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◇第五話 かつての友人たち


 帝都の皇城から逃げてきた俺はただいまドラゴンの背に乗って空を飛んでいる。そう、ドラゴン!!


 正確には黒炎龍だけど。黒炎龍アグスティンだっけ、めっちゃカッコイイ名前じゃん。さすが異世界。


 とはいえ今更ながらに、何故あの場でドラゴンを精霊召喚で召喚しちまったのかよく分からん。そうしろって言われたような、そんな感覚がした。グレートウルフ相手にハンマーを振ったあの時の感覚と同じだ。



「おーい、ちょっと降りてくれないか」



 ギロッ、と背に乗る俺に視線を向けたドラゴンに恐縮してしまった、滅茶苦茶怖いんですけど。というか、こんなに風の中、しかもバリアの中にいる俺の声がちゃんと聞こえたのかも心配になるが。


 でもちゃんと聞こえたらしい、すぐに降りてくれた。空にこんなどデカいドラゴン飛んでたらビビるしな。騒ぎは起こしたくない。


 ドラゴンは、帝都を抜けて俺がいた森の近くにある草原に降りてくれた。よっこいしょ、と滑り落ちるかのように慎重に降りた。でかい図体だから地面に降りるのはやっとだな。


 さて、これからどうしたものか。そう考えていたら、隣のドラゴンが顔を近づけてきた。え、ちょっと待って、俺食う気!? 俺美味くないけど!? 腹壊すかんな!?


 と思ったら、スンスンと鼻を動かしていた。え、俺の匂い嗅いでんの? 俺今汗臭いぞ? いきなりドラゴンに乗って空を飛んだんだから汗かくに決まってんだろ。



『アンリークの匂いがする』



 すると、声が聞こえてきた。匂いがする、という事は……俺の匂いを嗅いでいる、このドラゴンか。それに、ここには俺とドラゴンしかいないしな。


 ……ドラゴン、喋るんだ。驚きなんだが。


 それより、ドラゴン今アンリークって言ったか? 確か、あのクソ皇帝が言ってたな。じいちゃんの名前、だったか。



「じいちゃんの事知ってんの?」


『じいちゃん? お主は孫か。成程、そういう事か』



 いや、勝手に納得しないでもらえますか。俺全然理解出来てないんだけど。



『我は、アンリークに精霊契約をした者だ。そうか、お前はあの時のガキか』


「は?」



 おい、今こいつ俺の事ガキっつったか? いや、俺ドラゴンに喧嘩売る気はないから我慢だ我慢。あの時のガキって事は、俺は赤ん坊の時このドラゴンと会った事ある、という事になる。


 そもそも、あの皇帝の口ぶりからして俺の故郷はこっち。じいちゃんもこっちで勇者をして、この国の皇女だったばあちゃんと結婚した。なら、その話は不思議じゃない。


 ……そうか、精霊契約か。



「何で俺がアンタを召喚出来たんだ?」


『……その右手、見せてみろ』



 あぁ、右手の刺青か。包帯で隠してたけど、これもやっぱり関係してたって事か。



『あぁ、そういう事か。懐かしいな、その刻印は。お主は全て、アンリークの能力を受け継いだという事か』



 なるほど、アンリーク、じいちゃんの能力を……それなら、えげつないステータスも、あの無限倉庫にも納得がいく。そもそも、あの『ガキから貰った花』が入っていたんだからそうなるよな。


 それに、そもそもじいちゃんのもんだろうなとすでに気付いていたしな。



『アンリークは……女神の元へ還ったのだな』



 女神の元へ還った……というのは、亡くなって魂が還った、って事になるのか。異世界と地球の常識や考え方が違うけれど、恐らくそうだと思う。



「数日前、112歳で亡くなったよ」


『人間とは短命だな』



 人間で言えば長生きの方なんだけど、ドラゴンからしたら短命なのか。でも、涙は流さずとも寂しそうな目をしてる。そっか、このドラゴンもじいちゃんと長い付き合いだったのか。


 地球では、じいちゃんの死を悲しんでくれたやつは俺とか近所の人達くらいだった。じいちゃんの友人らしき人は俺の知る限りいなかったしな。


 だから、嬉しくなる。



『我は黒炎龍アグスティン、お主の名を申せ』



 名を申せ……ここは異世界だし相手はドラゴン。なら、皇帝が言っていた俺の本当の名を言うべきなんだろうけれど、長すぎて思い出せん。それに何よりあの名前で自己紹介をするのはなんだか気が乗らないな。



「……ルイ・オクムラだよ」


『そうか、ルイか。アンリークはあんな性格だったが、子育ては上手かったようだな。心配して損した気分だ』



 まぁ、言いたい事は分かる気がする。じいちゃんの事をよく知ってるのであればそう思うわな。


 面倒くさがりで意地っ張りな性格のじいちゃんが一人で子育てなんて、そりゃ心配になるか。



「それはさ、俺がまともな人間だって思ってもいいって事?」


『開口一番に悪態をつかなかったんだ、まともな人間の部類だろう』



 まともな人間……それだけでまともな人間だって決めていいのか?


