表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/52

第22話:時喰いとの再戦①

扉の向こうに、そいつはいた。


青白い光に満ちた広間の中央。


巨大な骸骨のような体。両手に握られた、禍々しい鎌。


全身から溢れ出す、時間を歪める紫の波動。


【時喰いのクロノス Lv30】


「...っ」


翔が息を呑む。


「なんだ、あの威圧感...」


葵が一歩後退る。


美咲だけが、弓を構えたまま動かない。


俺は──知っている。


この威圧感も。あの鎌の軌道も。全て。


「来るぞ」


静かに言う。


クロノスの眼窩が、紫に光る。


空気が凍る。


「最初は時間巻き戻しから来る。翔、右に避けろ」


「は?」


翔が聞き返す暇もなかった。


クロノスの左手が振り上げられる。


紫の光が広間を包む──【時間巻き戻し】。


「右だ!」


「うおっ!」


翔が咄嗟に右へ飛ぶ。


直後、翔がいた場所の空間が歪み、時間が三秒前に巻き戻される。


もし避けていなかったら──三秒前の位置に強制的に戻され、鎌の軌道上に立っていたはずだ。


「な...今の、何だ...!」


「時間の巻き戻し。あいつの基本攻撃だ」


「なんでそんなこと分かるんだよ!」


「いいから聞け。次は時間停止が来る。葵、氷結領域で備えろ!」


「は、はい!」


葵が杖を掲げる。


「『氷結領域(フロストドメイン)』!」


氷の壁が四人を包む。


直後──クロノスの右手が振り下ろされ、【時間停止】が発動する。


広間の空気が、凍りつく。


文字通りの、時間の停止。


氷結領域の外では、塵すら動いていない。


「...効いてる。葵の氷で、時間停止の範囲を弱められてる」


「でも...完全には防げてません...!」


葵の声が震える。


氷の壁に亀裂が走る。


時間停止の力が、氷結領域を侵食している。


「長くは持たない。今のうちに攻撃する」


俺は氷の壁を飛び出す。


時間停止の影響が、体にかかる。


動きが重い。空気が固い。


でも──。


「『時間加速斬(タイムアクセルスラッシュ)』!」


【反復回数:257回】


自分の時間感覚を加速させる。


世界が、変わった。


クロノスの動きが──スローモーションに見える。


一瞬だけ。ほんの一瞬だけ。


でも、その一瞬で十分だ。


「『単調斬り』!」


【反復回数:258回】


三連撃が、クロノスの胸部に叩き込まれる。


ガギィィン!


硬い。


だが──確かに、手応えがあった。


「当たった...!」


翔が叫ぶ。


「クロノスに攻撃が通った...!」


葵が目を見開く。


「今よ!」


美咲が弓を引く。


「『炎矢乱舞』!」


無数の炎の矢がクロノスに降り注ぐ。


ドドドドッ!


炎が装甲を焼く。


「翔!」


「おう!『貫通突き』!」


翔の槍がクロノスの脚部を貫く。


ズガァン!


クロノスの体が、僅かに揺らぐ。


「行ける...!」


四人の声が重なる。


──しかし。


クロノスの眼窩が、一層強く光る。


紫の波動が、広間全体に広がる。


【時間巻き戻し】


「...っ!」


空間が歪む。


今の攻撃が──なかったことにされる。


クロノスの胸部の傷が、消えていく。脚部の穴が、塞がっていく。


「嘘だろ...!全部戻ったのか...!」


翔が叫ぶ。


「ダメージが...リセットされた...」


葵が呆然とする。


これだ。


前回も、これにやられた。


時間巻き戻しによるダメージの完全回復。


どれだけ攻撃しても、巻き戻されれば意味がない。


「くそ...!」


翔が歯を食いしばる。


「どうすればいいんだ...!」


「...反復するしかない」


俺は剣を構え直す。


「時間加速斬の持続時間を伸ばす。巻き戻しより速く、致命傷を与えるしかない」


時間加速斬の発動時間は、今はわずか一瞬。


コンマ数秒。


それでは、巻き戻しの発動より先にクロノスを倒しきれない。


「もっと速く。もっと長く」


反復によってしか、解決できない課題。


「『時間加速斬』!」


【反復回数:259回】


「『時間加速斬』!」


【反復回数:260回】


何度も、何度も発動する。


一回ごとに、持続時間が微かに伸びている——気がする。


でも、まだ足りない。


圧倒的に、足りない。


クロノスの鎌が振り下ろされる。


避ける。


反撃する。


巻き戻される。


避ける。


反撃する。


巻き戻される。


終わらない。


「蓮...!」


美咲が援護の矢を放ちながら叫ぶ。


「このままじゃジリ貧よ!」


分かっている。


でも——今は、反復するしかない。


「『時間加速斬』!」


【反復回数:261回】


発動した瞬間——気づいた。


さっきより、ほんの僅かだけ世界が遅い。


コンマ一秒。いや、それ以下かもしれない。


でも——確かに、伸びている。


「...見えたぞ」


クロノスの鎌の軌道。巻き戻しの発動前の、僅かな溜め。


反復すれば、届く。


この先に——勝機がある。


文字数:約2,600字


反復回数:累計261回(+5)


備考:時間加速斬でクロノスに初めて攻撃が通る。時間巻き戻しでダメージリセットされる課題が判明

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