昔話
一部描写に性別や同性愛に関する、差別や偏見を受けるシーンがあります
今日は依頼がない日、お昼は暇なので2人は午後のティータイムを楽しんでいた
テーブルにはハーブが香るりんごの紅茶、2人の好物のフルーツがたくさん入ったマフィン
お互いの顔を見ながら昔の事を話しているようだ
ヴォルフ「ノワ、このマフィン美味しいね!」
ノワール「このマフィン俺が作ったからな、今回は成功したし、また作ってあげるよ」
ヴォルフ「ノワが作ったんだ…?!でもノワって料理苦手だった気が…」目を丸く驚いている顔
ノワール「それはもう昔の事だ…今はある程度できるし、てかヴォルだって料理苦手だろ…?」
ヴォルフ「僕は今はちゃんと料理できるよ、もう前みたいに焦がさないし…」
ノワール「丸こげのグラタン懐かしいな…未知の味がして今でも覚えている」笑いながら
ヴォルフは耳を下げ、顔を赤くした
ヴォルフ「あ、あれは…初めて作ったんだから仕方ない…そんなの覚えてなくていいのに…」
ノワール「そんな顔をするなって、でもまぁ何百年も生きていると苦手な事もできるようになるよな」
ヴォルフ「うん、苦手だった事も克服できた…それに過去も乗り越えれたし」
ノワール「過去か…あの頃は…王族にいた頃はこうやって過ごす事もできなかったしな…」
ヴォルフ「だね…お作法やら、勉強やらで忙しいし…それ以外は外にも出ずにほとんど部屋で過ごしていた記憶しかない…」
ノワール「あの頃は城の外に行くのも難しかったからな…俺はヴォルと2人きりで過ごせてよかったけど…」
ヴォルフ「僕もノワと一緒だったから、退屈もしなかったよ…でも…特に王族や貴族が集まるパーティーなんか嫌いだったな…」
ヴォルフは尻尾を垂らし、少し遠くを見るような目をしている
王族時代の頃、年に数回にあった、王族や貴族が集まる行事は嫌いだった
体調や魔力がやっと安定してきた時期、13歳頃から行事に参加させられ
嫌いなドレスを着て、紅い目を目立たさせないようにして、いつもお淑やかにしろと
元々他の獣人と話すのが苦手なヴォルフは、自分より大きい獣人に話しかけられると固まってしまう時も
その時はノワールがフォローしてくれたが、迷惑をかけてしまって罪悪感を感じていた
それに自分らしい表現をできないこの姿も嫌いだった
でも何より嫌だったのがノワールを馬鹿にする獣人もいた事を
言い返したかったが、ノワールに止められて何もいえなかった
ヴォルフ「ノワに色々と迷惑もかけちゃったし、ドレスも動きにくくて嫌いだったな…」
ノワール「俺は迷惑じゃなかったよ…ヴォルの事が大切だから」
ヴォルフ「でもずっと手を握ったり、後ろに隠れちゃったりしてたから…」
ノワール「俺はヴォルのそばにいれて嬉しかったよ、手を握ってくれるのも凄く嬉しくて離したくないって思ってた」
ヴォルフは顔を少し赤らめ、耳を左右に動かし、尻尾を揺らしている
照れくさそうな声で話し、ノワールの目を見つめた
ヴォルフ「うん…僕もノワの手離したくなかった、1人でいると声をかけられたりするし…」
ヴォルフは1人でいる時、緊張で立っている事が多く、さらに白い毛に紅い目は物珍しいのか声をかけられる事もあった
話しかけてくる獣人は貴族や他国の王族など、性別問わずどんな者なのかを見られる事もあった
幸いにも見た目が男っぽいせいか、求愛をしてくるオス獣人はいなかった
ノワール「ヴォルは美しいからな、それに王族で白い毛は会場では目立つんだろう…」
ヴォルフ「目立つというか…なんか物珍しさを見るような目だったから…あまりいい思い出ない…求愛とかはなかったけど…」
ノワール「紅い目が特殊に見えたんだろうな…求愛…俺はヴォルが求愛されなくてよかったよ」
ヴォルフ「僕もなくてよかったよ、ノワ以外に求愛されるのは嫌だし…でも行事が終わったあとは使用人は噂していたな…僕のことやノワのことを…」
行事が終わった後はいつも使用人が噂をしていた
見た目の事や振る舞い、ヴォルフの心の事など
ノワールを悪く言うようなことを言っていた
中には庇ってくれる使用人もいたが、それでも辛い日々だった
