◇第二十九話 強行突破がお約束みたいになってないか?
地下に降りると広い空間があり、向こう側の壁は頑丈で大きな扉となっている。近づいてよく見てみると……硬い金属のようなものに見えるな。よくある、銀行の頑丈な金庫みたいな……
思っていた通り、そのドアには大きな魔法陣が一つ描いてあり、その周りに少し重ねていくつも小さい魔法陣が描かれている。
ここまで頑丈にしてる、って事は中を見られたくないもの。耳を澄ませてみると……聞こえない。防音でもしてるのか? いや、子供達は違う場所にいるかもしれない。
『さっきのと同じ匂いする!』
「この紋様、玄関のと同じようなやつだな。これどうやって開けるんだ?」
ここも、強行突破で神聖ハンマー? でも中がどうなってるか分からないから壊す可能性がある。木工ハンマーでいくか?
なんて悩んでいたら、いきなりこんな表示が出た。
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【深森の魔女の祝福】自動発動
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感じた。背後から何か来ていたことに、気が付いた。
だから、手に握っていた木工ハンマーをそれめがけて振った。
何かに当たった感覚と、それから大きな音と共に建物が揺れた。よく見てみると、俺のいる反対側の壁に、何かがめり込んでいるように見える。やっぱり、何か背後に迫ってきてたんだ。いきなりだったから、悪魔か?
そんなことを考えているすきに、さっき空いた穴から何かが入ってきた。
めり込んでいた壁からふらふらと降りた人物は……目からして悪魔だ。尻尾もあるし、何より両手の指先には鋭そうな長い爪が生えている。明らかに悪魔っぽいな。
と、思っていた瞬間。こちらに一瞬で飛んできた。
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【深森の魔女の祝福】自動発動
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木工ハンマーで構えたが、その手前で止まる。何かのバリアで突き刺そうとしていた鋭い爪を止めていた。
なるほど、さっきはこの悪魔が俺に飛び掛かろうとしていて、それをこの【深森の魔女の祝福】っていうバリアが止めた。それに気が付き俺がハンマーでふっ飛ばした。危ないな、これがなかったら俺その爪に刺されてた。
「ほぉ、俺の攻撃を止めるか」
「悪魔か」
「お前は獣人か。獣人はいらねぇな」
「は?」
「という事でお前はいらない。ここの場所がバレちまったから……」
今度は口を大きく俺の方に向けて開け、その中から何やら青白い光が見える。
「死ね」
「【全反射の鏡】!!」
口から俺に向かって放たれた青白い光。けど、俺のスキルが間に合いその光は奴のほうに跳ね返った。
うめき声を出しながら後退していき、逃がさないようそいつを追いかけ……
「ハァッ!!」
「ヴッッ!?」
頭めがけて木工ハンマーを振り落とした。メキッと音を立ててから、今度は床が割れ顔面がめり込んだ。また攻撃が来るか、とも思ったが……動かない。気を失ったか。
さて、どうするか。まぁ死ねって言われたから、倒すか? 俺死にたくないしな。
そう思いつつ、神器を召喚した。
死にたくはない、けれど……あまりやりたくないところもある。相手は悪魔、しかも俺を殺しにかかってきている。でも、平和な日本にいた俺にとっては人を殺すも同然だ。
『どうするんだ? 食うか?』
「お前腹減ったのか?」
『美味しくなさそう』
「いや、腹壊すからやめろ」
後でバリスにはコロッケもどきを用意しよう。結構頑張ってくれたし。
けれど、その時だった。
「ッ……グゥゥゥ!!」
『あ』
いきなりめり込んだ頭が上がり、鋭い爪が俺の心臓目がけて突き刺そうとしていた。咄嗟に俺はそれを避け、手元にあった神器を、悪魔の心臓に刺してしまった。
当然苦しみだす悪魔がその場に倒れる。やっぱりいい気はしないな……
「マオ、ウ……サマ、ァ……」
うげぇ、またお前も魔王様って言うのかよ。気色悪いな、おい。
