10年も生きられない
王族は看病をする事なく、最低限の事だけをしていた
ノワールは耳を下げ、不安な顔をしている
あまりにも酷い扱いだったと、王族でしかも幼く体も弱いヴォルフを放置同様の扱いをしていたことに、憎しみと悲しみが混ざった、ぶつけようのない複雑な感情をしている
ノワール「そうか…そんな扱いをされていたのか…まるで…」(まるで捨てられる前の俺と同じような扱いだ…)
ヴォルフ「ノワ、そんな顔をしないで…もう昔の事だし、それにいつもはずっと部屋の中で暮らしていたけど、ノワと会った時は本当に体調が良くて…城の周りを散歩していて、それでノワと出会った」
ヴォルフはノワールの不安を和らげるために、頭を撫でた
ノワール「んっ…ヴォルに出会った日…あの時は必死だったな…警備に見つかったりで…」
ヴォルフ「うん…多分あの時、ノワがいたから僕の体調が良かったんだと思う…その前日なんかは本当に死にそうだったし…」
ノワール「死にそうだったって…あの時、ヴォルが生きていて良かったよ…」
ヴォルフ「今はもうそんな心配もないけどね…あの時から…ノワと会ってからは外にも出れるようになった…体調も良くなった…それに15歳の時くらいからはもう不安定になる事は少なかったし…ほとんど治った?ような感じだったから…」
ノワール「俺と会ってから良くなったのか…あの時はもう魔力も安定していたし、治ったのも同然だったな…俺も野良生活は過酷だったから、何があってもおかしくなかった…でもヴォルと会ってからは今もこうして元気に暮らせる…」
ヴォルフ「初めて会った時のノワ、ボロボロで怪我だらけだったからね…今もこうして生きているのもノワのおかげだよ…不老不死になる前から魔力を分けてくれたし、それで体も強くなったのかも」
ノワール「あの頃は…みすぼらしくて恥ずかしい…不老不死になる前は…大好きな主人…いや番のためだから魔力を分けるのも当たり前だよ…初めての家族なんだから」
ヴォルフ「初めての家族…そうだね…ノワは僕の初めての家族で大切な番…ノワ、もっと近くに来ていい?」
ノワール「いいよ、もっとこっちに来て…」
ヴォルフはノワールの体があたるくらいに身を寄せた
白い毛と黒い毛が混ざっていく、ほのかにパートナーの匂いがして落ち着く
大好きな番をそばで感じれて、幸せだ
ヴォルフ「ノワ、あったかい…昔…僕が暴走してもノワはそばにいてくれた…あの頃は色々迷惑かけてごめんね…」
ノワール「なんで謝るんだ…ヴォルが暴走してもそばにいるのは当たり前だ…」
ヴォルフは過去に、まだ12歳の時に魔力が暴走してしまった事がある
ストレスや体調不良などによる、魔力の不安定で暴走してしまった
周りの物を壊してしまい、少量とはいえ魔力も奪ってしまうほど
その時はノワールがそばにいて、手を繋ぎ、抱きしめてあげた事で魔力が正常に戻り治った
それ以降、一度も暴走をする事もなく、それっきりだったが、これにより周りからは避けられるようになった
ただ、皮肉にもノワールとそばにいて手を繋いでいても何も言われなくなった
手を繋ぐのは魔力を抑えているのだと、王族や使用人はそう思っていたのだろう
ヴォルフ「魔力とか…色々負担かけちゃったし…何百年も前とはいえ…あの時は不老不死じゃなかったから…」
ノワール「不老不死とか関係ないよ…あの頃でも…子供の頃から、ヴォルの事が大切だったから…今も昔もずっと大好き…ヴォル…」
ヴォルフを抱きしめ、体温を共有した
ヴォルフ「僕も子供だった頃から…ノワの事大好き…ずっと……僕、こんな体質だから…ノワと会っていなかったら今頃この世にいなかったのかも…」
ノワール「怖い事を言うなよ…でも俺も…野良だったから…ヴォルと会わなかったら、生きていなかったのかもな…」
ヴォルフ「そんな事を言わないで…ノワ、生きてくれてありがとう」
ノワール「ヴォルの方こそ生きてくれてありがとう、俺が今生きているのはヴォルのおかげだ」
ヴォルフ「僕の方こそ、今生きているのはノワのおかげだよありがとう」
ノワール「うん…俺を…不老不死にしてくれたのも嬉しかった、ありがとう」
ヴォルフ「僕の方こそ、永遠の命になってくれてありがとう…」