ノワール「噂していたな…全部聞こえているのに、庇ってくれる者もいたが、それでも辛い日々も多かったな」
ヴォルフ「だね…辛い日々も多くて、なんか自由が少ない感じだった…」
ノワール「まぁ…あの時は厳しい世の中だったからな…今と違って偏見も差別も多い世界…でも今はそんな事はないし時代は変わったな…」
ヴォルフ「うん…でも僕はノワがいたから、嫌な事を言われても慰めてくれて心が軽くなったよ」
ノワール「俺の方こそ、ヴォルに慰めてもらえたし…お互い様だよ」
ヴォルフ「ノワが大好きだからね…それに僕が確か13歳?くらいの頃に思い切って髪を切った時、ノワ は僕の事かっこいいって言ってくれたの今でも覚えている」
ノワール「あったな…いきなり髪を切ったから、びっくりしたけど、あの頃からヴォルはすごくかっこよかったよ」
ヴォルフは13歳の頃、今のような髪型にした事があった
当時は誰にも言わず、独断の判断で切ったため王族からは叱られていた
だがヴォルフはそれに抵抗し、それからも髪を伸ばさないで今の短髪のような髪型にしていた
ドレスも15歳からは着なくなった
ドレスは好きじゃない、自分らしい格好をしたいからと
ズボンを履くようになった
少しでも自分らしくいたかったから、周りに反対されようとも、それを無視をした
ノワールはその時は容姿を褒めてくれた
あの時はすごく嬉しかったと、それからずっと今のような格好で過ごしていた
ヴォルフ「長いのは好きじゃないし、やっぱり短いのがいいかなって…あの頃は周りに似合わないなんて言われたけど、ノワだけは褒めてくれた…あの時すごく嬉しかった」
ノワール「褒めるよ、あの頃も今もずっとヴォルはかっこよくて強いから」
ヴォルフ「僕的にはノワの方がすごくカッコよかった…強くて憧れだったよ」目を細め、尻尾を揺らしながら
ノワール「俺もヴォルは憧れの存在だった…ずっと俺のそばにいてほしいって思ってた」少し顔を赤くしながら
ヴォルフ「僕もノワのそばにいたかった、だから今もずっとそばにいる…大好きなパートナーだから…」
ノワール「ヴォル…俺も大好きな番だよ、どんな見た目でも全部大好き…今も昔も変わらず…」
ヴォルフ「ノワの見た目も大好きだよ…あの頃も今も全部大好き………でもあの頃は…見た目のせいで色々言われたな…20歳になってからは縁談とかあったし…」
ノワール「縁談か…王族だったとはいえヴォルの番は俺だけなのに…あの時のヴォルはすごく嫌そうな顔をしてた…」
ヴォルフ「僕にはノワしかいないから、多分生きている中で一番嫌な顔をしてたと思うよ…ノワも今まで見た事もない顔をしていたよ…」
ノワール「嫌に決まっているだろ…大切な番なんだから…あの頃の見た目もヴォルらしい姿で好きだったのに…」
ヴォルフ「うん…でも…20歳になる前はそんな話なかったのに…僕らを追い出したいために縁談とか本当…反吐が出る…」目を細め、耳を下げている
ノワール「…どうせ期待などしてなかったのだろう…相手は断る時も魔力とか見た目に対して色々言っていたしな…」
ヴォルフ「まぁ求愛もなくて、どの獣人も一目見ただけで断っていたから、僕的には良かったけど…髪を伸ばせやお淑やかにって言われたな…」
ノワール「それに相手が決まらなかったら2人を追放するとかって言っていたな…」
ヴォルフは20歳になる前くらいの頃、それまでなかった縁談の話が出始めた
おそらく王族はこんなに長く生きるとは思ってもなかったのだろう
だがどの獣人も一目見ただけで断っていた
ヴォルフもノワールも不快な顔で、相手との話を終わるのを早く待っていた
そしてあの時も相手はこんな見た目で、しかも魔力も不安定で、暴走をするような獣人とは番になれないと断った
王族はあのまま2人を追放しようとしていた矢先に、2人はその前に国から逃亡をした
ヴォルフ「追放される前に逃亡して正解だった…どっちみち追い出すつもりだったんだし…あの魔法を使ったり、不老不死になって色々あったけど、今もノワとずっと一緒にいられるし」
ノワール「俺もヴォルと一緒にいられてよかったよ、ヴォルのことはどんな事があっても守る」
