第17話:加速する成長、再会の炎
六階層──毒の沼地。
階段を登り切ると、紫色の霧が立ち込める不気味な空間が広がっていた。
「うわ...相変わらず気持ち悪い...」
翔が顔をしかめる。
地面からは毒液が湧き出ている。
空気も湿っていて、吸い込むと喉が痛い。
「気をつけろ。毒の沼地だ」
俺が先頭に立つ。
そして──。
沼地の奥から、何かが動いた。
ドロドロと、粘液のような音。
【ポイズンスライム Lv11】
緑色の、人間ほどの大きさのスライム。
体液は毒で、触れるだけでダメージを受ける。
「来るぞ」
スライムが跳ぶ。
俺に向かって。
「『単調斬り』!」
【反復回数:187回】
三連撃が、スライムを切り刻む。
シュッ、シュッ、シュッ!
一瞬で、スライムが三つに分裂する。
そして、光の粒子となって消える。
【ポイズンスライムを撃破しました】
「一撃...」
翔が呆然とする。
「蓮、お前...本当にLv11なのか?」
「ああ。でも、スキルの質が違うんだ」
「スキルの質...?」
「反復の極意。同じ技を繰り返すほど、威力も速度も上がる。俺、もう『単調斬り』を180回以上使ってる」
「180回...!?」
葵も驚く。
「それって...普通の人の何倍も強いってことですよね...」
「まあ、そういうことだ」
沼地を進む。
次々とスライムが現れるが、全て一撃で倒していく。
「『単調斬り』!」
【反復回数:190回】
「『単調斬り』!」
【反復回数:191回】
「『疾風斬』!」
【反復回数:192回】
五連撃が、三体のスライムを同時に切り刻む。
【レベルアップ!Lv11→Lv12】
「圧倒的だな...」
翔が笑う。
「俺たち、ほとんど何もしてないぞ」
「次からは頼む。俺ばっかりだと、お前らが育たない」
「そうだな」
沼地の奥に、扉が見える。
「あれが出口か」
【六階層をクリアしました】
螺旋階段を登る。
七階層へ。
七階層──迷路。
石造りの巨大な迷宮。
「ここは...」
前回と同じだ。
俺は、迷路のルートを全て覚えている。
「こっちだ」
「蓮、なんでそんなに詳しいんだ?」
「勘だよ」
迷路を進む。
罠も全て把握している。
落とし穴、毒ガス、炎の壁──。
全て避ける。
「右に曲がれ」
「え?でも...」
「いいから」
翔が右に曲がる。
その瞬間、さっきまでいた場所に矢の罠が発動する。
ヒュンヒュンヒュン!
無数の矢が壁に突き刺さる。
「うわっ!危ねえ!」
「どうして分かったんですか?」
葵が驚く。
「...勘が冴えてるだけだ」
迷路を進む。
そして──。
「あれ...」
穴に片手でぶら下がっている人影を見つけた。
「誰かいる!」
近づく。
穴の縁に、一人の男が必死にしがみついていた。
「た、助けて...!」
男の声。
見覚えがある。
【山崎健太 Lv7】
四階層で柊グループと一緒にいた男だ。
「お、お願いだ...助けてくれ...!」
山崎が必死に懇願する。
指が滑りそうになっている。
翔が俺の袖を引く。
「おい、あいつ...」
「ん?」
「四階層で、声かけてきたグループにいたやつじゃないか?」
「...ああ、そうだな」
柊グループの一人。
でも、今は一人だ。
「た、頼む...柊に...見捨てられたんだ...」
山崎の声が震えている。
「魔石が...足りないからって...仲間を見捨てやがった...」
前回と同じだ。
助けるぞ」
「マジかよ...」
翔が呆れる。
「でも、お前らしいな」
俺と翔で、山崎を引き上げる。
「あ、ありがとう...本当に...ありがとう...」
山崎が泣いている。
「...礼はいい」
俺は立ち上がる。
「でも、聞きたいことがある」
「何でも...答える...」
