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◇第十話 え、もしかしなくても野宿コース?


 この異世界に来て初っ端に帝都入りでやらかしたけれど、今回のティーファス王国では何事も問題を起こさずに入国出来た。やっとここで異世界ライフを満喫できる。


 そう思っていたのに、またまた困った事になってしまった。



「悪いね、全部屋満室なんだ」



「部屋、空いてないよ。他を当たってくれ」



「悪いね兄ちゃん、うちも全部埋まっちまってんだ」



 今日泊まる宿が、全く見つからない。これ、まさか野宿コースか?


 まぁ、ウチには毛並み最高な精霊さんがいらっしゃるから野宿コースでちょっと布団代わりになって頂いてもいい気もする。でも途中で雨とか降ってきたら? またまたあの恐ろしいモンスターと出くわしたら?


 そんな不安の中安心して寝られる訳がないだろっっ!!



「運が良いねぇ、兄ちゃん。一部屋だけ空いてるよ」


「本当ですか!」



 大通りからだいぶ外れた通りにひっそりとたたずむ宿屋。ちょっとぼろっちいけれど、まぁ野宿よりは断然いい。ちょっと不安っちゃ不安だけど。


 この受付のネコ耳婆さんだって、なんか不気味というか、何というか。初対面で失礼ではあるけれど。



「一週間でお願いします」


「一週間? 連泊かい」



 まぁとりあえず一週間でいいかな。この世界の事をあまり知らないし、さっきの大男さん達には移動するには気を付けたほうがいいって言われたし。まぁとりあえず一週間って事で。


 じゃあ値段はこれ。そう言って基本料金が書かれた紙を出された。


 一泊、1万Gか。ここの通行料より高いな。相場が分からないからこれが高いのか安いのかが分からん。



「これが基本料、ここに風呂代と食事代が入るよ」


「え”っ」



 電卓? みたいなもので数字を見せられて、桁を数えてみたら……おいおい、倍かよ。なんじゃこれ。そしたら、7泊で14万Gか。



「チッ、何だい、高いってか? 文句を言うなら他に行きな。と言っても、今じゃどこも空いてないと思うがね。今はこっちにも人が流れてきてるから、どこの宿もパンパンで空いてないだろうよ」



 うわぁ、感じ悪っ。もしかして、これを狙って値上げでもしてんのか。まぁこんなにぼろっちくてこんな目立たない場所に建ってるってなると経営が上手く行ってないのかもしれない。


 でももうちょっと愛想笑いでもしろって。営業スマイルって知ってる?



「雨風しのげて布団もあって風呂もあって飯も食えるんだ。それとも何だい、外で魔獣におびえながら夜を超すのかい。アンタがそれでいいってんなら別にあたしゃ止めないよ」


「……とりあえず一週間でお願いします」


「あいよ」



 はぁ、まぁ一応お金はあるから問題ない。けど、いつかは底をつく。何か問題があって無くなる可能性だってある。あとで、何か職業でも何でもお金を稼げる仕事を考えておこう。


 階段を上がって5番の部屋だよ。そう言われ鍵を渡された。案内とかしないんかい、と内心ツッコミを入れながら階段を上がった。風呂とか食事する場所とかトイレとかは後で聞こう、もう疲れた。



「へぇ、意外といい部屋じゃん」



 異世界もののマンガとかで出てくる宿にそっくりだ。ちゃんとベッドがあって、テーブルがあって。天井にランタンみたいなものがぶら下がってる。これ明かりだよな。これどうやって使うんだろ?