 どうなんだろう、そう思っていたらいきなり出現した……魔法陣が。ちょっと待てどういう事だと思った時には遅かった。青色に光る大きな魔法陣がいきなり出てきて……えぇぇぇぇ!?



『アンリーク~~~~!!』


『リークおかえりっっ!!』


「ふぐっ!?」



 いきなりのしかかってきたのは……え、何こいつら、動物……!?


 勢いに負けて立っていた俺は後ろに尻もちをついた。だが、体当たりをしてきた動物達は奈央も上に乗っかってくる。一体誰だこいつらは!! 重いからどけっ!!



『おい、ルイが潰れるぞ』


『何だよ、最初に呼んでもらえたからって偉そうに』


『あら? 静かね』



 ちょっと待て、しゃべるより早く俺の上から降りてくれ。このままじゃ本当に潰れる……と思っていたらやっと降りてくれた。


 こいつらは……結構耳がデカい、ネコ? 巨大ネコだな。俺と同じくらいの身長だけど。あと……妖精? 水色だ。妖精は子供サイズ。



『え、アンリーク若返った?』


『違う、孫だ』


『孫ぉ? あ、でも悪態付かないわね』


『あ! あの赤ん坊! こんなに大きくなったんだぁ!』


『似てるわね、匂いも一緒』


『だろう』



 くんくん匂いを嗅がれる。だから、俺はいま汗臭いから臭いって。


 口ぶりからして、こいつらもじいちゃんの事知ってるのか。ドラゴン同様しゃべってる言葉が普通に分かる。こいつらもアグスティン同様精霊? 精霊契約してるやつら?



『私は水の妖精ウンディーネのトロワ、こっちの奴らと一緒にアンリークと精霊契約した精霊よ』



 わぁお、妖精出た。さすが異世界。ウンディーネってファンタジーで聞いた事ある。ドラゴンにも会っちゃったけど、今度は妖精か。



『僕、カーバンクルのバリス!』



 へぇ、カーバンクルか。これもファンタジーで見た事あるな。俺が知ってるのと大体一緒だ。俺の身長と同じくらい大きくて、耳がデカくて額に赤い宝石があるリスみたいなやつ。白い毛並みだけど、ふわふわしてそう。触っていいか聞きたいところだな。


 でも強いのかな。じいちゃんが精霊契約したんだろ? いや、成り行きというパターンもあるな。ああ見えてお人好しなところもあるからな。



「俺はルイ・オクムラな。よろしく」


『ルイね! いい名前!』



 ルイ、はそんなにいい名前なのか? 名付け親は知らないけれど。



「なぁ、アンタらじいちゃんと契約してたんだろ? 俺、召喚しない方がいい?」


『えぇ~~~!! やだやだやだ!!』


『そんな寂しい事言わないでよ~!!』


『遠慮せず呼べ』



 あ、よさそうですね。あざす。もし魔獣に襲われても一応ハンマーの使い方はよく分かったから応戦出来るけど……ピンチになったら助けてもらおう。


 何だろう、こっちに一人で来たから、仲間が出来たみたいで結構嬉しいな。それに何より、家族のじいちゃんの事を知ってくれている、友人だからってところもある。



「なぁ、じいちゃんの事教えてくれよ」


『もういくらでもっ!!』


『あ、魔王倒した時のこと教えてやろうか!』



 なんか、凄い武勇伝を聞けそうな予感がする。



 もう日が沈みそうな時間だったから、夜中じいちゃんの話で盛り上がった。


 じいちゃんが死んだ事を聞いて、精霊達は悲しんでくれた。それも嬉しかった。


 だからかな、俺がじいちゃんと生活していた時の事もだいぶ話しては盛り上がった。



『あはは、きっとリークがここにいたらふざけんなって鉄拳喰らわされてたな』


『違いないな』


「あはっ、昔からじいちゃんのげんこつは結構痛かったなぁ~」



 それは今でも覚えてる。だいぶ叱られたからなぁ。でもそれは優しさだって事は今思えば十分に理解出来る。



『ルイの頭が無事でよかったよ~』


『バリス、それは冗談にならぬぞ』



 そう言えばこっちに来てメシ食ってなかったな、なんてことは忘れるくらい盛り上がった。


 小さい頃は、じいちゃんなんて嫌いだ! とか、何でおれに親がいないんだよ! うちは貧乏だし、親がいないからと周りに避けられたり、気を遣われたりした。だから、じいちゃんを何度も困らせた。


 俺が両親の事、ばあちゃんの事、じいちゃんの事を聞いてもじいちゃんは何も教えてくれない。


 けれど、じいちゃんの事をよく知ってる友人達から、じいちゃんの昔の話を聞けて、しみじみ思う。


 俺、じいちゃんの孫でよかった。


 ありがとう、じいちゃん。


 はは、やっぱり、もうちょっとじいちゃんに感謝の言葉を言えばよかったな。今更だし、きっと拳骨をもらうかもしれないけど……口で伝えなきゃいけない事だって、たくさんあるよな。


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