ヴァルガシア国の王族②
部屋
二人は抱きしめあい、ヴォルフは俯き、震えるような声で話した
ヴォルフ「なんであの国が僕らの事を…それにあの国はもう僕とノワに関わらないと誓ったんじゃ…」
落ち着かせるために黒い手は背中をさすったが、その手も震えていた
ノワール「……ヴォル、まだ王族とは決まったわけじゃない、それに仮に王族だとしてもあの頃の王族はもういない…」
二人は恐怖に怯えている、いくら子孫とはいえあの王族には変わりない
もうあの頃から、不老不死と知られた時から、二百年以上時が経った
狼獣人の平均寿命は百二十年ほど
魔力差で寿命が伸びるにしても、せいぜい百五十年ほど
あの頃の二人の事を知っている王族はいない
おそらく子孫だろう、それでも二人のことはどう伝わっているのかわからない
国から逃げた逃亡者、あるいは反逆者と思われているのかもしれない
国の秩序を乱した復讐か、それともこの力を、不老不死の研究か、目的はわからない
二人は今後のことを話し合った、もしもの時に備えて
ヴォルフ「うん、ルナ達の話を聞くと、護衛もいない感じだったらしいが、白い狼獣人の服装が王族と同じ…おそらく本物なんだろう…」
ノワール「…身分を隠して俺らに接触するのが目的だろう、なにが目的なんだ…」
ヴォルフ「仮に子孫だとしても、ノワを狙うものは許さない…きっと僕が目的なんだろう、あの魔法を使ったのは僕だから…」
ノワール「俺も不老不死だし、油断はできない。ヴォルは絶対に守るから、相手が誰だろうと関係ない」
ヴォルフ「うん。それに多分白い狼獣人があの王族だとしたら、灰色の狼獣人はその側近の可能性も高い」
ノワール「だな、白い獣人はメスのように見えたと言っていたし、王女かあるいはそれに近い身分か…」
ヴォルフ「王女…腰に剣をかけていたと言っていたが、今は王女でも剣を持つのか…?あの頃とは変わっているのか…」
あの頃は、王女は基本的には剣術も攻撃魔法も教えられる事はなかった
どうせオスに守られるのだからと、護衛も基本的にはオスのみで、メスは守られるだけの存在だった
それに加えて魔力も弱いとみなされる事も多かった時代
今はそんな偏見は時代遅れだと、魔力が少ないのも迷信であり、いつの時代もメスは弱くなかった
性別に関係なく、どの獣人も守られるべき存在であり、誰かを守れると
力を得るのは自身や他者を守るため、そのためこの国でも性別や種族問わず、騎士や魔法騎士にもなれる
おそらくヴァルガシア国でも、あの頃とは随分変わったのだろうと
ノワール「どうだろう…でもこの国でも騎士になるメス獣人が増えてきている、二百年以上経っているんだ」
ノワール「あの国も変わってきているのだろう…まぁ…だからと言って俺らを狙うものには変わらない」
ヴォルフ「うん…昔のような厳しい風習がなくなっても、もうあの国には戻りたくない…それに不老不死の事もあるし…」
ノワール「不老不死…この事が今の王族にも知られたら、きっと連れ戻そうとするだろう…」
ヴォルフ「僕はノワのそばから離れないから、何があっても守る」
ノワール「俺もだ、ヴォルのそばから絶対に離れない…誰にも渡さない」
二人は警戒を強め、屋敷に結界を、依頼などは一時期休止しようと話した
その日はもう遅い時間のため、夕食を済ませて早めに眠りに入り、不安な気持ちを落ち着かせるため、抱きしめあった