ヴォルフ「僕もノワのことはどんな相手であろうとも守るよ、あの頃…定期的に血を取られたりもしたな…」耳を下げ、ため息をつく
ノワール「あー…魔力測定か…ヴォルは少し特殊だったからな…血を取る時、ずっと俺の手握っていたし…」
ヴォルフは不安的な魔力と健康確認のために、半年に一度少量の血液を取られていた
負担などを考え、最低限の血液を摂取させていたが
刺されるような痛みが嫌いなヴォルフは、尻尾を巻きながらいつもノワールの手を握っていた
魔力測定用の球体に触れる事もあったが、魔力が多いため、吸われるような感覚も苦手で嫌いだった
ヴォルフも仕方ない事だと、魔力を安定させるためだからと耐えていた
ヴォルフ「魔力のためだから仕方ない事だけどね…僕が特殊だから…でも魔力測定に触れるのも力が抜けるようで苦手だったな…まぁ不老不死の今も、たまにノワに測ってもらってはいるけど…」
ノワール「爪が食い込むくらい強く握っていたな、今は俺が直接測っているから、痛む事はないだろ」
ヴォルフ「うん、ちょっと恥ずかしいけどね…あの頃からノワは僕の健康を見てくれたし…色々迷惑かけちゃってたな…」
ノワール「ヴォルの健康を見るのは当たり前だよ…あの頃は…魔力までは見れなかったけど、健康の事は勉強したし…」
ヴォルフ「ノワだったから…色々僕のことを見せれた…ありがとう…ノワ…」
ノワール「俺だってヴォルに健康を見てくれたし、当たり前のことだよ…それに色々…教えてくれたから…」
ヴォルフ「うん…そういえばノワは今も魔力が不安定になるはある?」
ノワール「吸血が多い時は少し不安的になるが、昔みたいに体調が悪くなる事はないよ」
ヴォルフ「それならよかった…ノワも昔は時々無理しすぎて倒れる事もあったから…」
ノワールも側近の頃、働きすぎや周りからのプレッシャーなどで魔力が不安定になり体調を崩す事もあった
その時はヴォルフが看病してくれて、魔力も分け与えてくれた
無理をしてしまうノワールが心配でずっと付きっきりで世話をしてくれた事もあった
ノワール「あの時はありがとうな…側近だったのに主人に世話をされるなんて側近失格だったけど…」
ヴォルフ「あの時も側近とか関係なしにノワのことがたいじだったから…ノワは今も昔も大切なパートナーだから」
ノワール「そうだったな…今も昔も大切なパートナーであり番だ、昔は色々大変な時代だったな…」
ヴォルフ「うん…でも楽しい事もあったよ、ノワと一緒に森を散歩したりとか、お忍びで街に行ったりとか」
目を細め微笑むような顔をしながら、尻尾を少しゆらゆらと揺らしている
ノワール「あったな…小さい事だけど、楽しかったな…今はもう周りを気にせず一緒に手をつなげるけどな…」
孤独で押し付けが多かったけど、時に楽しい事もあった
一緒にお出かけをして、デートをしているみたいで
季節を楽しんだり、時には狼の姿になって遊んだりと
あの頃は小さい事でも凄く楽しかった
城にいる時でもそばにいてくれて、人目を盗んで尻尾を絡めたり手を繋いだりと小さい事でも幸せだった
ヴォルフ「うん…でも僕が王族じゃなかったらノワと出会えなかったし、出生を恨む事はないよ…ただ時代が、環境が悪かっただけ…」
ノワール「そうか…俺もハーフで生まれなければ…捨てられなければ皮肉にもヴォルと出会えれなかった、これも運命というべきなのか…」
ヴォルフ「運命か…でも過去は変えられないんだから、昔のことを気にするより今を、先のことを考えよう」
ノワール「あぁ…過去は変えられない、この先の、永遠の時をどう過ごすかを考える方が楽しい」
ヴォルフ「うん、僕らは永遠の命だから、どんな事でも挑戦できる…だから色々なことをしよう、僕はノワと楽しい事も苦しい事も全て共有したい」
ノワール「俺もどんな事でも一緒に苦しみも喜びも共感したい、永遠に」
ヴォルフ「永遠にね…んっ…もぐっ…マフィンおいしい〜!今度僕にも作り方教えてよ!」尻尾を振りながら満面の笑顔で
ノワールはそんなヴォルフが愛しく、微笑んでいる
ノワール「今度一緒に作ろうな、もぐっ…うん!確かに美味しいな!」
ヴォルフ「うん!一緒に作ろう…!…僕、ノワがそばにいてくれたから、心を病む事もなかった…ずっとそばにいてくれてありがとう…」
