ヴァルガシア国の王族 ⑤
屋敷
二人はブランシュとノーザンを客間まで案内した
ヴォルフ「紅茶を用意するから、貴様らはここで待っておけ」
二人は返事をしており、ソファに腰をかけているが、尻尾を立て緊張しているようだ
ノワール「ヴォルフ、紅茶は私が用意するから、ヴォルフもそこで待っていて」
ヴォルフ「ノワール…じゃあ任せるよ…」
ノワールは部屋から出て紅茶を用意しに行き、ヴォルフは二人の正面のソファに座った
ヴォルフ「………」
何も話してこない、その目も合わせようともしない
いや話したくないようだ
子孫に罪はないとはいえ、わざわざここまで来て不老不死の事を聞いてきた
警戒するのは当たり前だ、正直関わりたくもない
しばらく沈黙が続き、やっと口を開いた時にはノワールが戻ってきた時だった
ノワール「…安心しろ…毒入れてないからな…それで…話はなんだ…」紅茶をおきながら
ブランシュ「…不老不死の事を…聞きに…」
ヴォルフ「私は…そんなもの…不老不死など知らない……」
ノーザン「不老不死…ヴォルフ様…警戒するのはわかります…ですが…信じてもらえないと思いますが、私もブランシュも不老不死なんです」
ヴォルフ、ノワール「不老不死だと……?…」
二人は尻尾と毛先を立てながら、驚いている
目の前にいる二人が不老不死という事を
ノーザンの怪我がすぐ治るのも、ブランシュの魔力が自分たちと同じくらいあることも、全て辻褄が合った
ブランシュ「驚かれますよね…でも本当なんです…不老不死というのは…だから…お二人にその事を聞きたくて…」
ヴォルフ「…不老不死…まさか…あの魔法を使ったのか…?…」
ブランシュ「あの魔法を、禁断の魔法を使い、私もノーザンも不老不死になりました…」
二人は詳しくは言わずに、不老不死になった事だけを伝え、そして調べていくうちにヴォルフとノワールのことを知ったと話した
ヴォルフ「……ブランシュ殿とノーザン殿は本当に不老不死なんですね…」
ノワール「…まさか私達以外にもいるとは……どうりで怪我を治るはずだ…魔力も…でも、まさか私達のことまで知っているとは…」
ヴォルフ「二人は私達のことをどのくらい知っているのか…?…もしかして紅い目の事も…」
ブランシュ「お二人のことは王宮の資料室の本で知りました、でもほとんど情報がなくて…それでこの国にお二人の特徴が似ている方がいると聞き、ここにきました」
ノーザン「赤い目…?は詳しくは知りませんが、国ではお二人のことは噂にはなっています…とは言っても都市伝説のような話ですが…」
ヴォルフ「紅い目は知らないのであれば…それでいい…都市伝説か…まぁ…私的にはその方がいい。あの国では、王族のヴォルフは存在しない者として扱ってほしい」
ノワール「…私も同様、ヴォルフの側近であるノワールは存在しない者として扱ってくれ」
ノワール「…それで…ほとんど情報がないと言っていたが…どこまで私達のことは載っているんだ?」
ブランシュ「ヴォルフ様とノワール様の名前と性別…それとお二人は20歳の時に突如魔物に襲われて亡くなったと…それくらいしかありませんでした。なんというか、それ以外の事は消されているような感じでしたから…」
ヴォルフ「そうか…まぁ…私達は死んだようなものだし、あの国でもそういう扱いなのだろう…」
ノワール「死んだ扱いか…間違いではないが、不老不死の事が書かれてないだけマシか…」
ノーザン「それと…不老不死の事もですが…あの事件の事も聞きたくて…」
ヴォルフ「あの事件…?…私達はあれ以降、ヴァルガシア国には戻ってないが…」
ノワール「何の事件かは知らないが、私達は関わっていない」
二人は困った顔をした、あの事件とは一体何のことか
あれ以降もうあの国とは関わっていないと
ブランシュとノーザンはあの事件の事を説明した
反乱が起きた事を、そしてそれ以降は国が変わった事も
その5年後に国王は病に苦しみ、命を落としたという話をした
ブランシュ「…という事件なのですが、お二人は知らなかったのですね…」
ヴォルフ「全く知らない事だ…ただ…私達がきっかけなのは変わらない…変わったんだな…あの国は…」
ノワール「あんな差別主義だったのに…変わりすぎた…国王もこんな奴だから、天罰でも喰らったのだろう」
ノーザン「聞いてもいいのかわかりませんが…ヴォルフ様とノワール様の時代はどのような環境でしたか…?」
ブランシュ「私も少し気になります…でも無理にお答えいただかなくても大丈夫です」
