第5話:砂漠の試練、そして新たな技
三階層。
階段を登り切ると、そこは──砂漠だった。
「今度は砂漠かよ...」
翔が呆れる。
見渡す限り、砂。
灼熱の太陽が照りつけ、空気が揺らめいている。
「暑い...」
葵が額の汗を拭う。
「水、大丈夫か?」
「まだ、なんとか...」
俺たちは入口で手に入れた水筒を持っている。
でも、この砂漠がどれだけ広いか分からない。
「早く抜けよう」
砂の上を歩く。
足が沈む。歩きづらい。
「これ、体力削られるな...」
「ああ。敵が出る前に、体力を温存しないと」
しばらく歩くと──。
「あれ...」
砂の中に、何かが埋まっている。
「何だ?」
近づく。
それは──剣だった。
錆びた、古い剣。
柄の部分に、文字が刻まれている。
【ジョン・ミラー - もう誰も来るな】
「また...過去の挑戦者か」
剣を抜こうとするが、抜けない。
砂に深く埋まっている。
「この人は...帰れなかったのか」
「それとも、剣を残して帰ったのか」
分からない。
でも、確実に言えることは──。
「過去に、大勢の人がこの塔に挑んだ」
「そして、みんな...」
葵が言葉を濁す。
「生きて帰れたのか、死んだのか...」
重い空気が流れる。
「...行こう」
俺たちは砂漠を進む。
しばらく歩くと、砂の中から何かが飛び出してきた。
「っ!?」
巨大なサソリ。
いや、サソリというには大きすぎる。
体長は三メートル以上。
巨大な鋏と、毒針を持つ尾。
【デザートスコーピオン Lv8】
「レベル8...!」
スコーピオンが、鋏を鳴らす。
カチカチカチ。
不気味な音。
「来るぞ!」
スコーピオンが突進してくる。
「避けろ!」
三人が散る。
スコーピオンの鋏が、砂を抉る。
「速い...!」
「葵!魔法!」
「氷結魔法!」
氷の矢が、スコーピオンに向かう。
スコーピオンが鋏で弾く。
「やっぱり弾かれる...!」
「なら、俺が!」
翔が槍を構える。
「突撃槍!」
槍が、スコーピオンの胴体を狙う。
しかし──。
スコーピオンの外骨格が、槍を弾く。
ガキィン!
「硬っ...!」
スコーピオンの尾が、翔を襲う。
「翔!」
翔が避ける。
毒針が、さっきまで翔がいた場所の砂を貫く。
「あぶねえ...!」
俺が突進する。
「単調斬り!」
【反復回数:46回】
二連撃が、スコーピオンの脚を狙う。
ガキン、ガキン。
「脚も硬い...!」
でも──。
「関節なら!」
リビングアーマーの時と同じ。
脚の関節部分を狙う。
「単調斬り!単調斬り!単調斬り!」
【反復回数:49回】
連続で同じ場所を斬る。
ガキン、ガキン、ガキン──バキッ!
関節が砕ける。
「やった!」
スコーピオンがバランスを崩す。
でも、まだ倒れない。
尾を振り回し、俺を狙う。
「くそっ!」
避ける。
毒針が、俺の頬を掠める。
「っ...!」
痛い。そして──。
「毒...?」
視界が、少し霞む。
頬を掠っただけで、毒が回る。
「まずい...早く倒さないと...!」
でも、体が重い。
スコーピオンが、再び襲ってくる。
「蓮!」
翔と葵が叫ぶ。
「くそ...動け...!」
体が、思うように動かない。
その時──。
【反復回数:50回達成】
【『単調斬り』の威力が大幅に上昇しました】
システムメッセージ。
そして──。
【新スキル『疾風斬』を習得しました】
「新しいスキル...!」
脳内に、スキルの情報が流れ込む。
【疾風斬:高速で五連撃を繰り出す斬撃】
「五連撃...!」
スコーピオンの鋏が、俺に迫る。
「試すしかない!」
剣を構える。
「疾風斬!」
一瞬。
剣が、五回振るわれる。
風を切る音が、一つの轟音になる。
五つの斬撃が、スコーピオンの頭部を襲う。
ガキン、ガキン、ガキン、ガキン──バキィィン!
