第7話:5階層ボス、絆の力で勝利
5階層。
階段を登り切ると──今までで最も広い空間。
天井が見えないほど高く、まるで屋外にいるような開放感。
そして、中央に──巨大な扉。
【警告:ボス戦です】
「ボス...か」
翔の肩から、まだ血が滲んでいる。
4階層での柊グループとの戦闘での傷だ。応急処置はしたが、完全には治っていない。
葵の魔力も、残り40%程度。
俺も、前の戦闘で疲労が残っている。
万全じゃない。
でも──。
「やるしかない」
扉に手をかける。
扉が、重々しく開く。
その先は──闘技場。
円形の広間。直径は五十メートルはあるだろうか。
観客席のような段差が周囲を囲んでいるが、誰もいない。
ただ、静寂だけがある。
そして、広間の中央に──『それ』は立っていた。
五メートルはある巨人。全身が鋼鉄で覆われ、右手には巨大な戦斧。左手には盾。
【鋼鉄の巨人 Lv15】
「レベル15...!」
俺はレベル6。
レベル差、九つ。
「...やるしかない」
剣を抜く。
三人で、ゆっくりと広間に入る。
巨人が、こちらに気づく。
頭部──いや、兜の奥から、赤い光が灯る。
地響きを立てながら、ゆっくりと歩いてくる。
ガシャン、ガシャン、ガシャン。
一歩ごとに、石畳が揺れる。
「来るぞ...!」
そして──。
「ウオオオオオッ!」
咆哮と共に、戦斧を振り下ろす。
「避けろ!」
三人が散る。
ドガァァン!
戦斧が地面を砕く。石畳が粉々に。巨大なクレーターができる。
衝撃波が、俺たちを襲う。
「うわっ!」
吹き飛ばされそうになる。
足を踏ん張り、なんとか耐える。
「こいつ、今までとは格が違う...!」
ゴブリンやダイアウルフとは、次元が違う。
一撃の重さが、比べ物にならない。
「でも、やるしかない!」
翔が槍を構える。
「突撃槍!」
槍を構えて突進する。
巨人の脚を狙う。
しかし──。
ガキィン!
巨人の外骨格が、槍を弾く。
「硬っ...!」
翔の槍が、火花を散らす。
傷一つつかない。
「くそっ...!」
巨人の戦斧が、翔を襲う。
横薙ぎの一撃。
避けられない速度。
「まずい!」
翔が咄嗟に槍で受け止めようとする。
ガギャァン!
「ぐあっ!」
翔が吹き飛ばされる。
五メートル以上も飛び、壁に激突する。
「がはっ...!」
血が飛び散る。
肩の傷が開く。
新しい傷も増えている。
「翔!」
「くそ...まだだ...!」
翔が立ち上がろうとするが、足が震えている。
その隙に、巨人が俺に向かってくる。
「今度は俺か...!」
戦斧が振り下ろされる。
「単調斬り!」
【反復回数:53回】
二連撃が、戦斧に向かう。
ガキン、ガキン。
でも──。
「弾かれる...!」
戦斧の勢いは止まらない。
そのまま俺を襲う。
避けられない。
「くそっ...!」
剣で受け止める。
ガギャァァン!
「ぐっ...!」
衝撃が全身を貫く。
腕が痺れる。剣を握る手が震える。
膝が、地面につく。
「がっ...!」
重い。
重すぎる。
押し潰されそうだ。
「くそ...押し負ける...!」
その時──。
「氷結魔法!氷結魔法!」
葵の魔法が、巨人の戦斧を凍らせる。
動きが一瞬止まる。
「今だ!」
俺が転がって退避する。
ドガァン!
戦斧が、さっきまで俺がいた場所を砕く。
「はぁ...はぁ...助かった...」
「でも、まだ...!」
巨人が、今度は葵に向かう。
「やばい!」
葵が後退する。
でも、巨人の方が速い。
ガシャン、ガシャン、ガシャン!
一瞬で距離を詰める。
戦斧が振り下ろされる。
「葵!」
翔が立ち上がり、槍を投げる。
「突撃槍!」
槍が、巨人の顔面を狙う。
ガキィン!
