◇第六話 新しい家族
目が覚めたの時にはもう太陽が真上まで登っていた。だいぶ寝過ぎたけど、まぁ昨日あんなに夜更かしをすれば当然か。それと、このふかふかの毛並みが悪い。寄っかかってたこのカーバンクル〝バリス〟の毛並みは最高すぎた。
「あ”~腹減った~」
そう言いつつ身体を伸ばした。
昨日の昼から何も食ってないんだからさすがに腹は空く。いきなりこっちに飛ばされちゃったもんなぁ。
『倉庫に入っているだろ』
「いやいや、一体どんだけ年数経ってると思ってるんだよ。どうせカビでも生えてるだろ」
アグスティンはそう言うけれど、さすがに無限倉庫はなぁ……だって、じいちゃんのスキルだろ? じいちゃんが112歳で俺が16歳、俺が1歳の時に事故があったらしいから、いつ無限倉庫に入れたかは分からないが、最低でも15年経ってるって事になる。
『え? 時間止まってるだろ?』
「それでも! 気分的に!」
今ならまだ何とか空腹には耐えられる。でもいざとなったらその手段も選ばざるを得ないけど。餓死なんてしてられるか。
となると、とりあえず人のいるとこを目指さないとな。一応お金はあるから、飯も食えるし宿もある。そして何より情報収集が出来る。たとえ世界地図があっても国の情勢とか分からないしそれは必要だ。
ここから遠くの国に行くとしても、どこの国が安全なのか分からないし、ルートも考えないといけない。
でも一番困るのは……
「アイツ等、絶対俺の事探し回ってくるだろうなぁ……」
『え? 何々、何かやらかしたの? 流石アンリークの孫ね』
いや、トロワ、そのアンリークの孫ってところやめてもらえませんか。じいちゃんの武勇伝を昨日聞いちまったからな……じいちゃんと一緒にしないでくれって俺何回言ったかな……
とりあえずかくかくしかじかで今までの事を話してみた、ら……段々顔が怖くなっていくトロワ。バリスもだいぶ怒りを露わにしてなんだかオーラがメラメラとしているように見える。アグスティンは……目が、人一人殺せるんじゃ……?
……精霊って怖いんだな。
『え、何そのクズ。今すぐぶっ潰そ』
『待て、気持ちは十分に分かるが例えクズでもルイの父親だぞ』
『え、家族なら俺らがいるじゃん』
『あ、そっか。じゃあアイツいなくてもOKね!』
……えっ。
バリスとトロワの会話に、つい驚いてしまった。
「か、家族に、なってくれるの?」
『あったり前じゃん、種族は違うけど別に家族になれるだろ?』
さも当然のように、バリスは言い切った。
今まで、家族はじいちゃんだけだった。こっちに来て、血の繋がった父と再会したけど、家族とは思えなかった。他人のように感じてしまった。
でも、こいつらに家族になってくれるって言ってもらえて、何だか心がポカポカしてきて。
本当の父親と会った時には感じなかった、この気持ち。
「……うん、なりたい」
『やったぁ!』
『じゃあ俺らずっと家族な!』
どうしよう、めっちゃ嬉しい。
ただ単純に、そう思った。
『じゃあ私、お母さん?』
「え、こんなにちっちゃいのに?」
『ちょっと、失礼ね。これでも700歳よ』
まさかの、トロワが700歳。妖精って長寿なんだな……
バリスも600歳、そしてアグスティンは……
「2500……やばいな」
『我は途中で眠っていたのでな。大体そのあたりだろう』
流石ドラゴン、恐るべし。
でも、3匹はちゃんと名前で呼んでほしいらしい。だからだいぶ年の離れた姉弟という事になってしまった。だいぶ賑やかな姉弟だな。
「じゃあこれから遠くの国に、と言っても探されてるとあっては偽名にした方がいいよな……」
『え? その顔変えないの?』
言い出したバリスの言葉に、動きが止まってしまった。……顔を、変える?
変装の化粧とか、そういうやつ……?
『変身魔法、使えるだろ?』
変身魔法……ステータスにそんなのあったっけ。そう思い俺のステータスを開いて、上から下まで確認したら……あった! これか!
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STATUS
名前:奥村留衣 Lv.1
職業:
称号:勇者の孫
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HP:∞
MP:∞
筋力:∞ 攻撃力:∞
速度:∞ 防御力:∞
感覚:∞
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【無限倉庫】【鑑定】
【魔法無効化】 【絶対領域】
【剣士の心得】 【五大元素魔法】
【治癒魔法】 【複合魔法】
【武器召喚】 【古代の書】
【全反射の鏡】 【全域バリア】
【超能力】 【変身魔法】
【陰身魔法】
【精霊召喚】継続中
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【天空の女神の祝福】
【深森の魔女の祝福】
【深海の人魚の祝福】
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物理ダメージ減少率:100%
魔法ダメージ減少率:100%
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つい昨日スキルの使い方は〝精霊召喚〟の時に何となく分かったからいけると思う。
どんな顔に変身させるかは……まぁ頭で想像すればいけるか? やってみないと分からないけど。でも、この下の部分が気になる。
「精霊召喚継続中になってるんだけど、他の魔法って使っていいのか?」
『どーせMPたんまりあるんだからいけるだろ。あ、それより変身するなら人間やめたら?』
「……は?」
人間を、やめる……
俺、人間やめなきゃいけないのか?
