第16話:二周目の始まり、研ぎ澄まされた刃
見慣れた光景。
柔らかな光に包まれた石造りの部屋。
中央には泉。
「三階層クリア後の休息の間...」
確認のため、ステータスを開く。
【朝倉 蓮】
【レベル:6】
【スキル:『単調斬り』Lv10(三連撃)、『疾風斬』Lv1(五連撃)、『回転斬』Lv1、『崩壊斬』Lv1】
【反復回数:172回】
「やっぱり...」
レベルは6。
三階層クリア直後の状態に戻っている。
でも──。
スキルは、全て残っている。
『単調斬り』はLv10のまま。三連撃も使える。
『疾風斬』『回転斬』『崩壊斬』も、全て習得済み。
そして何より──。
反復回数。
172回。
これは、時の迷宮でクロノスと戦った直後の数値だ。
「レベルは戻るけど、スキルと反復回数は維持される...」
つまり──。
俺は今、Lv6だけど。
Lv20相当のスキルを持っている。
「これなら...」
試しに、空中に向けて剣を振る。
「『単調斬り』」
シュッ、シュッ、シュッ!
三連撃。
速い。
Lv6のはずなのに、明らかにそのレベル帯を超えた速度と威力。
残像が見える。
「すごい...反復の効果が、そのまま残ってる...」
これなら、次の階層の敵なんて──。
「次は四階層だな。気合い入れねえと」
翔も葵も何も覚えていない。
当然だ。
ループしたのは、俺だけだから。
俺は、二人には言わないことにした。
ループのこと。
クロノスのこと。
全て、俺だけが背負う。
「よし、行くか」
三人で休息の間を出る。
螺旋階段を登る。
四階層へ。
階段を登り切ると──石造りの闘技場のような空間。
「ここは...」
前回と同じだ。
円形の広間。
そして、広間の入口に──。
四人組の挑戦者がいた。
リーダーらしき男──30代前半、剣士。
【柊 誠 Lv9】
他3名も、Lv7〜8。
「おい、そっちの連中!」
柊が声をかけてくる。
「協力しよう!一緒に倒そう!」
俺は、柊を睨む。
こいつは──。
前回、俺たちを襲った男。
魔石を奪おうとした。
山崎を見捨てた。
「...断る」
俺が冷たく答える。
「え?」
柊が驚く。
「なんでだよ。協力すれば楽に倒せるぞ」
「必要ない。俺たちだけで倒す」
「おい、お前...」
柊の顔が険しくなる。
「後悔するなよ」
「しない」
俺は翔と葵に言う。
「行くぞ」
「お、おう...」
翔が戸惑いながらも頷く。
三人で広間の中央へ進む。
柊グループは、広間の端で様子を見ている。
「様子見か...」
そして、広間の中央に──『それ』が現れた。
鎧を纏った騎士。
中身が見えない。まるで鎧だけが動いているような、不気味な存在。
右手には大剣。左手には盾。全身を覆う漆黒の鎧は、傷一つない。
【リビングアーマー Lv10】
「レベル10か...」
俺はLv5。
翔はLv5、葵はLv4。
レベル差がある。
でも──。
「問題ない」
リビングアーマーが、こちらに気づく。
ゆっくりと、こちらに向かって歩いてくる。
重い足音。ガシャン、ガシャン。
そして──突進してきた。
「来るぞ!」
翔と葵が身構える。
でも、俺は動かない。
「蓮!?」
リビングアーマーの大剣が、俺に向かって振り下ろされる。
俺は──。
「『単調斬り』」
【反復回数:173回】
三連撃。
シュッ、シュッ、シュッ!
リビングアーマーの大剣と、俺の剣がぶつかる。
ガギャァン!
衝撃。
でも──。
「押し負けない...!」
Lv6のはずなのに、リビングアーマーの攻撃を受け止められる。
反復172回の効果。
スキルの質が、圧倒的に高い。
「もう一回!」
「『単調斬り』!」
【反復回数:174回】
三連撃が、リビングアーマーの大剣を弾く。
ガキン、ガキン、ガキン!
リビングアーマーがバランスを崩す。
「今だ!」
「『疾風斬』!」
【反復回数:175回】
五連撃が、リビングアーマーの膝の関節を襲う。
ガキン、ガキン、ガキン、ガキン、バキッ!
関節が砕ける。
「え...」
翔が呆然とする。
「蓮、お前...何だその強さ...」
柊グループも、遠くから驚いている。
「あいつ、Lv6だろ...?なんでリビングアーマーと互角に...」
リビングアーマーが片膝をつく。
「『回転斬』!」
【反復回数:176回】
全方位に斬撃を放つ。
リビングアーマーの全身を斬る。
「『崩壊斬』!」
【反復回数:177回】
重い一撃が、首の関節を砕く。
バキィィン!