ノワール「永遠の命…ヴォルも一緒の永遠の命でありがとうな…」
ヴォルフ「うん…僕を永遠の命にしてくれてありがとう…」
ノワール「あぁ…なんか今日はありがとうばっかり言っているなっ…」微笑みながら
ヴォルフ「ありがとうって伝えるのも大事なんだから、たくさん言い合おう…本当にありがとう…大好き…」
ノワール「そうだな…本当にありがとう…俺も大好き…」
ヴォルフ「大好きな気持ちも伝え合おう…今日は昔の話が多い日だったね…長く生きていても…案外昔の事は忘れないね…」
ノワール「そうだな…楽しい事も嫌な事も忘れられない…でも俺はどんな時でもヴォルと一緒にいれられて…嬉しかった」
ヴォルフ「僕もずっとノワのそばにいれて嬉しい気持ちだった…これからも…ノワとの楽しい思い出沢山作っていきたい」
ノワール「あぁ、沢山思い出作ろうな…小さい事も大きい事も…たくさん…」
ヴォルフはノワールの顔を見つめ、微笑んだ
ノワールも見つめ返し、耳を撫でた
ヴォルフ「うん…ノワっ…くすぐったい…でも気持ちよくて大好き…お返しに…僕もノワの耳撫でる」
お返しにとノワールの耳も撫でた
ノワール「これ結構くすぐったいなっ…ヴォルの耳はもふもふだな…」
ヴォルフ「ノワの耳も、もふもふだよ……ノワ…僕は過去のことは暗い過去だとは思ってもいないよ…ノワと会ってからは周りの言葉なんて、どうでもいいって思えたし…何よりノワと一緒だったから…」
ノワール「ヴォル…俺もあの頃の事を暗い過去って思ってもいない…ヴォルと会ってからは嫌な事を言われても…無視できるようになった…ヴォルのそばにいれて幸せだった…」
ヴォルフ「うん…僕も同じ……青い月の時には…自分を傷つけてしまった時があったけど、ノワのおかげであれ以降傷つける事はしないし…心も強くなれた」
ノワール「あの時は本当に心配だったからな…青い月は情緒が乱れるとはいえ、体の不調もあったし…そばにいるのは当たり前だ…」
ヴォルフ「あの時はありがとう…でもノワも…あの頃は自分を傷つけたりしてたから、心配だった…」
ノワール「あれは…色々…まだ若くて未熟だったから…仕方ない…あれ以降は自分を傷つけることなんてしないし…あ…でも禁断症状で傷つけてしまう時はあるが…」耳を下げながら
ヴォルフ「まだ18歳とかだったからね…今にしてみれば全然子供だったな…禁断症状…僕の血…遠慮せず吸っていいから…」
ノワール「忙しい日でもなるべく吸血はするよ…でも貧血は起こすなよ…」
ヴォルフ「大丈夫だよ…その時はちゃんと言うから……あの頃は…強くなれないメスの体は嫌だったけど、同じメスのノワが強くなっていくのを見て、メスでも強くなれんだって勇気をもらえた…」
ノワール「強くなるのに性別なんて関係ないからな…力の差があっても魔力で補えるしな…」
ヴォルフ「それでも本当にノワは強いよ…ノワが僕の事大好きって言ってくれたから、このメスの体も大好きになれたよ…」
ノワール「今も昔もヴォルの心も体も全部大好きだからな…俺も…ヴォルが俺の心も体も大好きって言ってくれたから、黒い毛もハーフの体も大好きになれた…」
ヴォルフ「ノワの事は全部が大好きだから…僕、ノワと同じメスで狼獣人でよかったよ…体の事もよく知れるし、共感できる事もあるから…」
ノワール「俺も…同じメスで…半分だけど狼獣人でよかった…心も同じ中性で…同じだからこそわかる悩みも解決できるし…」
ヴォルフ「中性的な心も…かっこよくなりたい見た目も似ているし…やっぱり僕とノワって似たもの同士だね」少し笑いながら
ノワール「あぁ、似たもの同士だな…あ…もうこんな時間か…すこし話しすぎたな」時計を見ながら
ヴォルフ「ノワと話するの楽しいから、ついつい時間忘れちゃう…」
ノワール「俺も同じ…ヴォルと話すのすごく楽しいから、ずっと話したいって思う」
ヴォルフは微笑みながら、大きい口を開けながらあくびをした
ヴォルフ「うん…僕も楽しくて…ずっと話したい……ふぁ…でも睡魔には負けそう…」目をこすりながら
ノワール「俺も眠くなってきたな…そろそろ寝ようか…」
ヴォルフ「うん…おやすみ…僕の大好きなノワ」
ノワール「うん…おやすみ、俺の大好きなヴォル」
2人は抱きしめ合いながら眠りに入った




