◇第二十一話 魔法道具だなんて恐ろしいもんばっかじゃないのか?
次の日。
じゃあまたね、とエルフのお姉さんは宿を出た。これから依頼のパラウェス帝国に向かうらしい。
さっき、エルフのお姉さんに俺の匂い消しの事を聞いたら、完全に消すのは難しいようだった。悪魔相手だから完全に消したいところだが、それはSS級の調剤師に頼まなければ無理だという事だ。
となれば、次の手段は魔道具か。
「じゃあ、また縁があることを願って。命の恩人なんだから、次はご飯でも奢らせて」
最後にエルフお姉さんにそんな事を言われたら、いろいろと期待しそうになるが。俺も一応男だしな。
さて、俺もすぐこの町から出ないといけないんだが……
「ログソン王国は今内乱が起きてるんだっけ。となると……」
まぁ色々と候補はある。でも、まだよく情勢を知らない俺では選び難い。じゃあ、誰かに聞いてみるのが一番か。そう思い宿を出た。
仲良くしてくれていた三人のハンター達はギルドにいると言っていたけれど……俺、この前ギルドで騒ぎ起こしたんだよなぁ。行きたくはないけれど……どうせ町から移動する身だ。それに背に腹は代えられないな。
そう思いつつ町を歩いていると、意外と早く会うことが出来た。ギルドに行かずに済んでよかった。
「お~ルアンじゃねぇか!」
ハンターギルドB級のドイール達が、俺を見つけて声をかけてくれた。彼らはギルドに所属するハンター、もしかしたらいろいろな国に行ったこともあるかもしれないし、何かしら情報を持ってるかもしれない。
ログソン王国の内乱を教えてもらったのも彼らだしな。
「ぇえ!? この町出るのか!?」
「あぁ、ちょっと居づらくなってな。だから、どこかいい国があったら教えてほしいんだ」
居づらくなった。きっと彼らは察してくれたことだろう。まぁ目撃者でもあるからな。ギルドでのあの騒ぎを見たんだから。まぁあれくらいではと思ったかもしれないけれど、俺に事情があると思ってくれるかもしれない。
「マジかぁ、寂しくなるなぁ。せっかく知り合えたっつうのに早くないか? まぁ事情があるのならしょうがねぇけどさ」
「ごめん。でもまた会うかもしれないからその時はよろしくな」
「俺らはギルドの依頼でここら周辺を回るのが基本だが、国を出たりもするんだ。もしかしたらそこで会うこともあるかもな。そん時は飯でもおごってくれよ!」
「あ、はは、うん」
ばんっ、と背中をたたかれた。うん、HPは減ってないけど痛いな。
「そうだな、まぁ色々あるっちゃあるが……じゃあサイシス王国はどうだ!」
「あぁ、あそこの飯は本当に美味かった!! もういくらでも食えちまうほどにな!」
サイシス王国か……一応ここから国を一つ越えた国だから候補に入れておいたが、飯が美味いのか。そこは大事だな。
「あそこの国は海に面してるからな。こことは違って魚とかの海産物が食えるんだよ。それに、あっちは人間の国だから獣人の俺達が行っても普通に歓迎してくれる。治安もまぁまぁいいぞ。だから、俺としてはそこがおすすめだな」
「人間の国?」
「あそこの王族は人間だ。人間って言ったら魔法のスペシャリストだろ。そのおかげであそこは魔法道具が盛んでな。色々と面白いもんがたくさんあるぞ~!」
「入った瞬間の驚きと言ったらなぁ! ルアンは田舎もんだから見た瞬間マジでビビるぞ!」
おいそれどういうことだよ、何が言いたいんだよ。
でも、魔法道具かぁ。魔法道具はじいちゃんの無限倉庫にいろいろ入ってるんだけど……まぁ、危ないものばかりだから使ったことないんだよな。
けれど、今俺は必要な魔法道具がある。もしかしたら、手に入れることが出来るかもしれない。
「まぁ国一つ越えなきゃいけないってところが難点か。しかもその国はドワーフの国だしな」
「え?」
「知らねぇのか? ドワーフと俺ら獣人は仲悪いんだぜ?」
へぇ、ドワーフと仲が悪いんか。確かドワーフは酒が好きらしいけど、獣人だって比較的酒が好きな奴いるよな。こいつらだってそうらしいし。
それでも、中が悪いのか。
「ドワーフは鍛治職人ばかりだ。しかもドワーフは他よりもプライドが高すぎる。でも俺ら獣人は力が強すぎて時々壊しちまう時があるから、毛嫌いしてるんだ。特に職人がな」
あぁ、なるほど。確かに、この前ギルドに行ったけど、ここの獣人ハンター達は防具は最低限のものみたいだった。あとは素手で戦う奴。武器を持ってる奴は稀だった。なるほど、そういう事だったのか。
まぁ、丹精込めて作ったもん壊されたらたまったもんじゃないしな。気持ちは分かる。
でもまぁ俺としてはそのドワーフの国を通らなくても空からいけるから問題はない。まぁ問題があるとすれば人の目か。陰身魔法で隠すことはできるけれど、俺がいきなり消えたらどこに行ったんだって騒がれる。それは避けたい。
よし、行き先はサイシス王国に決まりだな。




