ヴァルガシア国の王族③
森の中
屋敷から離れた奥深い森に、二人の獣人が野宿をしている
白い狼獣人のブランシュと灰色の狼獣人のノーザンだ
ブランシュはヴァルガシア国の女王であり、ノーザンの番
ノーザンはブランシュの側近であり番だ
ブランシュの見た目は白い髪に、ショートヘアで、美しく、黄色い目をしたメス獣人
ノーザンは灰色の髪に、短髪でオスにもメスにも見えるような、中性的で、緑色の目をしたメス獣人
焚き火を囲み、何か話をしているようだ
ブランシュ「明日、屋敷へ直接行ってみましょ」
ノーザン「あぁ…ただ、昼間の反応を見る限り怪しまれている可能性も…」
ブランシュ「あれはノーザンが怖い顔で言うからでしょ。話し合えばわかってもらえるはず」
ノーザン「この顔は生まれつきだ……不老不死と噂されているヴォルフ様とノワール様、噂は本当なのだろうか」
ブランシュ「何を今更…確かに、資料室での情報は何も得られなかったけど。紅い目に白い狼獣人、きっとヴォルフ様で違いありません…それにいつもそばにいると言われている、蒼い目をした黒い犬獣人もノワール様なんだと…」
ノーザン「そうですが、でもなんでヴァルガシア国から逃亡したんだ…不老不死の力を得てなぜ祖国から逃げたのか…」
ブランシュ「そのことは調べても分かりませんでした…ただ王宮にいた頃は不老不死ではなかったと言うのは聞いたことがあります。おそらくその後にあの魔法を使ったのでは…」
ノーザン「不老不死でもないのに逃亡をしたのか?リスクを冒してまで他国に逃げるとは…」
ブランシュ「もう二百年以上前のことですから、今のような自由もなかったのだと思います。同性での番も厳しい目で見られていたと言われていますし…」
ノーザン「異性と番になるのが普通と言われていた時代か…それに王族の身分、相当厳しい世の中だったんだろう…」
ブランシュ「えぇ…もし私が同じ境遇でしたらノーザンと逃げていたかも…それくらい厳しい世界だったんでしょう…あの事件が起きるくらいには…」
ノーザン「あの事件ですか…側近のノワール様はハーフだと聞いたことがありますし、二人にとって王宮での居場所はなかったのかもしれません…」
ブランシュ「ですね…明日、二人にお話ができたら、当時のこともあの事件の事も聞いてみましょう」
ノーザン「あぁ、不老不死の事も聞かないとだし」
ブランシュ「不老不死…私がノーザンに使った禁断の魔法……」俯き、尻尾を下げている
ノーザン「ブラン、そんな顔をするなよ…私はブランと一緒にいられて嬉しいよ、永遠に…」
ブランシュ「私は大丈夫だから…ノーザン、私も一緒にいられて嬉しいよ…ずっと一緒だよ…」
ノーザン「うん…もう遅い時間ですし、明日に備えて早めに寝よう」
ブランシュ「はい…ノーザン、おやすみなさい」
ノーザン「おやすみなさい、ブラン」
二人は身を寄せ合いながら、眠りに入った
周りには結界を張り、外からは姿が見えない状態にしてから
あの事件、おそらくヴォルフとノワールが逃亡した五年後に起きた反乱だろう
異種族の番や同性の番への偏見、差別されていたハーフ獣人
当時は異種族や同性同士の番になる婚姻が可能だったとはいえ、王族はそれが禁止されていた
当時の国王は異種族や同性同士で番になるのは反対していたと言われており、それを王族にも押し付けていたと
国民は王女と側近が逃亡した末に、命を落とした理由はそのような扱いをされていたからだと、そう噂されていた
伝統の為なら愛する獣人同士をこのように苦しめていいのかと
王族でもこのような扱いは残虐だと批判され、一国の国王がこのような差別主義者だと反乱が起きた
それでも王族は二人を探すことも、墓を作ることも供養をすることも無かった
あのような者らはたとえ死後だろうと、穢れるからだと
だが二人が逃亡して、十年後に王族は二人が生きているという情報を得た
隣国であるフォルティシス国の、それも人気のないところに住んでいると、しかも不老不死であるというのも
国王は病に侵されていた、そのため不老不死の力を手に入れるために、王族は二人を連れ戻そうとした
そして国民には二人は生きていて、しかも死ぬことのない命を持っている化け物だったと
それを証明するために王族は二人のところへ行き、傷をつけ怪我を負わせた
本当に不死身なのかと、確かめるためにノワールの首を切ろうとしたが、ヴォルフは魔法を使い、王族を攻撃した
その力は恐ろしく、国王ですら怯む力だった
王族は紅い目に加えて、その力があまりにも悍ましかったのだろうか
もう二度と二人には関わらないと誓った
これ以上関わると国が滅ぼされると、そう思ったのだろう
その後、国王は間も無くして命を落とした
これが魔法の影響なのか、それとも病なのか、誰もわかっていない
ただ最期は長く苦しみもがき、命を落としたと言われている