弾かれる。
でも、一瞬だけ巨人の動きが止まった。
「その隙に...!」
俺が走る。
葵の前に飛び込む。
戦斧が振り下ろされる。
「くそっ...!」
剣で受け止める。
ガギャァァン!
「ぐあっ...!」
衝撃が全身を貫く。
腕が砕けそうだ。
肋骨も折れたかもしれない。
膝が地面につく。
「がっ...!」
視界が真っ白になる。
痛い。
全身が悲鳴を上げている。
「このままじゃ...死ぬ...!」
巨人が、さらに戦斧を押し込んでくる。
「くそ...くそっ...!」
もう限界だ。
このままじゃ、剣が折れる。
そして、俺も死ぬ。
「遥斗...すまない...」
弟の顔が浮かぶ。
笑顔の遥斗。
「兄ちゃん、いつ帰ってくるの?」
いつもそう聞いてくれた。
「帰れない...のか...」
その時──。
「蓮!」
翔の声。
「諦めるな!」
「私たち、まだ戦えます!」
葵の声。
二人の声が、俺の耳に届く。
「翔...葵...」
二人とも、ボロボロだ。
翔は血まみれ。
葵も魔力が尽きかけている。
でも──。
諦めていない。
まだ、戦おうとしている。
「そうだ...俺だけじゃない...」
仲間がいる。
一人じゃない。
「諦めるわけには...いかない...!」
俺の中で、何かが弾けた。
限界を超えた瞬間。
体が、熱くなる。
力が、湧いてくる。
【限界突破】
【反復回数が加速します】
「これは...!」
剣を握る手に、力が戻る。
「まだだ...まだ終わってない...!」
戦斧を押し返す。
「うおおおっ!」
巨人が驚いたように、一歩後退する。
「今だ!」
俺が立ち上がる。
「単調斬り!単調斬り!単調斬り!」
【反復回数:54回】【反復回数:55回】【反復回数:56回】
連続で剣を振る。
巨人の脚を狙う。
関節部分に、集中攻撃。
ガキン、ガキン、ガキン!
「まだだ!」
「疾風斬!」
【反復回数:57回】
五連撃が、関節を襲う。
ガキン、ガキン、ガキン、ガキン、バキッ!
ひびが入る。
「いける!」
でも──。
巨人の左手の盾が、俺を殴りつける。
「がっ!」
吹き飛ばされる。
地面を転がる。
「くそ...盾も...!」
立ち上がる。
全身が痛い。
でも、まだ動ける。
「翔!今だ!」
翔が立ち上がる。
槍を拾う。
顔が青ざめている。
視界が揺れている。
「くそ...このままじゃ...俺が足を引っ張る...」
翔が歯を食いしばる。
巨人が、翔に向かってくる。
戦斧を振り上げる。
「翔!避けろ!」
「動けない...!」
足が動かない。
負傷のせいだ。
体が言うことを聞かない。
「くそ...動け...動けよ...!」
戦斧が振り下ろされる。
死ぬ。
そう確信した。
でも──。
「俺は...死ねない...!」
火事場の馬鹿力。
限界を超えた力。
槍が、勝手に動く。
体が、勝手に動く。
意識しなくても、最適な動きが見える。
「これは...!」
一瞬。
時が止まったような感覚。
戦斧の軌道が見える。
巨人の弱点が見える。
膝の関節──ひびの入った部分。
「うおおおおっ!」
槍が、一瞬で五回突き出される。
【新スキル習得:『連続突き(ラピッドスラスト)』】
ガガガガガッ!
巨人の膝の関節──ひびの入った部分に、五回の突きが叩き込まれる。
バキィッ!