リビングアーマーの頭部が吹き飛ぶ。
【リビングアーマーを撃破しました】
【経験値を獲得しました】
【レベルアップ!Lv6→Lv7】
「...一人で倒した」
翔と葵が、ポカンとしている。
「蓮...あんた、いつの間にそんなに強く...」
葵も驚いている。
「ちょっと...コツを掴んだだけだ」
俺は剣を鞘に収める。
柊グループが、こちらに近づいてくる。
「おい...」
柊の目が、ギラついている。
「すげえな...一人で倒しやがった...」
そして、リビングアーマーの残骸を見る。
何かが光っている。
【魔石×1】
「魔石...」
柊が手を伸ばそうとする。
「待て」
俺が剣を抜く。
「それは俺たちのものだ」
「...ちっ」
柊が舌打ちする。
「分かったよ。お前が倒したんだからな」
柊グループが、広間を出ていく。
「覚えてろよ...」
捨て台詞を残して消えていく。
「...」
翔が呟く。
「なんか、感じ悪い連中だったな」
「ああ。関わらない方がいい」
魔石を拾う。
「前回より少ないけど...まあいい」
【四階層をクリアしました】
扉が開く。
螺旋階段。
「行こう」
三人で階段を登る。
途中、翔が聞いてくる。
「なあ、蓮。お前、何か隠してないか?」
「え?」
「いや...さっきの戦い、明らかにおかしかっただろ。Lv6でLv10を一人で倒すとか」
「...反復の極意の効果だよ」
「反復の極意?」
「同じ技を繰り返すほど強くなる能力。俺、ずっと『単調斬り』を使い続けてただろ?」
「ああ...」
「だから、同じレベル帯の奴より、俺の『単調斬り』は強いんだ」
「なるほど...そういうことか」
翔が納得したように頷く。
「でも、それってチートじゃね?」
「...まあ、な」
葵が微笑む。
「でも、蓮さんが強いのは、私たちにとっても心強いです」
「ありがとう」
螺旋階段を登り続ける。
五階層へ。
階段を登り切ると──巨大な闘技場。
【警告:ボス戦です】
「ボスか」
前回と同じだ。
巨大な扉。
扉を開ける。
その先は──円形の広間。
そして、中央に立つ巨人。
【鋼鉄の巨人 Lv15】
五メートルはある巨体。
全身が鋼鉄で覆われ、右手には巨大な戦斧。
「レベル15...」
俺はLv7。
翔はLv5。
葵はLv4。
前回と今回の違いは──。
「俺のスキルだ」
前回は、Lv6でスキルもそのレベル相応だった。
でも今回は、Lv20相当のスキルを持っている。
「レベル差は大きいけど...」
翔が呟く。
「どうする?いったん引くか?」
「...いや」
俺は剣を抜く。
「やってみる」
「マジか!?」
「俺のスキルなら、何とかなるかもしれない」
葵が不安そうに見る。
「大丈夫...ですか?」
「分からない。でも、試す価値はある」
巨人が、こちらに気づく。
赤い光が、兜の奥から灯る。
地響きを立てながら、ゆっくりと歩いてくる。
ガシャン、ガシャン、ガシャン。
「来るぞ...!」
巨人が咆哮する。
「ウオオオオオッ!」
戦斧を振り下ろす。
「避けろ!」
三人が散る。
ドガァァン!
戦斧が地面を砕く。
衝撃波が襲ってくる。
「くっ...!」
前回と同じ攻撃パターン。
でも、今回は違う。
俺は、全て知っている。
「次は右からの横薙ぎ!」
「え!?」
翔が驚く。
その瞬間、巨人が戦斧を右から横に振る。
「本当に...!?」
翔が咄嗟に伏せる。
戦斧が頭上を通り過ぎる。
「何で分かったんだ!?」
「パターンを読んだだけだ!」
俺が突進する。
巨人の脚を狙う。
「『単調斬り』!」
【反復回数:178回】
三連撃が、脚の装甲を斬る。
ガキン、ガキン、ガキン!
「まだ硬い...!」
「『疾風斬』!」
【反復回数:179回】
五連撃が、同じ場所を襲う。
ガキン、ガキン、ガキン、ガキン、バキッ!
装甲にひびが入る。
「いける!」
「『崩壊斬』!」
【反復回数:180回】
重い一撃が、ひびの入った装甲を砕く。
バキィィン!