ノワール「俺の方こそ、そばにいてくれてありがとう…ヴォルがいたから俺も病まなかった…」
ヴォルフ「ノワは強いよ…ずっと……僕は全然だな…」
ノワール「ヴォルも強いよ、意思も心も強くて…見習いたいくらいだ」
ヴォルフ「うん…僕もノワも強い心を持っている……んっ…」紅茶を一口飲む
ノワール「そうだな……あ…もうこんな時間かぁ、そろそろ夕食の準備をしないと」壁にかけている時計を見ながら
ヴォルフ「僕も手伝うよ、片付けは僕がやっておくね」
2人はテーブルを綺麗にし、食器を片付けた
食器を洗っている時、ノワールはぽつりとつぶやいた
ノワール「昔は…ヴォルは体も弱かったな…今はもう強い体になったけど」
ヴォルフ「あの頃は魔力が上手く使えなかったからな…あんまり外にも出れなかったし、でもノワと出会ったあの時は珍しく体調も良くて、城の外を散歩していた…そこで…」
ノワール「そこで俺と出会ったのか、今でも覚えているよ。俺の黒い毛をかっこいいって…凄く嬉しかった…初めてこの色に誇りに思えたよ」
ヴォルフ「あの時は本当にかっこよくて、咄嗟に口に出しちゃった。今もかっこよくて大好きだけど」
ノワール「ノワールって名前をくれたのも凄く嬉しかった、俺の色にぴったりな名前でかっこよくて大好きな名前…」尻尾を振りながら
ヴォルフ「ノワール…その名前もすごく大好き…僕にはない、かっこいい色…その蒼い瞳も大好き…サファイヤみたいで綺麗で黒の毛に似合っている」少し照れながら
ノワール「ありがとう、俺もヴォルの白い毛は美しくて大好き、その紅い、ルビーのような瞳もかっこよくて純白の毛に似合っている…ヴォルフって名前も強くて、大好き…」顔を赤く染めながら
ヴォルフ「ヴォルフ…この名前も僕は大好きだよ…強くて、逞しい狼獣人になれるようにって、僕の親がつけたらしい…」
ノワール「ヴォルの親かぁ…どんな人だったんだろう…」
ヴォルフ「僕もあまり知らないけど、母親は僕と同じ髪の色で耳も大きかったらしい、父親は華麗な体格で純白の毛だったらしいよ…あと性格も両親共に優しい人だって聞いた事がある…」遠い目をしながら
ノワール「そうか…ヴォルに似ていて良い人だったんだろうな……あ……色々聞いてごめんな…」耳と尻尾を下げる
ノワールは無神経に普段聞くことのない親のことを聞いてしまい、ヴォルフの心の事を気にしている
ノワールは親に捨てられて、親の事が嫌いだった事もあり
あまり相手の両親の事を聞く事はしないが
ヴォルフの親の事を聞いてしまった事に罪悪感を感じた
ヴォルフ「なんで謝るの?…別に僕は気にしてないし、皿ここに置いとくね」食器棚に皿を置く
ノワール「いや…こういう事ってあまり聞かないし、嫌な思いをしてないか心配になったから…」尻尾を下げている
ヴォルフ「さっき言ったでしょ、気にしてないって…僕はあの王族が嫌いなだけ、だから関係ない親を憎んでないよ」
ヴォルフは特に親の事を気にする事もなく、恨む事も憎む事もしていない
嫌いなのはあの王族達だけだと
ノワール「そうか、ヴォル…んっ…大好き…ずっと…永遠にいるからな…」
ヴォルフの背後から包むように抱きしめ、体温を共有した
あったかくて、落ち着く匂い
ヴォルフはその包む腕を握り、頬に唇を落とした
ヴォルフ「ん…ノワ、僕も大好き…ずっと…一緒にいるから…僕と出会ってくれてありがとう、ノワ」
ノワール「お礼を言うのは俺の方だ…ヴォル…ありがとう、俺と出会ってくれて……」
2人は少しの間、体温や魔力を共有した
その後は夕食の準備を一緒にし、食事を終えた後は部屋で一緒の時を過ごした
部屋
ヴォルフはノワールの手を握り、囁いた
ヴォルフ「ノワ…僕、ノワと出会ってから色々と変われたんだ…弱かった体もノワと初めて会った時から少しずつ良くなってきたし、何より心から信頼できるパートナーに出会えて生きるのが幸せになった」
ノワール「俺もヴォルと出会ってからは変われた…住む場所もなく、明日生きていけるかもわからない野良の時に、ヴォルと出会えて初めて安心できた。信頼できる大好きなパートナーと出会えてよかった…生きる事が幸せになった。ありがとう、ヴォル」
