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第80話:90階層ボス突破

八十五階層——虚無の君主との、再戦。


広間に入った瞬間、君主の姿があった。


五周目と、同じ漆黒の塊。


輪郭のない、存在そのもの。


だが——今回は、違う。


俺には、明確な戦略があった。


「全員、役割を確認する」


俺が、短く指示を出す。


「翔、君主の注意を引き続けろ。接触されない距離を保て」


「おう」


「葵、氷結領域で、君主の移動を制限する。存在を薄くできなくても、動きは鈍る」


「はい」


「美咲、遠距離から、矢で牽制。君主のスキル発動を、一瞬でもいいから遅らせる」


「了解」


「俺は——時間加速斬を、先に撃つ」


三人が、頷いた。


反復15,000回超の俺の、時間加速斬。


かつてより、明らかに発動速度が速い。


君主が、能力を発動するより、先に。


戦闘が、始まる。


葵の氷結領域が、広範囲に広がる。


君主の周囲の空間が、凍る。


輪郭のない存在でも、凍った空気の中では、わずかに動きが鈍った。


翔が、遠距離から連続突きを放つ。


槍が、君主の周囲の空気を切り裂く。


君主の意識が、翔に向く。


その一瞬——。


俺が、飛び込む。


「時間加速斬!」


世界が、スローモーションになる。


君主の能力が、発動しようとしている——その、途中。


加速した時間の中で、俺の剣が、君主に届いた。


「単調斬り!」


連鎖する。


「疾風斬!」


「回転斬!」


「崩壊斬!」


四連鎖が、君主の中心を、貫く。


君主の輪郭が、初めて、明確になった。


俺の攻撃で、核が、剥き出しになる。


「今だ——」


美咲の矢が、露出した核を、貫いた。


葵の氷が、核を砕く。


翔の連続突きが、残った核片を、粉砕する。


【虚無の君主を撃破しました】


静寂が、戻った。


四人で、息を整える。


翔が、信じられないという顔で、君主の跡を見つめた。


「……勝ったのか」


「ああ」


俺は、剣を鞘に戻した。


「五周目、倒せなかった敵を、六周目で倒した」


葵が、嬉しそうに拳を合わせた。


「蓮さんの戦略、完璧でした」


美咲が、弓を背負いながら頷いた。


「連携も、今までで一番」


「次は、九十階層のボスだ」


俺は、次の階段を、指した。


「このまま行く」


四人で、階段を登り始める。


八十六階層、八十七階層、八十八階層、八十九階層——。


過去最速で、突破していく。


そして、九十階層。


ボスは、複数体だった。


【深淵の三位一体】——三体の、異なる姿のボス。


一体目は、人型の剣士。


二体目は、獣型の突進役。


三体目は、魔法使い型の遠距離型。


三体で、連携して、襲いかかってくる。


「三体同時は、きついな」


翔が、槍を構えた。


「分担して戦うしかない」


俺が、判断した。


「翔、獣型を頼む。連続突きで足を止めろ」


「了解」


「葵、魔法使い型。氷結で魔力の発動を封じる」


「はい」


「美咲、剣士型を牽制。俺が叩く」


「分かった」


四人が、同時に動く。


六周目の連携は、完璧に、噛み合っていた。


翔が、獣型の足を貫く。


葵が、魔法使い型を氷で封じる。


美咲が、剣士型に矢を集中させる。


俺が、剣士型に飛び込んだ。


時間加速斬。


四連鎖。


ガギン、ザシュ、バキ、ドゴォン!


剣士型が、真っ二つに割れる。


続いて、魔法使い型。


葵の氷で動けない敵に、俺が崩壊斬を叩き込む。


魔法使い型が、砕け散る。


最後に、獣型。


翔が足止めする間に、俺と美咲が、連携で仕留める。


【深淵の三位一体を撃破しました】


九十階層クリア。


【反復回数:18,000回突破】


一万八千回。


俺の剣は、もはや、人間の動作の領域を、超えていた。


翔が、天井を見上げながら、深い息を吐いた。


「蓮、俺たち、本当に強くなったな」


「ああ」


葵が、頷いた。


「蓮さんのおかげです」


「四人のおかげだ」


俺は、短く答えた。


「次は、九十五階層だ」


あと、五階層。


頂上が、ついに、目前に迫っていた。


翔が、笑いながら、拳を突き出した。


「次で、終わりだな、この塔」


葵が、拳を合わせた。


「終わらせましょう」


美咲も、拳を合わせる。


俺も、拳を、重ねた。


四つの拳が、重なった瞬間——何かが、胸の中で、確信になった。


今度こそ、終わる。


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