「やった!」
巨人が怯む。
「翔!葵!今だ!」
「お、おう!」
「『突撃槍』!」
翔の槍が、砕けた装甲の内側を貫く。
「『氷結魔法』!」
葵の氷の矢が、同じ場所を凍らせる。
「ウオオッ!」
巨人が苦しむ。
脚が動かない。
「もう一回!」
俺が再び脚を狙う。
「『単調斬り』!『単調斬り』!『単調斬り』!」
【反復回数:183回】
連続で三連撃。
合計九回の斬撃が、脚を切り刻む。
「『回転斬』!」
【反復回数:184回】
全方位斬撃が、両脚を襲う。
バキッ、バキッ!
両脚が砕ける。
「ウオオオッ!」
巨人が倒れる。
ドオォォン!
地響きと共に、巨体が地面に激突する。
「よし!」
でも、まだ息がある。
巨人が、戦斧を振り回す。
「危ない!」
横に跳んで避ける。
「翔!盾を狙え!」
「分かった!」
翔が盾に向かって突進する。
「『突撃槍』!」
槍が、盾を貫く。
ガギィン!
盾が砕ける。
「いいぞ!」
「葵!魔法を集中させろ!核を凍らせるんだ!」
「は、はい!」
葵が杖を構える。
「『氷結魔法』!『氷結魔法』!『氷結魔法』!」
連続で氷の矢を放つ。
巨人の胸部──核がある場所を狙う。
バキバキバキ!
胸部が凍っていく。
「今だ!」
俺が跳ぶ。
巨人の胸部へ。
剣を構える。
「これで終わりだ!」
「『崩壊斬』!」
【反復回数:185回】
剣を、凍った胸部に叩き込む。
ガギャァァン!
胸部装甲が砕け散る。
核が露出する。
赤く光る核。
「『疾風斬』!」
【反復回数:186回】
五連撃が、核を貫く。
ガキン、ガキン、ガキン、ガキン、バキィィン!
核が砕け散る。
「ウオオオオオッ...」
巨人の咆哮が、途切れる。
巨体が、光の粒子となって消えていく。
【五階層ボス『鋼鉄の巨人』を撃破しました】
【経験値を獲得しました】
【レベルアップ!】
【朝倉 蓮 Lv7→Lv10】
【結城 翔 Lv5→Lv8】
【藤崎 葵 Lv4→Lv7】
「勝った...」
三人とも、地面に倒れ込む。
「はぁ...はぁ...すげえ...勝っちまった...」
翔が笑う。
「レベル差、9もあったのに...」
「蓮さんのおかげです...」
葵が微笑む。
「あの指示がなかったら、無理でした」
「...みんなのおかげだよ」
巨人の残骸から、何かが光る。
【魔石×3】
「魔石が3つ!」
前回と同じだ。
「よし、これで武器を強化できる」
でも──。
「まだ鍛冶屋には行けないな」
鍛冶屋がいるのは、十階層。
「まずは、そこまで行かないと」
【五階層をクリアしました】
扉が開く。
螺旋階段を登る。
途中、青白く光る扉が現れた。
「休息の間だ!」
扉を開ける。
泉の部屋。
三人で泉の水を飲む。
傷が治り、疲労が消える。
「はぁ...助かった...」
しばらく休憩する。
その間に、俺は壁を探す。
「ここは...前回も来た休息の間か?」
壁を見る。
見覚えのある文字はない。
「違う休息の間か...」
なら、ここに何か残しておこう。
俺はナイフを取り出し、壁の隅──床に近い、目立たない場所に文字を刻む。
【スキルと反復回数は維持される- 朝倉 蓮】
「これで...もし次のループがあっても...」
「スキルが維持されることが分かる」
この情報は、重要だ。
ループするたびに、スキルは強くなる。
反復回数も積み重なる。
いつか、クロノスを倒せるほどに。
「よし、行くぞ」
三人で休息の間を出る。
螺旋階段を登り続ける。
六階層へ。
文字数:約3,800字
主人公レベル:Lv10
到達階層:5階層クリア→6階層へ
スキル:『単調斬り』Lv10(三連撃)、『疾風斬』Lv1(五連撃)、『回転斬』Lv1、『崩壊斬』Lv1
反復回数:累計186回
所持アイテム:魔石×4
ループ回数:2周目
状況:レベルは戻ったが、スキルと反復回数を保持。四階層で柊グループとの協力を拒否。五階層ボスを前回と同じレベル(蓮Lv6、翔Lv5、葵Lv4)で撃破。休息の間に「スキルと反復回数は維持される」という情報を壁に刻む。