ヴォルフ「うん…なんか言葉にすると恥ずかしいな…でも本当にノワと会えてよかった、これも運命ってやつなのかな…」
ノワール「俺も恥ずかしいんだから…運命…いやこれは俺とヴォルが選んだ道だ、だからあの時も俺とヴォルが願って今があるんだと思う」
ヴォルフ「選んだ道…うん、そうだね。これは僕とノワが決めた人生、だからこれからも一緒に決めて歩もう」
ノワール「あぁ、そうだな。何年、何百年もずっと一緒に時を歩もう、どんな事があっても」
2人は抱きしめあった
今夜は深く愛し合う事はせず、そのままふかふかのベットに入り、見つめ合いながら
少しだけ初めて会った時のことを話した
ノワール「あの時の、初めて会った時のヴォルは今にも消えてしまいそうな感じだったな…」
ヴォルフ「あの頃は本当に弱かったから…それに魔力も凄く不安定で…いつ命を落としてもおかしくないって言われていた…」
ノワールは驚いた、初めて会った10歳の頃はそんなにも弱い体だったのかと
ノワール「えっ?!そうだったのか…そんなに弱い体だったんだな…初めて会った時は元気そうだったのに…」
ヴォルフ「うん…何度か死にかけたし、明日死んでもおかしくないって言われていたな…」少し笑いながら
ノワール「そんなに…その頃は治療とかしていたのか…?…」
ヴォルフ「魔力が原因だから、特に治療法もなかったし、最低限だけの世話だけだった」
狼獣人のスノータイプの紅い目はほとんどいないとされていた
ある血統のごく一部にその個体が誕生すると
魔力も多く、特殊な個体だと
だがその個体は長く生きられない、特にメス獣人は10年を超えられない
ヴォルフも例外にもれず、魔力もその歳にしてはかなり多く、暴走もする
短い命に対して、治療法もなく、しかもメス獣人で10年も生きられない
王族は看病をする事なく、最低限の事だけをしていた
ノワールは耳を下げ、不安な顔をしている
あまりにも酷い扱いだったと、王族でしかも幼く体も弱いヴォルフを放置同様の扱いをしていたことに、憎しみと悲しみが混ざった、ぶつけようのない複雑な感情をしている
ノワール「そうか…そんな扱いをされていたのか…まるで…」(まるで捨てられる前の俺と同じような扱いだ…)
ヴォルフ「ノワ、そんな顔をしないで…もう昔の事だし、それにいつもはずっと部屋の中で暮らしていたけど、ノワと会った時は本当に体調が良くて…城の周りを散歩していて、それでノワと出会った」
ヴォルフはノワールの不安を和らげるために、頭を撫でた
ノワール「んっ…ヴォルに出会った日…あの時は必死だったな…警備に見つかったりで…」
ヴォルフ「うん…多分あの時、ノワがいたから僕の体調が良かったんだと思う…その前日なんかは本当に死にそうだったし…」
ノワール「死にそうだったって…あの時、ヴォルが生きていて良かったよ…」
ヴォルフ「今はもうそんな心配もないけどね…あの時から…ノワと会ってからは外にも出れるようになった…体調も良くなった…それに15歳の時くらいからはもう不安定になる事は少なかったし…ほとんど治った?ような感じだったから…」
ノワール「俺と会ってから良くなったのか…あの時はもう魔力も安定していたし、治ったのも同然だったな…俺も野良生活は過酷だったから、何があってもおかしくなかった…でもヴォルと会ってからは今もこうして元気に暮らせる…」
ヴォルフ「初めて会った時のノワ、ボロボロで怪我だらけだったからね…今もこうして生きているのもノワのおかげだよ…不老不死になる前から魔力を分けてくれたし、それで体も強くなったのかも」
ノワール「あの頃は…みすぼらしくて恥ずかしい…不老不死になる前は…大好きな主人…いや番のためだから魔力を分けるのも当たり前だよ…初めての家族なんだから」
ヴォルフ「初めての家族…そうだね…ノワは僕の初めての家族で大切な番…ノワ、もっと近くに来ていい?」
ノワール「いいよ、もっとこっちに来て…」
ヴォルフはノワールの体があたるくらいに身を寄せた
白い毛と黒い毛が混ざっていく、ほのかにパートナーの匂いがして落ち着く
