ヴァルガシア国の王族①
ヴォルフとノワールが営む何でも屋、狼の隠れ家では5人ほどが住み込みで働いている
うち二人は五年ほど一緒にいる馴染みの仲間だ
残りの三人は半年前に加入した獣人達だ
狐獣人のメスのレイ、ルナ、豹獣人のオスのレオ
この三人はヴォルフとノワールが不老不死という事だけは知っているが、元王族であり、元側近という事は知らない
昔からの仲間である犬獣人のメスであるルフレ、猫獣人であるオスのタビーは、二人がかつての王族で側近だった事、不老不死の事は知っている
二人の過去を知らない三人の獣人は深く聞く事もせず、不老不死である事を知っていても、普通に接してくれた
ただある日、街の住民から依頼を受けた三人は城下町に出かけた
依頼は無事にこなし、少し観光をしようと歩いていたところ、ある人物に話しかけられたようだ
『貴様らは町はずれにある、何でも屋の者か?』
灰色の狼獣人、剣士の格好をしている
その隣には王族のような、貴賓のある真っ白の狼獣人がおり、三人を見ている様子
その質問にルナは答えた
『はい、そうですけど。貴方は…?依頼の受付ですか?』
『依頼ではないが、何でも屋であるヴォルフとノワールという人物に会いたくてね』『二人のとこまで案内してくれるか?』
灰色の狼獣人はヴォルフとノワールの事を知っている様子だが、三人は警戒をしている
明らかに二人の知り合いではない事、そしてこの人物達はこの国ではない異国からやってきた者だと
服装や振る舞いから見て、おそらく王族関係だと、だが王族にしては護衛が少ない
偽物の可能性も考え、ヴォルフとノワールの事を話さないようにした
黙り込む三人、そこに白い狼獣人が口を開いた
『私達は怪しい者ではございません、ですので警戒なさらずに…あ…まだお話が…』
三人は急ぎの用事があると言って、その場から逃げるように去っていき、屋敷へと帰っていった
その場に残った謎の二人は謎めいた発言をしている
『やはり生きている様子ですね、どうしますブラン』
『直接会いに行きましょう、ノーザン』
そう話しながら、どこかへと消えていった
屋敷
三人はヴォルフとノワールに町での出来事を話した
ルナ「ヴォルフさん、さっき町で狼獣人にヴォルフさんとノワールさんの事を聞かれました」
ヴォルフ「私とノワールの事を?その獣人はどんな人だった?」
ルナ達は服装や灰色の獣人の事、ヴォルフのような白い狼獣人がいた事も話している
ノワール「ヴォルフみたいな白い狼獣人…スノータイプか?でもなんで私達の事を…」(特徴的に王族に似ているような気がする…いやまさか…)
ヴォルフ「…白い狼獣人…その獣人の服には紋章はあった?」(まさか…いや違うはず…)
二人は少し震え気味の声でルナ達に問いかけた
嫌な予感がする、この国にスノータイプの狼獣人は少ない
それでいて服装の特徴が王族に似ている
あの国のヴァルガシア国の王族に
でもきっと違うと、ただの観光客だと、物珍しさから自分に会おうとしているのだと、憶測をした
ルナ「紋章、確かつけていたような…」
レオ「隣国のヴァルガシア国の紋章に似ていました」
レイ「あと威厳があるような、ただの観光客には見えない感じでした」
その言葉に二人は固まった、嫌な予感が当たってしまったからだ
なんであの国が、なんで今更自分達を、この力が目的なのだろうか
ヴォルフは震えが止まらなかった
仲間の前なのに、尻尾を巻き、落ち着かせるために黒い手を繋いだ
ヴォルフ「なんで…あの国は…今更…っ…」
ノワール「ヴォルフ、大丈夫か…?…まだ確定したわけじゃないだろ…それで…その二人に私らの事を話したのか?」
レオ「いえ、雰囲気的に怪しそうだったので二人の事は話していません、それよりヴォルフさんは…」
レイ「ヴォルフさん大丈夫ですか…ノワールさんも様子が…」
ルナ「ヴォルフさん…こんな動揺するなんて…」
三人はヴォルフを心配している、普段冷静なヴォルフが目に見えるような焦りをしているため
またノワールも冷静に見えているようで、尻尾を巻きつけ、白い手を強く握っている
もし本当に王族だったら、連れ戻され何をされるかわからない、不老不死という力を利用されたくないと
ノワールも同じく声が震えていた
ノワール「大丈夫だ…ヴォルフも…みんなが心配しているよ…」ヴォルフを見ながら
ヴォルフ「大丈夫だよ…ちょっと…昔の事を思い出して…」
ルナ「昔の事…お二人はヴァルガシア国と関係するのですか…?無理に答えなくてもいいので…」
ヴォルフ「ヴァルガシア国…いつか君達に話さなければならないと思っていたが…」
ノワール「あの国の事…話すのか…?ヴォルフ…」
レオ「関係があるのですか…?…確かにヴォルフさんはスノータイプではありますが…」
レイ「ひとまず落ち着いてからで大丈夫ですので…」
ヴォルフ「ありがとう…でも、もう大丈夫…これから話す事はこの屋敷に暮らす獣人以外には言わないでほしい…」
ノワール「お前達には前に不老不死の事を話していたよな…改めて不老不死の事も説明しよう」
二人は自分達の過去の事を話した
ヴァルガシア国の王族である事、その当時の暮らしの事、ノワールとの出会いも、側近だった事も
そして追放されそうになり、王族の暮らしも嫌で逃亡した事
魔物に襲われノワールが瀕死になり、あの禁断の魔法を使い、不老不死になった事も言える範囲で話した
三人は驚きを隠せない様子で、信じられない顔をしている
当然だ、不老不死の事を知っていたとはいえ
王族だった事を初めて知り、自分達はそんな身分の高い獣人と今まで普通に接していた事
ヴァルガシア国で噂されている、永遠の番という噂も本当だったという事も
ただ、二人はその噂は知らないようで、困惑の顔を見せている
ヴォルフ「…そういうわけだ…その噂は知らないが、話した事は事実だ」
ノワール「永遠の番…?…そんなの御伽話だから、気にするな」
ヴォルフ「それと、この話は君達の先輩にあたるルフレもタビーも知っている」
ノワール「そんな驚く事か?不老不死の時より驚きすぎじゃないか…?」
ルナ「あ…いえ…ヴォルフさんとノワールさんがそんな凄い獣人だったとは…」
レオ「元王族でも俺達こんな普通に話してもいいのでしょうか…?」
レイ「貴族のような風格があったとは、元王族だったとは…」
ヴォルフ「私はもう王族じゃないよ、ただの一般の獣人…だから今まで通りに接していいよ」
ノワール「そうだ、私はもうヴォルフの側近ではなく番であり大切なパートナーだ…ただの獣人だよ」
二人は今まで通りに接してほしいと、自分達はもう王族じゃない事を話した
仲間にはもしその獣人が訪ねてきた際、自分達の事を話さない事、この屋敷の場所を教えない事を伝え、少しの間、依頼の事や雑用の事など世間話をした後
各自、自分達の部屋へと戻っていき、ヴォルフとノワールも自室へと戻っていった