関節が砕ける。
「やった...!」
巨人がバランスを崩す。
片膝をつく。
でも、まだ倒れない。
「くそ...まだか...!」
翔が膝をつく。
限界を超えた反動。
全身から力が抜ける。
息が荒い。
視界が揺れる。
槍を杖代わりに、なんとか倒れないようにする。
でも、もう立てない。
「翔、下がれ!」
俺が叫ぶ。
巨人が、片膝をついたまま、翔に向かって戦斧を振る。
「翔!」
その時──。
「氷結魔法!」
葵の魔法が、戦斧を凍らせる。
動きが止まる。
「はぁ...はぁ...間に合った...」
葵が息を切らしている。
魔力が、ほとんど残っていない。
残り10%以下。
「でも...まだ...!」
巨人が氷を砕く。
そして、今度は葵に向かう。
「まずい...!」
葵が後退する。
でも、足が絡まる。
転ぶ。
「きゃっ!」
地面に倒れる。
巨人が、葵に迫る。
戦斧を振り上げる。
「葵!」
俺が叫ぶ。
でも、間に合わない。
距離が遠すぎる。
「くそっ...!」
葵が地面に倒れたまま、巨人を見上げる。
戦斧が、今にも振り下ろされようとしている。
葵が目を閉じる。
「こんなところで死んでいいの?」
そうだ。
私は、まだ何もしていない。
デザイナーとして、やっと独立したばかり。
「パニックになるな。考えるんだ」
深呼吸。
「今までの魔法じゃ...足りない...」
想像する。
氷が連鎖していく光景を。
一つの魔法が、次の魔法を呼ぶ。
途切れることのない、氷の連鎖。
戦斧が、ゆっくりと落ちてくる。
「そうだ...私にもできる...!」
葵の杖が、青白く輝く。
今までにない、強い光。
「氷結連鎖!」
【新スキル習得:『氷結連鎖』】
小さな氷の矢が、巨人に当たる。
そこから、次々と氷が連鎖していく。
バキバキバキ!
巨人の右腕が凍る。
そこから胴体へ。
胴体から左腕へ。
左腕から頭部へ。
全身が、氷で覆われていく。
動きが、止まる。
「今だ!」
俺が跳ぶ。
剣を構える。
「疾風斬!」
【反復回数:60回】
五連撃が、巨人の首の関節を襲う。
ガキン、ガキン、ガキン、ガキン──バキッ!
首の関節が砕ける。
「まだだ!」
体を回転させる。
【新スキル習得:『回転斬』】
全方位に斬撃を放つ。
巨人の胸部装甲が削れる。
氷が砕け、装甲が剥がれる。
核が、見える。
赤く光る、人間の心臓ほどの大きさの核。
「これで──終わりだ!」
「回転斬!」
【反復回数:65回】
五連撃が、核を貫く。
ガキン、ガキン、ガキン、ガキン──バキィィン!
核が砕け散る。
「ウオオオオオッ...」
巨人の咆哮が、途切れる。
巨体が、ゆっくりと倒れる。
ドオォォン!
地響きと共に、光の粒子となって消えていく。
【五階層ボス『鋼鉄の巨人』を撃破しました】
【経験値を獲得しました】
【レベルアップ!】
【朝倉 蓮 Lv6→Lv10】
【結城 翔 Lv5→Lv8】
【藤崎 葵 Lv4→Lv7】
「勝った...」
三人とも、地面に倒れ込む。
全身の力が抜ける。
「はぁ...はぁ...」
でも、心は満たされている。
初めてのボス戦。
そして──勝利。
巨人の残骸から、何かが光る。
【魔石×3】
赤、青、緑の、三つの石。
「これが...魔石...」
俺が拾い上げる。
「これのために、あいつらは俺たちを襲ったのか...」
翔が呟く。
「大事に持っておきましょう」
葵が言う。
三人で、魔石を一つずつ持つ。
「俺たち...よく勝てたな」
「三人だから、勝てた」
「ああ。一人じゃ無理だった」
三人で、拳を合わせる。
仲間がいる。
だから、勝てる。
「行こう。次へ」
俺たちは立ち上がり、次の扉へと向かった。
文字数:約1,900字
主人公レベル:Lv10
到達階層:5階層クリア→6階層へ
スキル:『単調斬り』Lv5(二連撃)、『疾風斬』Lv1(五連撃)、『回転斬』Lv1
反復回数:累計65回
獲得アイテム:魔石×3(赤、青、緑)
新スキル習得:翔『連続突き』、葵『氷結連鎖』、蓮『回転斬』
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