大好きな番をそばで感じれて、幸せだ
ヴォルフ「ノワ、あったかい…昔…僕が暴走してもノワはそばにいてくれた…あの頃は色々迷惑かけてごめんね…」
ノワール「なんで謝るんだ…ヴォルが暴走してもそばにいるのは当たり前だ…」
ヴォルフは過去に、まだ12歳の時に魔力が暴走してしまった事がある
ストレスや体調不良などによる、魔力の不安定で暴走してしまった
周りの物を壊してしまい、魔力も奪ってしまうほど
その時はノワールがそばにいて、手を繋ぎ抱きしめてあげた事で魔力が正常に戻り治った
これにより周りからは避けられるようになったが
それ以降、皮肉にもノワールとそばにいて手を繋いでいても何も言われなくなった
手を繋ぐのは魔力を抑えているのだと、王族や使用人はそう思っていたのだろう
ヴォルフ「魔力とか…色々負担かけちゃったし…何百年も前とはいえ…あの時は不老不死じゃなかったから…」
ノワール「不老不死とか関係ないよ…あの頃でも…子供の頃から、ヴォルの事が大切だったから…今も昔もずっと大好き…ヴォル…」
ヴォルフを抱きしめ、体温を共有した
ヴォルフ「僕も子供だった頃から…ノワの事大好き…ずっと……僕、こんな体質だから…ノワと会っていなかったら今頃この世にいなかったのかも…」
ノワール「怖い事を言うなよ…でも俺も…野良だったから…ヴォルと会わなかったら、生きていなかったのかもな…」
ヴォルフ「そんな事を言わないで…ノワ、生きてくれてありがとう」
ノワール「ヴォルの方こそ生きてくれてありがとう、俺が今生きているのはヴォルのおかげだ」
ヴォルフ「僕の方こそ、今生きているのはノワのおかげだよありがとう」
ノワール「うん…俺を…不老不死にしてくれたのも嬉しかった、ありがとう」
ヴォルフ「僕の方こそ、永遠の命になってくれてありがとう…」
ノワール「永遠の命…ヴォルも一緒の永遠の命でありがとうな…」
ヴォルフ「うん…僕を永遠の命にしてくれてありがとう…」
ノワール「あぁ…なんか今日はありがとうばっかり言っているなっ…」微笑みながら
ヴォルフ「ありがとうって伝えるのも大事なんだから、たくさん言い合おう…本当にありがとう…大好き…」
ノワール「そうだな…本当にありがとう…俺も大好き…」
ヴォルフ「大好きな気持ちも伝え合おう…今日は昔の話が多い日だったね…長く生きていても…案外昔の事は忘れないね…」
ノワール「そうだな…楽しい事も嫌な事も忘れられない…でも俺はどんな時でもヴォルと一緒にいれられて…嬉しかった」
ヴォルフ「僕もずっとノワのそばにいれて嬉しい気持ちだった…これからも…ノワとの楽しい思い出沢山作っていきたい」
ノワール「あぁ、沢山思い出作ろうな…小さい事も大きい事も…たくさん…」
ヴォルフはノワールの顔を見つめ、微笑んだ
ノワールも見つめ返し、耳を撫でた
ヴォルフ「うん…ノワっ…くすぐったい…でも気持ちよくて大好き…お返しに…僕もノワの耳撫でる」
お返しにとノワールの耳も撫でた
ノワール「これ結構くすぐったいなっ…ヴォルの耳はもふもふだな…」
ヴォルフ「ノワの耳も、もふもふだよ……ノワ…僕は過去のことは暗い過去だとは思ってもいないよ…ノワと会ってからは周りの言葉なんて、どうでもいいって思えたし…何よりノワと一緒だったから…」
ノワール「ヴォル…俺もあの頃の事を暗い過去って思ってもいない…ヴォルと会ってからは嫌な事を言われても…無視できるようになった…ヴォルのそばにいれて幸せだった…」
ヴォルフ「うん…僕も同じ……青い月の時には…自分を傷つけてしまった時があったけど、ノワのおかげであれ以降傷つける事はしないし…心も強くなれた」
ノワール「あの時は本当に心配だったからな…青い月は情緒が乱れるとはいえ、体の不調もあったし…そばにいるのは当たり前だ…」
ヴォルフ「あの時はありがとう…でもノワも…あの頃は自分を傷つけたりしてたから、心配だった…」
ノワール「あれは…色々…まだ若くて未熟だったから…仕方ない…あれ以降は自分を傷つけることなんてしないし…あ…でも禁断症状で傷つけてしまう時はあるが…」耳を下げながら
