◇第二十八話 頼もしいお姉ちゃん
孤児院で見つけた、魔素の痕跡。それは道となって続いている。これを辿ればこの痕跡を残した奴に辿り着く。そう考え俺達は進むことになった。
まさか悪魔に誘拐されていただなんて思わなかったな。でも、一日一人のペースで、全部で5人。結構慎重なやつだな。
「ここで途切れてるな」
『あそこ?』
「え?」
『そんな匂いする』
バリスは鼻が利くらしい。バリスが指をさす先には、森がある。うん、なんかありそうだな。
オカマみたいな悪魔がこの先に待っている事は分かってる。一応匂いは消しているけれど、もし俺がアンリークの家族だとバレてしまったらと思うと、ちょっと怖いな。
でも、それよりも誘拐された子供達の方が不安で怖い思いをしているのかもしれない。なら、早く行ってやらなきゃな。まずは生存確認だ。
悪魔を殺せる神器も準備済み。襲い掛かってきたらとりあえず木工ハンマーで、往生際が悪かったら神器をぶっ刺そう。
気合い十分で森に足を踏み入れた。
「えっ……」
森に入った瞬間、一気に辺りが暗くなった。まだ昼間で明るいはずなのに。森に入れば暗くなるとは思っていたけれど、思っていた以上に真っ暗になった。
これじゃあまり見えないな。明かりにするために光魔法を使ってみたら、小さな光の玉を出現させ俺達の上から光を照らすことが出来た。ランプの光程度ではあるけれど、これなら歩けるな。
少し歩くと、肩に乗っていたバリスがくんくん鼻を動かし、こっち! と指をさした。そして、俺達はその通りに進んだ。
『乗るか?』
「だーめ、慎重に行こう」
『え~』
おいバリス、緊張感ってものを知らないのか。まぁ強いからそんなものは不必要だってのも分かるけど。確か、最上位精霊だったか。エルフお姉さんびっくりしてたもんな……
その時だった。バリスが何かに気が付いた。
『なんか音が聞こえてこなかった?』
「え……」
……音? そう思いつつ耳を澄ませてみれば……
カサカサ……
そんな音が、聞こえてきた。
「……」
サササ……
「……」
ヒュ~~~……
「……【武器召喚】――木工ハンマー」
つい、無意識に無限倉庫から取り出し握りしめた。
『え、何ビビってんの?』
「いやいやいやビビッてねぇし」
『本当か~?』
「お前らだって怖いんじゃね~の?」
『怖くな~いもんっ!』
……いやいやいや、こんな真っ暗な森の中ならそりゃビビるに決まってる。こんなの肝試しより怖いわ。墓地とかを夜歩かされるほうが余程マシだよ。こっちには魔獣ってもんがいるんだかんな!
お前らはもう何百年も何千年も生きてるんだから平気かもしれないけど、俺はたったの16年なんだからな? お前らより全然経験のないただの小僧なんだからな? そこんところよろしく頼むぞ?
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【魔法無効化】自動発動中
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その時だった。
空気を読まないシステムウィンドウがいきなり俺の目の前に出現した。
「ひえっ!?」
おいおいおいおいいきなり出るなこの野郎っ!! やめろ!! ビビるから!! マジでビビるから!!!!
おい、お前らその目は何だ、ビビりって言いたいのか? 笑いたいなら笑えよこら、俺は別に気にしないし? ただビックリしただけだし? ビビりなわけじゃないし?
「……ん?」
ちょっと待て、何だこの表示。魔法無効化? 魔法なんてかかってたのか? 普通に森の中を歩いてただけなのだが。
「森の中に魔法でもかかってたのか?」
『さぁ?』
『魔法なんてあったか?』
じゃあこの表示は何なんだよ。バグったか? それとも、精霊達には気付かないものだったり……?
すると、建物が見えてきた。暗いからよく見えないけれど、山小屋みたいな、木で作られたログハウスのように見える。でも、中は電気が付いていない。留守か?
『我を解除しろ』
「あ、やっぱり?」
『あぁ、あの中だ』
まじかよ、あっさり見つかったな。とりあえずアグスティンを召喚解除しよう。
さてと、じゃあこのログハウスの中に侵入しなくてはならないわけだが……どうやって開けるんだ? ドアはあっても取っ手がないぞ。
『壊す?』
「おい、中に子供たちいたらどうするんだよ。生き埋めだぞ」
『これ、何かしら? なんか見たことある紋様だけど……何だったかしら?』
ドアには、複雑なデザインの魔法陣がいくつも少し重なっていくつも描かれている。一体どんな魔法陣なんだろうか。これ、触ってもいいやつか? となれば、壁を壊すべき?