『おい、バリス。言い方が悪いぞ。他の種族に変身すると言え』
あ、なるほど。そういう事か。
ビビらせんなよ、全く。
「なるほど。じゃあ人間の他に何がいるんだ?」
『エルフ、獣人、人魚、ドワーフよ。でもエルフと人魚はお勧めしないわ』
「え? なんで?」
人魚はきっと海にいないといけないんだろうけど、どうしてエルフはダメなんだ? エルフなんてカッコよくない?
『どっちも保身的で他種族と仲があまりよくないの。まぁ変わり者はいるけどね。ドワーフは武具作りのベテランの酒飲みだからルイには獣人をお勧めするわ』
ふぅん、こっちも色々あるんだな。まぁ当たり前か。じゃあトロワのおすすめの獣人でいこう。
3匹から特徴を聞いて、それから顔は……俺の知ってる俳優をちょっと似せてみる? 似せるだけならいいよな。よし、なら……
「【変身魔法】」
その言葉で、身体中が光に包まれた。眩しくて目をつぶったが、あの精霊召喚の時と同じような感覚が身体の中に感じる。
そして、感覚が落ち着き光も収まっていた。頭に違和感があるな。触ってみると……あった。想像していたものが。
近くにあった川に顔を映してみると……
「ちょっとやりすぎた……?」
『え? 私は好みよ?』
ついこの前見たドラマの俳優に似せようと思ったんだが、少し似すぎたか。猫耳を追加して金髪を黒髪にしてみたけれど……これはアウトか?
「ちょっとイケメンすぎないか?」
『顔が整ってる分には損はしないでしょ!』
……何か、違和感はするけど、でも今更やり直すっていうのもなぁ。まぁイケメンだしいっか。トロワも言った通りイケメンは得するって言うし。ちょっとズルって思うけどこれは捕まらないためにやったんだし。これくらいいいよな!
そして、右腕を見てみると……やっぱダメだったか。勇者の証らしい右手の刺青は残ってしまった。これは消せなかったか。でも包帯あるし、いっか。
顔も変えた事だし、あとは……
「名前は……ルアン!」
じいちゃんの本名はアンリーク。だからちょっとお借りしよう。我ながらネーミングセンスはいい気がする。
『いい名前じゃない! ネーミングセンスってやつ?』
『じゃあこれからルアンって呼ぶな!』
「うん、それでよろしく」
よし、これでしばらくは見つからないだろ。精霊達に太鼓判を押してもらったからな。それなら安心して違う国に行ける。
とはいえ、行き先は全く決めていない。この異世界自体が初めてだから、世界地図を見たところでどう選べばいいのか全く分からない。
「なぁ、なんか安全でおすすめな国ってないか?」
『ん~、あそことか? えぇ~っと、あの〝アラクネー〟が住み着いてたあの国』
『あぁ、あったな。何と言っただろうか……』
あれやこれやと国の名前を出すけど、世界地図を見ても書かれていない国ばかり。おいおい、その国ってもう世界地図から消えてる国だったりしないか? お前達は一体何年前の話をしてるんだ?
こりゃ無理だな。聞かない方がよかったか。
「なぁ、アグスティン。お願いしてもいいか」
『なんだ』
「また、背に乗せてくんない?」
『聞かずともよいぞ、兄弟よ』
よっしゃ。移動手段ゲット。となれば、国一つ飛び越えてもいいって事になる。目立っちゃうけど、陰身魔法スキルを使えば見えない。
結局は、ど~れ~に~し~よ~う~か~な! で決める事になった。こいつらの話は全く役に立たなかったから、それしか決める手段がなかった。
「じゃあよろしく!」
『あい分かった』
助走をつけてアグスティンの背目がけて勢いよくジャンプをし、飛び乗った。ちょっと飛び過ぎたようで、着地が上手く出来ず尻が痛かったけど。俺のステータス値がおかしなことになってるから、これから加減というものを覚えていかなきゃいけないな。
まぁ当然尻もち一つついただけではステータスのHPは全く減らないけどな。それよりも……
「え、二人とも小さくなれんの!?」
身体を小さくして同じくアグスティンの背に乗ってきたトロワとバリス。そういうのはお手のものらしい。じゃあアグスティンも出来るのかな。
町とかに入った時に召喚魔法を解除しないといけないかなって思ってたけど、これなら一人ぼっちにならないな。ちょっと心細かったけどこれなら安心だ。
よし、これから始まる異世界ライフ。ちょっと楽しくなってきたかも。