ヴォルフ「まだ18歳とかだったからね…今にしてみれば全然子供だったな…禁断症状…僕の血…遠慮せず吸っていいから…」
ノワール「忙しい日でもなるべく吸血はするよ…でも貧血は起こすなよ…」
ヴォルフ「大丈夫だよ…その時はちゃんと言うから……あの頃は…強くなれないメスの体は嫌だったけど、同じメスのノワが強くなっていくのを見て、メスでも強くなれんだって勇気をもらえた…」
ノワール「強くなるのに性別なんて関係ないからな…力の差があっても魔力で補えるしな…」
ヴォルフ「それでも本当にノワは強いよ…ノワが僕の事大好きって言ってくれたから、このメスの体も大好きになれたよ…」
ノワール「今も昔もヴォルの心も体も全部大好きだからな…俺も…ヴォルが俺の心も体も大好きって言ってくれたから、黒い毛もハーフの体も大好きになれた…」
ヴォルフ「ノワの事は全部が大好きだから…僕、ノワと同じメスで狼獣人でよかったよ…体の事もよく知れるし、共感できる事もあるから…」
ノワール「俺も…同じメスで…半分だけど狼獣人でよかった…心も同じ中性で…同じだからこそわかる悩みも解決できるし…」
ヴォルフ「中性的な心も…かっこよくなりたい見た目も似ているし…やっぱり僕とノワって似たもの同士だね」少し笑いながら
ノワール「あぁ、似たもの同士だな…あ…もうこんな時間か…すこし話しすぎたな」時計を見ながら
ヴォルフ「ノワと話するの楽しいから、ついつい時間忘れちゃう…」
ノワール「俺も同じ…ヴォルと話すのすごく楽しいから、ずっと話したいって思う」
ヴォルフは微笑みながら、大きい口を開けながらあくびをした
ヴォルフ「うん…僕も楽しくて…ずっと話したい……ふぁ…でも睡魔には負けそう…」目をこすりながら
ノワール「俺も眠くなってきたな…そろそろ寝ようか…」
ヴォルフ「うん…おやすみ…僕の大好きなノワ」
ノワール「うん…おやすみ、俺の大好きなヴォル」
2人は抱きしめ合いながら眠りに入った
2人はこれは運命ではない、自ら願った生き方だと
あの時、ノワールと初めて会った時からヴォルフは体も、魔力も少しずつであるが安定してきた
初めて暖かさを知った
ノワールもヴォルフと出会い、過酷な野良生活から抜け出した
初めてぬくもりを知った
2人はどんな過酷な人生であろうとも、それを乗り越え、そして出会った
過去の、あの頃の記憶は不幸ではない、どんな時でも心を通わせて、気持ちを伝え合って生きてきた
だから周りの言葉など、どうでもよかった
不老不死になる前からも大好きなパートナーと常に離れず、どんな時でも一緒に暮らしていた
不老不死になってからも、変わらず対等な関係で、一生その絆も愛も離れる事もない、強い魂で結ばれている
この生き方こそが自分らしく、そして愛するパートナーと永遠の時を共に過ごせるのだから
これが自ら選んだ道だと
だから、不幸になる運命などはない
2人が王族時代のあの頃は時代も古く、偏見も差別もあった時代
女らしくを押し付けられ、自分の心を、中性的である事を否定されてきた
体も弱い、まともに使えない魔力、不安定で暴走するかもしれない
おまけに養子の存在で紅い目の特殊な獣人
本来は長く生きられないはずなのに、20歳まで生きていた
王族はその事を不気味だと、やはり紅い目は異質で穢れると、腫れ物のような扱いをしていた
ヴォルフは戦で命を落とした国王の弟の子であり、母君も幼いヴォルフを残して病で亡くなった
父親は狼獣人のオスにしては華麗な姿で、スノータイプらしい白く美しい毛だった
母親は当時では珍しい自由恋愛で、ヴォルフの父親と出会い番になった
出身も貴族でも王族でもなく、平民暮らしの身寄りのないメスの獣人だった
そんな中で2人は出会い、周りの反対を押し切り番になった
そしてヴォルフが誕生したが、当時の戦で父親は命を落とし、母親は流行病で亡くなった
ヴォルフは不安定な魔力、体の弱さに紅い目の影響で子孫を残せない体質
このような者はいらないと、いつ暴走するかわからない王族をそばに置きたくなった
いや、その不安定な魔力で、いつでも城を滅ぼせるような力が恐ろしかったのだろう
ただ理由もなしに追放もできない