子供達の居場所を聞いておいた方が良かったんだろうけれど……もし見つからなかったらトロワが相手してる奴らに聞けばいっか。
とりあえず俺は……この扉を開けるか。この頑丈で、確か古代魔法が施されてるんじゃなかったっけ。けれど、この中がどうなっているのか分からないから慎重にいかないといけない事は分かってる。
「これ、木工ハンマーでいけるか?」
『いけるんじゃないか?』
……ちょん、くらいで一回試してみよう。じいちゃんのチートステータスは侮れないからな。
こんなもんか、と扉を叩いた。叩いた、というよりは触った、って感じか。
けれど、あり得ない音がこの部屋に響いた。
メキッ……
「……」
『……』
侮れねぇな、チートステータス。メキッてへこんだぞ。だいぶ。じゃあこれ何回も繰り返せば……
「出来た!!」
鍵とか取っ手はなかったけど、蝶番とかが取れて扉だけが中に倒れた。だいぶ歪んだ扉が。
いや、ひとまず中を確認だ。そっちは後だ。
何だかここ甘ったるい匂いするな、と思いつつも光の玉を部屋の中に入れると……
「いたっ!!」
子供達が何人も倒れていた。何も家具もない部屋らしい。部屋の中にそのまま転がされている。入っていくと……1、2、3……全部で19人? 5人のはずなんだけど……
子供達は気を失っているみたいで、身体を揺すっても起きない。そのまま部屋から出した方がいいのか。
その時だった。
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【魔法無効化】自動発動中
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目の前にシステムウィンドウが出現した。
また、魔法無効化? ここの建物、いや、森全体がそうなのか? なら、一体どんな魔法なんだ?
けれど、一番気になったものが部屋の中心にあった。
「なんだこれ」
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名前:ベラスティン水晶
種類:魔法道具
ランク:S
魔力を吸収・蓄積することが出来る。
現在 52,339/100,000
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バレーボールくらいの大きさの水晶が置いてある。鑑定してみると、魔力の吸収して溜めるものらしい。しかも5つも転がってる。あいつら、もしかして子供達から魔力を集めていたのか。
確か、人間は他の種族より魔力の量が多いからだろうな。だからさっき悪魔は俺が獣人だからいらないって言ったんだ。
俺にこの魔力無効化のシステムウィンドウが出たのは、俺も魔力を吸われそうになっていたから。まぁ、魔力∞なもんですからたとえ吸われたところで困らないんだけどさ。
「これ、どうしたらいい?」
『壊す?』
「お前の頭にはそれしかないのか?」
とはいえ、俺もそれには賛成したいところではある。こんなに小さな子供達から奪った魔力なんて他の奴らに絶対使わせたくないし。でも、どうしてこんなものが必要だったんだ?
まぁそこらへんは分からないけどさ。とりあえずこれ、どうするか。壊してもいいんだよな。貯蓄された魔力があふれ出るとか、そういうのあるのか?
まぁ……何とかなるか。そう思い、神聖ハンマーを振り上げ、一気にカチ割った。
子供達は閉じ込められていた部屋から隣の部屋に寝かせ、そして一階に戻った。
「トロワ~!」
『あ~ルアン~!』
「……」
一階で戦っていた、いや、遊んでいたトロワ。その周りは……色々と悲惨な状態だった。
なんか、敵ではあったんだけど可哀そうになってしまった。けど、あれ? そいつら生きてる?
「トロワ」
『なんか死んじゃった』
いや、そうじゃなくて。でも悪魔って消えるんじゃないのか? 神器で刺した悪魔は灰になって消えていった。またいきなり攻撃されるのでは、と身構えていたけれど……何もしないうちに、パラパラと灰になって消えていった。
死んじゃった、って言ってたけれど……もしかして、自決した? 神器じゃないと死なないんじゃなくて? 話聞きだそうと思ってたけどこれならしょうがないな。
さて、まずは地下室に寝ている19人の子供達、どうすっかな。俺運べねぇぞ。