「見覚えあるのか」
『ん〜、分かんない。でも鍵閉まってるんだったら力業の一択でしょ!』
……なるほど、それはじいちゃんの荒業だな。でも、それはじいちゃんの時の話で俺は孫なわけで……とは思ったが、そういえば無限倉庫にいろいろ入ってたな。あれなら壊せそうだ。
でも、この大きなドアに描かれた魔法陣のような絵が気になる。壊したら呪いがかかるとか祟られるとかないよな。まぁ魔法無効化が自動発動するから大丈夫かもしれないけどさ。
まぁ、とりあえず……
「これ、堅そうだな。とりあえず……【武器召喚】――神聖ハンマー」
ここまで必要か? とも思ったけどこれは魔獣に効果的な武器。だからこういう壁とかにはもってこいなわけではない。まぁこのドアがどこまでの強度なのか分からないけど、なんか堅そうだしな。
このまままっすぐに叩くのもいいけど、もし案外あっさりってなるとこのドアが向こうの壁まで飛んでいってしまうから、じゃあ上部分を狙うか。ドミノみたいに倒す感じで。
「よし、んじゃ張り切っていこーかー!」
『いっちゃえー!』
『いけー!』
「よっしゃ、んじゃせーのっ開けー……ごまっ!!」
そんなふざけた掛け声で思いっきりハンマーを振った。これでいけるか? と思ったけど……
ドォォォォォォォォォォォォォォォン……
そんな音が森に響いた。自分が立っていたところが揺れ、そして床が地割れしていた事にも気が付いた。
……やりすぎたか。
うん、やりすぎたな。耳を澄ませると足音が聞こえてくる。ログハウスの中に光の玉をいくつも入れて照らし、中を覗けば結構広いな空間が見える。普通のログハウス仕様な家具が並んでいるな。
その時だった。いきなり、この部屋に明かりが付いた。中が良く見えて、そして奥に複数の人物達が出てくる。なるほど、地下階段か。
「獣人……!」
「なっ、古代魔法で何重にも組み込まれたドアを破壊しただと……!?」
「何者だっ!!」
……古代魔法、というところにツッコミを入れたいけれど仕方ない、じいちゃんだし。
気が付けばどんどん下から出てくる。あのオカマのような目をした、黒のローブを着た者達ばかり。子供達は部屋中を見渡してもいない。なら、地下にいるか。
とりあえず……【武器召喚】――木工ハンマー。
さすがにこの神聖ハンマーを振り回したらここ壊すからな。もし地下に子供達がいたら生き埋めになる。気を付けよう。
そう思っていると、一人の悪魔によってここを煙幕で充満されてしまっていた。
この匂いは覚えてる。あのオカマにやられたなそれ。でも効かないし意味ないか。
バリスとトロワにもそれは効かないらしい、ピンピンしてるな。
「〝aeternitas fine〟!」
煙幕の中、3人が集まって手のひらをこっちに向けてきた。そして、禍々しい黒い球が出現し、俺目がけて発射していた。
その黒い球絶対に触っちゃいけないやつだろ。ならどうする? ハンマーで撃ち返す? それ出来るのか?
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【無限倉庫】【鑑定】
【魔法無効化】 【絶対領域】
【剣士の心得】 【五大元素魔法】
【治癒魔法】 【武器召喚】
【古代の書】 【全反射の鏡】
【全域バリア】 【超能力】
【陰身魔法】
【精霊召喚】継続中
【変身魔法】継続中
【複合魔法】継続中
風魔法×防御魔法×空間魔法(防音)
水魔法×風魔法(消臭)
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システムウィンドウを開けばよさそうなスキルを一つ見つけた。そうこうしている内に魔法が俺に当たる。もう何でもいいからあの魔法を防いでくれ!!
「【全反射の鏡】!!」
そう唱えるといきなり俺の目の前に出てきた謎の物体。鏡だ。縦に50cmくらいの縦長の丸い鏡は、奴らのほうに向けて浮かんでる。
こっちに向かって放たれている球を引き寄せ、そして鏡にぶつかった途端に跳ね返し奴らのほうに返っていった。
「グッ!?」
「ウアッ!!」
そして、術者達に跳ね返り爆発した。触らなくてよかった……こんなのあるなら最初から使えばよかった。使用回数とかクールタイムとかあるのか? と思ったがなさそうだ。最強じゃん!
『私やる?』
「何する気?」
『ここ水浸しにする』
この部屋には、向こうに地下へ続く階段があるように見える。多分あそこに進めばいいと思うんだけど、やりすぎないほうがいいよな。と言っても悪魔は神器じゃないと殺せないって言ってたっけ。
「遊んでやれ」
『は~い!』
「神器は? これ正当防衛だろ」
『私貰っちゃったらルアン使えないでしょ? 私は遊ぶだけだからだいじょーぶ!』
「ありがと、じゃあよろしく」
結構頼もしいなお姉ちゃんよ。ありがと、怪我すんなよ。
『さ、あーそぼっ!』
いきなり大きな津波を出現させたトロワは、悪魔全員を巻き込んだ。そして、ここから地下への階段までの道を開く。俺は迷うことなく肩に乗るバリスと共にその道を走った。そしてすぐに地下へと降りる。
トロワ一人で大丈夫かな、と一瞬思ったが悪魔達の悲鳴やら叫びやらが聞こえてきて俺は聞かなかったことにした。トロワは最上位精霊だしな。心配はいらないか。
地下階段を降りると、上と同じくらい広い空間に辿り着く。石造りで少し気温が低いから寒いな。
『あっち! 変な匂いする!』
「変な?」
『魔力いっぱい!』
バリスの指差す先にはこの部屋の壁。いや、違う。大きな扉だ。
悪魔は魔素だから、魔力ってことはそこに子供達がいる可能性があるって事になるな。早くここを開けないと……
そう、思っていた時だった。