早く城から追い出したく、他国の適当な相手に嫁がせようとしていた
見た目や性格の事で期待をしてなかったのか
あの時、もしあのまま2人が逃亡しなかったら、王族は2人を国外へ追放する予定もあった
暴走されてもいいように人気のない、遠い国へと
当時ヴォルフもその事は薄々気づいていた、養子だから、不安定な魔力だから
この城から追い出したくて、嫁がせようとしているのを
ヴォルフとノワールの追放の噂もあった
自分らしくいられない、あの場所に居たくない
だから逃亡しようと思った、逃げるのではなく新しい未来を、ノワールと一緒に自由の道へと
『僕はノワールとならどこへでも行ける、どんな先が待っていようとも』
王族や使用人はノワールの事も侮辱していた
ハーフ獣人のことを、黒い毛も、ノワールの心を中性的でありたい心までも否定していた
メス獣人で側近、見た目も男のような見た目、女らしい格好もしない野良の獣人、馬鹿にされる日々だった
あの時代は側近はオス獣人が当たり前だった
それにハーフ獣人、力も魔力も弱いとされていた時代
あの頃は自由も少なく、勉学や作法などもあり、そして部屋で過ごす時間が多かった
周りはヴォルフとノワールの事を変わり者同士、普通じゃないと
邪魔者扱いをして、遠ざけていた
でも2人は支え合って生きてきた
大好きな番がそばにいたから、そんな事は気にしなかった
周りの言葉など、どうでもいいと、心を病む事もなかった
いつも身の回りのことはノワールが担当してくれた
他の使用人は近寄りたくないのか、そばにいることはなかった
そのため朝の支度もノワールがしてくれて、勉学の時間もご飯を食べる時も常に一緒だった
普段の健康確認も、青い月の時期も全てノワールが担当してくれた
専門医は触れようとすると牙を向くヴォルフに関わりたくないのか、それとも魔力が怖いのかノワールに全てを任せていた
ただ魔力測定だけは他の者が担当していたが、その時でもそばにいて、手を繋いであげていた
就寝の準備もノワールがやってくれて、一緒に寝る事も多かった
本来は側近が主と一緒に寝るなど、何があろうともそんな事は出来ないはずだが
ヴォルフはノワールと長期間離れると魔力が不安定になり、暴走リスクが上がっていたため
王族や周りは何も言わなかった
仮に暴走されてもノワールが近くにいるため、全てを受け止めてくれると思っていたのだろう
そのため王族はノワールを追い出す事もなく、そのままヴォルフの近くにいる事だけを認めていた
でもノワールは魔力を抑えるためにいるのではなく、大好きな番のためだからと、ヴォルフのそばにいてあげた
ヴォルフもそのお返しにと色々な事をしてくれた
どんな時でもそばにいて、離れないように
2人は心から愛せる番がいたから、心も体も折れなかった、孤独でも、不思議と寂しさを感じなかった
そばにいて手を繋ぐだけでも嫌な事を忘れられた
あの時の逃亡も大好きなパートナーがいたから、すぐに決断できた
『ヴォルフ様とならどんな所へでも行きます、何があろうともそばにいます』
2人は心も強く、意志が固く、大好きな番のために頑張れる勇気を持っている
挫ける事もない心を、諦めないという強い意志を持っている
あの環境から抜け出せたのも、この強く逞しい心を持っているから
でもメス同士で番になる事も今より当たり前ではなかった時代
不老不死になってからの生活も偏見もあった、中にはメス同士の番を馬鹿にする声もあった
でも2人は気にしなかった、大好きな番がそばにいるから
ヴォルフとノワールはもう王族時代のことを、もう気にしてはいない
200年以上も生きているから、もうあの時の王族はいない
過去は変わらない、変えられない
そんな事を考えるより、今はパートナーの事を考える方が先だと
どんな話をしよう、どんな事をしようなど、楽しい事を共有したいと
たとえ昔のことを思い出して苦しくなっても、支え合い慰め合おうと
悲しい事も、嫌な事でも、楽しい事も全て分かち合おうと、永遠の命なのだから色々な事をする方が幸せだと
今のこの時が、大好きで愛しく、一生そばにいると誓った番とずっといられるのが幸せな時間だと
永遠に、ずっと