『何ここ不気味ね、あの老婆も不気味過ぎてお化けに見えたわ』


「文句言うなって、これでも野宿よりは断然いいだろ」



 お化けって……それは言い過ぎだろ。俺もちょっと思ったっていうのは言わないけど。


 まぁ布団はちょっと硬めだけど、でもゆっくり安心して寝られるんだからもう万々歳だ。


 それに、異世界に来て野宿コース続きなんて勘弁だし。



『こんな狭苦しい所で寝るのか』


「文句があるなら外行け。それか精霊召喚スキル解除だ」


『それは嫌だ!』


「なら黙ってろ」



 ルアンの意地悪~、と言ってくるが無視する事にした。全く、文句言うな。


 今日はだいぶ濃い一日だったから疲れてるのに、野宿だなんて勘弁してくれ。


 まぁ、無事にこの国に入国出来てよかった。パラウェス帝国であんな目に合ったからなぁ。でも今は身分証を手に入れたから安心して門を通れる。



「……【魔王の心臓】と【深海の宝石箱】、だったか」


『どうした、兄弟よ』


「アイツにさぁ、要求されたんだよね、その二つ」



 無限倉庫を開いて、探してみた。まさかゴミの中には……



 ______________

 【無限倉庫】

 【No.10 拾いもん】

 ・魔剣

 ・魔族の宝玉

 ・魔王の心臓

 ・魔王の生き血

 ・マーメイドクイーンのティアラ

 ・深海の宝石箱

  etc.

 ______________



 うん、よかった、ゴミ箱の中にはなかった。と言ってもあれにはゴミじゃないものが入ってるんだけどさ。でもさすがに魔王の心臓をゴミにしちゃダメだろ。


 ちょっと出してみる? とも思ったけど心臓だろ? いや、グロすぎだって。倉庫に入れたまま鑑定スキルとかって使えないのかな。



「あ、出来た」


『何が?』


「鑑定」


『出来ない事ってあるのか?』


「いやそれおかしいって」



 おいバリス、なぁにが出来ない事があるのかだよ。ありすぎだよ、頭おかしいんじゃないのか。それを言うならじいちゃんの方だろ。




 ______________


 名前:魔王の心臓

 種類:悪魔族

 ランク:SSS

 悪魔族の王【魔王】の心臓。

 飲み込む事で魔王の取得していた能力全てを手に入れる事が出来る。

 【霊薬】をかける事によって肉体再生を起こし魔王を復活させることが出来る。

 ______________




 ……なんてこった、どんだけ物騒なもん俺持ってるんだよ。しかも、霊薬で復活? 俺霊薬も持ってたよな。それかけちゃったら復活? 恐ろしすぎて捨てたいんだが。……あ、いや、それはダメなのか。


 アイツが欲しがってたけど、一体これらを何に使うつもりなんだ? 金を集めてたし、魔王の心臓と深海の宝石箱を要求してきたし、戦争でも始めるつもりか?



「なぁ、勝手に無限倉庫から飛び出てくるとか、ないよな?」


『何を言っている、スキルを発動しない限り亜空間に閉じ込められているのだ、出てこられる訳がないだろう』


「よかったぁ~」



 よし、これで安心だな。


 あと、【深海の宝石箱】だったか。どんな宝石が入ってんのかな。




 ______________


 名前:深海の宝石箱

 種類:アイテム

 ランク:SSS

 人魚族の王族全員の鱗が収納されている宝石箱。

 鱗を水に浮かべる事によって呼び出す事が出来る。

 ______________




 王族、っすか。人魚族の王族達を呼び出すんか。これもやばいやつだった。人魚族は人間嫌い、一応俺は獣人ではあるけれどバレる可能性だってある。もしそうなって見ろ、恐ろしく面倒なことになる。


 これを欲しがっていた皇帝は人間。となると、何か悪い事に使う予感がする。そもそも魔王の心臓を要求してくるあたりで怪しいからな。


 まぁでも、どっちも俺には必要ないものだから永久保存だな。忘れよう、うん、それがいい。



「なぁ、防音とかって出来るのか?」


『防音?』


「この部屋の中の声とか音を外に出さないようにする魔法とかって」


『あぁ、アンリ―クが使っていた魔法か。【複合魔法】を使え』



 じいちゃんが使ってたやつ? あ、そういえば暗殺ギルドに入ってたなじいちゃん。なんでそんなもんに入ってたのか分からないけど、使ってたってことは出来るってことだよな。


 魔法とかスキルは想像で使うことが出来た。なら、これも想像すればいいってことか? でも防音ってどんな感じで想像すればいいんだ?



「【複合魔法】――防音」



 って、やってはみたものの……出来てるのか? これ。



「出来てる?」


『魔法はかかってるわね』


『でも、音消す必要があるのか?』


「お前らが騒ぐからだろーが!」



 その後、トロワに一旦部屋から出てもらい俺らの声が聞こえているかチェックしてもらった。ちゃんと出来てるみたいでよかった。これなら騒いでも大丈夫だな。あのばあさんに怒られるのは勘弁だ。



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