頭部が、砕け散る。
【デザートスコーピオンを撃破しました】
【経験値を獲得しました】
【レベルアップ!Lv5→Lv6】
「はぁ...はぁ...」
膝をつく。
毒が、まだ体に残っている。
「蓮!大丈夫!?」
葵が駆け寄る。
「毒...が...」
「くそ、休息の間まで持つか...?」
翔が俺を支える。
「行こう。早く泉の水を...!」
三人で砂漠を進む。
俺を二人が支えながら。
視界が霞む。
意識が、遠のきそうになる。
「遥斗...待ってろ...」
どれだけ歩いただろう。
ようやく、扉が見えた。
【三階層をクリアしました】
【次の階層へ進むことができます】
「あと少し...!」
扉を開け、螺旋階段を登る。
俺の体を、翔と葵が必死に支える。
「蓮!しっかりしろ!」
「もうすぐ...休息の間が...!」
階段の途中。
青白く光る扉。
「あった!」
扉を開ける。
泉の部屋。
「泉だ!」
二人が俺を泉まで運ぶ。
俺の口に、泉の水を含ませる。
冷たい水が、喉を通る。
その瞬間──。
「っ...!」
体中に、力が戻ってくる。
毒が、一瞬で消える。
視界が、クリアになる。
「はぁ...はぁ...助かった...」
「良かった...!」
葵が安堵の表情を浮かべる。
「サンキュー、二人とも」
「礼はいいって。仲間だろ」
翔が笑う。
三人で泉の水を飲み、完全に回復する。
「新スキル疾風斬...すげえ威力だったな」
「ああ。でも、まだレベル1だ。これも反復すれば、もっと強くなる」
『反復の極意』。
同じ技を繰り返せば、どんどん強くなる。
「よし、少し休もう」
泉の近くに座る。
「壁、探してみるか」
「ああ」
三人で壁を探し始める。
この休息の間は、今までで一番広い。
柱もいくつかある。
「あった」
翔が、柱の裏側に文字を見つける。
【2010年召喚組より──この塔は終わりがない。】
「終わりがない...?」
続きを探すが、この文字はここで途切れている。
「どういう意味だろう...」
俺も別の場所を探す。
壁の隅、ほとんど目立たない場所に。
【頂上に到達した。門を開いた。しかし──帰れなかった。─ 2018.10.5】
「帰れなかった...?」
「門を開いても、帰れないってこと?」
葵が、別の壁で文字を見つける。
床に這いつくばって、見えにくい場所を読む。
「これ...この感覚は何だって書いてある...」
「感覚?」
「その下にも...記憶が曖昧だって」
三人で顔を見合わせる。
「よく分からないな...」
「塔に長くいると、記憶が曖昧になるとか?」
「それとも、精神的におかしくなったのか...」
理解できない。
でも、確実に言えることは──。
この塔には、何か秘密がある。
過去の挑戦者たちが感じた「何か」。
「...とりあえず、進むしかないな」
「そうだな」
「はい...」
不安は残るが、立ち止まっている暇はない。
遥斗が待っている。
「...行こう」
休息の間を出る。
螺旋階段を登り続ける。
四階層へ。
塔の秘密は、まだ見えない。
でも──。
「必ず、真実を知る」
そして、必ず帰る。
遥斗の元へ。
文字数:約1,000字
主人公レベル:Lv6
到達階層:3階層クリア→4階層へ
スキル:『単調斬り』Lv5(二連撃)、『疾風斬』Lv1(五連撃)
反復回数:累計50回
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