「十階層に鍛冶屋がいるって本当か?」
山崎が驚く。
「何で...知ってるんだ...?」
「いいから、答えろ」
「あ、ああ...本当だ...魔石三つで、武器を強化してくれる...」
「そうか。ありがとう」
「それと...柊には気をつけろ...あいつは...もうまともじゃない...」
「分かった」
山崎が迷路の奥へと消えていく。
「よし、迷路を抜けるぞ」
前回の記憶を頼りに、正解ルートを進む。
罠も全て把握している。
「こっちだ」
「蓮、なんでそんなに詳しいんだよ...」
翔が不思議そうに聞く。
「勘が良いだけだ」
迷路を抜ける。
【七階層をクリアしました】
螺旋階段を登る。
八階層へ。
八階層──氷の世界。
吹雪が吹き荒れている。
視界が悪い。三メートル先も見えない。
「寒い...!」
葵が体を震わせる。
「くっ...前が見えない...!」
その時──。
吹雪の中から、影が現れた。
いや、影じゃない。
複数の敵。
【フロストドラゴネット Lv14】
小型のドラゴン。体長三メートル。全身が氷の鱗で覆われている。
そして──三体。
「やばい...!」
「散れ!」
三人がバラバラに跳ぶ。
ドラゴネットが氷のブレスを吐く。
「うわっ!」
ブレスが地面を凍らせる。
その時──。
「そこまで!」
女性の声。
凛とした、鋭い声。
次の瞬間、炎の矢が吹雪を切り裂いた。
ドラゴネットの頭部に突き刺さる。
「ギャアアッ!」
ドラゴネットが燃え上がる。
【フロストドラゴネットを撃破しました】
「!?」
吹雪の中から、一人の女性が現れた。
短めの黒髪、鋭い目つき。弓を構えている。
黒いジャケットに動きやすいパンツ。腰には矢筒。
【桜庭美咲 Lv13】
「大丈夫ですか?」
美咲が冷静に聞く。
「ああ、大丈夫だ」
俺は、美咲を見つめる。
前回、美咲はクロノスに首を刎ねられて死んだ。
その光景が、脳裏に焼き付いている。
美咲の首が宙を舞う光景。
体が崩れ落ちる光景。
光の粒子となって消えていく光景。
「...」
でも、今は生きている。
まだ、何も知らない。
「炎属性の矢...氷には効果抜群ですね」
美咲が再び弓を構える。
「『炎矢連射』!」
五本の炎の矢が、残り二体のドラゴネットに向かう。
「ギャアッ!」「ギャアッ!」
ドラゴネットが次々と燃え上がる。
【フロストドラゴネットを撃破しました】×2
「すげえ...」
翔が呆然とする。
「あなたたちも良い連携です。特に前衛の剣士」
美咲が弓を降ろす。
俺を見る。
「私は桜庭美咲。警察官です」
「俺は朝倉蓮です。工場勤務です」
「結城翔。大学生」
「藤崎葵。デザイナーです」
前回と同じ会話。
「一緒に行きませんか?」
俺が提案する。
「...いいんですか?」
「もちろんです!」
葵が笑顔で頷く。
「俺も賛成だ」
翔も頷く。
「では、お願いします」
四人で拳を合わせる。
再び、チームが結成された。
でも、今回は違う。
俺には、記憶がある。
クロノスの強さを知っている。
美咲が死ぬ未来を知っている。
「今度こそ...」
「全員で、生き残る」
文字数:約3,200字
主人公レベル:Lv12
到達階層:6-7階層クリア→8階層(美咲加入)
スキル:『単調斬り』Lv10(三連撃)、『疾風斬』Lv1(五連撃)、『回転斬』Lv1、『崩壊斬』Lv1
反復回数:累計192回
所持アイテム:魔石×4
ループ回数:2周目
パーティ構成:朝倉蓮(剣士)、結城翔(槍使い)、藤崎葵(氷魔法使い)、桜庭美咲(炎の弓使い)
状況:前回の記憶を活かして効率的に階層を突破。七階層で山崎を救助(翔が柊グループの一員だったことに気づく)。八階層で美咲と再会し、四人パーティ再結成。




