表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/53

第25話:二度目の全滅

目を開ける。


天井が見える。


石造りの、見覚えのある天井。


「...三階層か」


休息の間。


泉の水が、静かに湧いている。


柔らかな光が、部屋を照らしている。


体の傷は——消えている。


クロノスに斬られた肩も、掠めた頬も。全て元通り。


【反復回数:約1,800回。ループ3回目】


三回目の、ループ。


二度目の、全滅。


「...またか」


天井を見つめたまま、呟く。


泉の水面に、自分の顔が映る。


疲れた顔。


でも、傷一つない。


「おい蓮、起きてたのか」


翔の声。


振り返ると、翔が泉の水を飲んでいた。


何も覚えていない顔。


初めてこの泉を見つけたときと、同じ顔。


「...ああ。起きてた」


「なんか変な夢見たんだよな。光に包まれて、気づいたらここにいて」


「そうか」


同じ台詞。


一回目も、二回目も、翔は同じことを言った。


「葵は?」


「あっちで寝てる。もうすぐ起きるんじゃないか」


部屋の隅で、葵が静かに寝息を立てている。


何も、覚えていない。


誰も、覚えていない。


俺だけが——全てを覚えている。


翔が真っ二つに斬られたこと。


葵が涙を流しながら消えたこと。


俺が一人で戦い続けて、最後に目を閉じたこと。


全部。


「...」


泉の水を掬い、顔を洗う。


冷たい。


この冷たさだけが、現実を繋ぎ止めてくれる。


立ち上がり、壁に向かう。


前回のメッセージが、刻まれていた。


【時の迷宮で全滅。三階層に戻された。──朝倉蓮】


一回目のメッセージ。


そしてその隣には——ない。


二回目は、メッセージを刻む余裕がなかった。


今回は、残す。


剣の先で、壁に文字を刻む。


ガリ、ガリ、ガリ。


【2周目でも全滅。時間加速斬の持続を伸ばすこと。四人の連携が鍵。──朝倉蓮】


刻み終えて、一歩下がる。


二つのメッセージが並んでいる。


俺だけの記録。俺だけの証。


「俺は何周でも反復する」


自分に、言い聞かせる。


何度全滅しても。何度仲間が死んでも。


俺は繰り返す。


それが——『反復の極意』を持つ者の、戦い方だ。


「蓮ー、何してんだー?」


翔が近づいてくる。


慌てて壁の前から離れる。


「...いや。壁の落書きを見てた」


「落書き?」


翔が壁を覗き込む。


「『時の迷宮で全滅』...?物騒だな。誰が書いたんだ」


「さあな。過去の挑戦者だろ」


「ふーん。...あ、こっちにも何か書いてある。『2周目でも全滅。時間加速斬の持続を——』...時間加速斬?蓮、お前のスキルと同じ名前じゃないか?」


「...偶然だろ」


「偶然ねぇ」


翔が怪訝な顔をする。


だが、それ以上は追及しなかった。


「まあいいや。どうした蓮、また変な顔してるぞ」


「変な顔?」


「なんつーか...遠い目、っていうのか?ここにいるのに、ここにいないみたいな」


「...気のせいだ」


笑って誤魔化す。


翔が「そっか」と引き下がる。


その優しさが、少し痛い。


こいつは何も知らない。


こいつが死ぬのを、俺は二度見ている。


三度目は、絶対にない。


「行こう」


立ち上がる。


「え?もう?」


「時間がもったいない」


葵が目を覚ます。


「...おはようございます...ここ、どこですか?」


「三階層の休息の間だ。説明は歩きながらする」


急ぐ。


一秒でも早く、クロノスのところまで辿り着く。


今度こそ。


三周目。


今度こそ、クロノスを倒す。


俺は螺旋階段に足をかけた。


三度目の挑戦が、始まる。


文字数:約2,500字


到達階層:3階層(休息の間)※ループにより巻き戻し


反復回数:累計1,800回(ループ3回目開始)


備考:仲間の記憶・レベルは全てリセット。蓮のみ反復回数と記憶を引き継ぎ。壁にメッセージを刻む

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