第86話:最終決戦④『無限コンボ完成』
立ち上がった。
剣の柄を、握り直す。
指が、震えている。
反復18,000回の身体でも、限界に近い。
だが——。
俺には、積み上げてきたものが、あった。
単調斬り。
疾風斬。
回転斬。
崩壊斬。
四つのスキル。
それを、一つの流れにする。
プロローグで、俺が、いつか成し遂げると決めた姿。
——無限コンボ。
男が、剣を構えている。
こちらの動きを、待っている。
「蓮」
翔の声が、遠くから聞こえた。
「いけるのか」
「いく」
俺は、短く答えた。
「これを、一つにする」
翔が、頷いた。
「任せる」
俺は、剣を構えた。
息を、整える。
単調斬り。
疾風斬。
回転斬。
崩壊斬。
四つの動作の、区切りを、消す。
一撃の終わりが、次の一撃の始まりに、なるように。
動きの中の、空白を、ゼロにする。
「反復20,000回」
俺は、呟いた。
システムメッセージは、まだ出ていない。
だが、確信があった。
今この瞬間、20,000回を、突破する。
それだけの、積み上げがあった。
「単調斬り——」
一撃目。
男に向かって、剣を振るう。
男が、剣で、受ける。
——その瞬間。
「疾風斬」
二撃目が、既に、動き出していた。
単調斬りの終わりと、疾風斬の始まりが、完全に重なっている。
男の受けを、剣が、押し込んだ。
「回転斬」
三撃目。
身体が、回転する。
剣の軌道が、円を描く。
男の剣と、側面で、衝突する。
「崩壊斬」
四撃目。
回転の勢いを、そのまま、振り下ろしに繋げる。
男の受けを、抜けた。
剣が、男の肩に、届いた。
ガキィィィン!
男の鎧に、初めて、亀裂が入った。
「当たった——」
翔が、息を呑んだ。
俺は、止まらない。
単調斬り。
再び、一撃目が、発動する。
途切れない。
単調斬りの後の、疾風斬。
疾風斬の後の、回転斬。
回転斬の後の、崩壊斬。
そして、再び、単調斬り。
四つのスキルが、一つの、無限の流れになった。
「無限コンボ」
俺の口から、声が、漏れた。
プロローグで、俺が、描いた姿。
いつか、全てのスキルが、一つの大きな流れになる。
その姿が——今、ここにあった。
【反復回数:20,000回突破】
システムメッセージが、視界に浮かんだ。
二万回。
俺の剣が、もはや、止まらない。
男の剣と、何度も、ぶつかる。
そのたびに、男の鎧に、新しい亀裂が入る。
男が、初めて、後退した。
一歩、二歩、三歩。
押し込まれていた。
「通じた——」
俺は、歯を食いしばった。
「通じたぞ、無限コンボは、通じる」
翔が、叫んだ。
「葵、美咲——!」
倒れていた葵と美咲が、かろうじて、身を起こす。
「蓮さんに、続きます——!」
葵が、残った魔力で、氷結連鎖を発動する。
美咲が、最後の矢を、番える。
翔が、連続突きで、男の側面を突く。
俺の無限コンボに、三人の連携が、重なる。
男の鎧が、砕け始めていた。
だが——男は、まだ、立っている。
剣を振るう勢いは、むしろ、強くなっていた。
「まだ、倒れない——!」
俺が、歯を食いしばった。
だが、確信も、あった。
これが、突破口だ。
無限コンボで、男の鎧を、少しずつ削っていく。
四人の連携で、援護する。
それを、繰り返せば——。
きっと、届く。
無限コンボ。
工場のライン作業から、生まれた、俺の最大の武器。
単調な反復が、最強になる。
その証明を——今、している。
男の目に、驚きの色が、浮かんでいた。
初めて、俺の攻撃を、認めた目。
「届く」
俺は、もう一度、呟いた。
確信が、あった。
反復20,000回の、身体。
工場のライン作業で培った、単調さへの耐性。
そして、仲間との連携。
全てが、この一瞬のために、ある。
男の鎧が、少しずつ、砕けていく。
俺は、無限コンボを、振るい続けた。
止まらない。
止められない。
ただ、攻撃が、続いていく。
男の、鎧が、音を立てて、砕けていく。
一枚、一枚、剥がれていく。
内側の、本体に、近づいていく。
でも、男は、倒れない。
受け続けている。
倒れるのを、待っているのか。
それとも——。
何か、別の、終わり方を、待っているのか。




