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第40話:召喚の記録

隠し部屋を、見つけた。


二十五階層の壁の一部が、微かに歪んでいた。


他の壁と、質感が違う。


「ここ、何かある」


手で押すと——壁が、音もなくスライドした。


薄暗い石造りの小部屋。


空気が古い。長い間、誰も入っていない匂いがする。


中央に——巨大な石碑が立っていた。


高さ二メートル。幅三メートル。


表面にびっしりと、文字が刻まれている。


【召喚記録の碑】


「召喚記録...?」


翔が近づく。


石碑に刻まれていたのは——名前と、日付と、到達階層。


二十年以上にわたる、全召喚の記録。


「すげぇ数だ...」


翔が呟く。


名前。名前。名前。


無数の名前が刻まれている。


到達階層を見ていく。


3階層。5階層。1階層。7階層。


ほとんどが、一桁台で止まっている。


「10階層を超えてる人が...ほとんどいない」


葵が震える声で言う。


そうだ。


俺たちは二十階層を超えた。


それがどれだけ異常なことか——この石碑が、証明している。


さらに読み進める。


15階層。18階層。22階層。


数は少ないが、二十階層を超えた者もいる。


そして——ある記録で、目が止まった。


名前がない。


名前の代わりに、剣のような模様が刻まれている。


到達階層の記載もない。


文面はただ一言——。


「何度登っても、塔は終わらなかった。それでも俺は登り続けた」


「名前がないぞ」


翔が言う。


「何度登っても...ってどういうことだろう」


葵が首を傾げる。


何度登っても。


その言葉が、俺の中で反響する。


ループ。


俺と同じように——ループした者がいたのか。


石碑の剣の模様を、じっと見つめる。


どこかで見た気がする。


でも——どこだったか、思い出せない。


指先で、模様に触れた。


冷たい。石の冷たさ。


だが——何かが、響いた気がした。


「記録が途切れてる。この人はどうなったんでしょうね」


美咲が静かに言う。


「帰れたのか。死んだのか。それとも——」


美咲の言葉が途切れる。


「それとも——まだ、この塔のどこかにいるのか」


俺が、続けた。


全員が、黙った。


銀髪の男の顔が、脳裏に浮かんだ。


「覚えていない」と言った、あの男。


感情が薄く、機械のように動く、あの男。


何度も登った者。


全てを忘れた者。


——繋がるのか。


胸の奥に、言葉にできない胸騒ぎが生まれる。


答えは、まだない。


でも——この石碑は、俺たちに何かを伝えようとしている。


「...出よう」


俺は振り返り、もう一度だけ石碑を見た。


剣の模様が、薄暗い光の中で静かに光っているように見えた。


気のせいかもしれない。


扉を閉めて、小部屋を出る。


答えは——もっと上にある。


文字数:約2,400字


到達階層:25階層(隠し部屋)


備考:召喚記録の碑を発見。名前のない剣の模様の記録——「何度登っても、塔は終わらなかった」。ループの先人の存在を示唆。銀髪の男との関連に蓮が気づき始める

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