ヴォルフ「私達の頃ですか…あの頃は偏見も差別も多く…私もノワールもまるで変わり者のような、腫れ物扱いでした…」耳を下げ、俯きながら
ノワール「あの頃はハーフってだけで石を投げる者もいたからな…それに…メスは弱い存在だった…」低い声で、ヴォルフの手を握っている
二人は王族時代の頃の事を話した
偏見やハーフへの差別、ヴォルフはらしくを押し付けられた事も
同性同士の番も当たり前だったわけでもなく、変わり者同士と馬鹿にされた事
逃亡した後でも、異種族で同性の番というだけで、変だと言われた事も
そしてヴォルフは魔力が多く、異質な存在だと扱われた事も、話せる事は話した
その事を聞き、ブランシュとノーザンは悲しみのような、怒りのような顔をしている
自分達の国がそのような国だったことに、二人はどれだけ傷つき、孤独だった事も、ぶつけようのない怒りを抑え、話した
ブランシュ「そうだったんですね…そんな時代だったとは…」
ノーザン「あの国は…そのような事を……」
ヴォルフ「…もう昔の事だ…それにノワールがいたから、あの環境に耐えられた」
ノワール「遠い昔の事だし、ヴォルフがいたから…どんな時でも支え合ってきた」
ヴォルフ「それに…幸いにも異質な魔力のせいか、それとも私の見た目が男っぽいなのか…私の所に異性は寄りつかなかった…」
ノワール「ヴォルフの番は私だけだからな…寄り付かなくてよかったよ…」
ブランシュ「そうなんですね…お二人はその頃から支え合って生きてきたのですね…」
ヴォルフ「あぁ…あの頃はらしさを押し付けるくせに、避けられてばっかりだったからな…でもノワールのことを馬鹿にしてたのは許せなかった…」
ノワール「ヴォルフ…でも俺はヴォルフの事を変わり者のような扱いをしていたのは許せなかった…」
ノーザン「そんな扱いをされていたのですね…赤い目というのもヴォルフ様と関係あるのでしょうか…?」
ヴォルフ「関係あるよ…紅い目も…魔力も…まぁこの話は次の時でいいだろ、もう不老不死のこと話したんだから、貴様らも早く帰ったらどうだ?」
思ったより長く話しすぎたのだろう、外はもう日が沈み、暗くなっていた
ブランシュ「あ、もうこんな時間…?!…ノーザン早く帰らないと…」
ノワール「まて…今夜は大雨だ…それにここから街に行くのに1時間はかかる…」
ヴォルフは小声で何かを話している
ヴォルフ「……ノワ、どうする?…このまま帰らす?…流石に不老不死とはいえ危ないんじゃないかな…?」
ノワール「…このまま泊まらすのか…?…話を聞く限りでは、不老不死の事も本当のようだし…俺らを襲う気もなさそうだが…」
ヴォルフ「泊まらすしかないでしょ…もしあの二人に何かあれば、あの国からなにをされるかわからない…」
ブランシュ「あの…私達はもう帰りますので…」
ヴォルフ「あ……その…なんだ…この大雨だし…泊まったらどうだ…?…」
焦り気味のような声で話し、二人を屋敷に泊める提案をした
ブランシュ「いいのですか?…ノーザンはどうする?」
ノーザン「この大雨だし、お言葉に甘えて泊めてもらおう」
二人はここに泊まると決めたようだ
ノワール「……泊まるのか…あの部屋が空いているから、あとで案内するよ…」
ヴォルフ「…貴様らと話す限り、本当に私達を襲う気もなさそうだしな…」
ブランシュ「ヴォルフ様とノワール様は襲いませんよ…!…確かに…昔はお二人は国から逃げた逃亡者とも言われていましたが、今いる王族達はお二人の事をそんな風に思っていません…」
ヴォルフ「逃亡者か…そういえば今の国王は誰なんだ?」
ブランシュ「国王は私の姉です、若くして女王になられて、剣術も魔法も得意な方なんです」
ヴォルフ「剣術も魔法もできる女王か…あの頃では考えられないな…それくらい変わっているのか…」
ノワール「そうか…まぁだからと言ってお前らを信用しているわけじゃないが」目を鋭くしながら
ヴォルフ「…あぁ…貴様らの事はまだ信用はしない。今日は特別に泊めるが、その後は追い出すからな」
ノーザン「…ブラン、早めに帰ろう…」ブランシュの耳元に小声で話す
ブランシュ「そうですね…早く帰らないと城のみんなにも迷惑がかかりますし…」小声
ヴォルフとノワールは立ち上がり、ヴォルフは二人にこっちについてこいとジェスチャーをした
ヴォルフ「…部屋に案内する…」
ノワール「…………」無言で二人を見つめながら
ブランシュとノーザンは立ち、二人に部屋まで案内してもらった




