↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢(男)と攻略対象(女)、理不尽な乙女ゲームの世界を変える  作者: 文字書きA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/118

第93話:嫌がらせ(前編)

「わからない男ね」


キャサリンは、冷たい声で吐き捨てた。


「あの女の家に、いくらで雇われているのかと聞いているのよ」


「……それを聞いて、何をなさるおつもりですか」


パットは1歩、後ろに下がった。彼女は彼をにらみつける。


「使用人ふぜいが知る必要はないわ。倍のお金を渡すから、私(わたくし)のために働きなさい」


「…………それは」


パットは迷って目をそらした。キャサリンが彼に詰め寄る。


「使用人のくせに、口ごたえする気?」


「いえ、そんな……」


パットはどうにか逃げようとしたが、狭(せま)い船の上ではうまく動けず、背中が手すりにぶつかってしまう。


「私はただ、クリス様と2人きりになりたいだけよ。協力してくれてもいいでしょう。あなたにも得(とく)があるのだから」


キャサリンが懐(ふところ)から、金貨の詰まった袋を取りだす。パットは恐怖で固まっていた。手すりから、体がはみ出す。


(……あ。落ちる……)


海に向かって、体が傾(かたむ)く。キャサリンは彼を助けもせず、金貨袋を突きつけた。


「何をしてるの。早く受け取りなさい」


はいもいいえも返せなかった。パットはただ、恐ろしくて、逃げたくて。死にたくもなかったけれど、狭い船の上ではそこしか行き場がなかっただけだ。

緊張で、時間が止まったように感じる。その空間を、鋭い声が切り裂いた。


「……何をしているのか、聞きたいのはこちらだ」


キャサリンが目を見開いた。手すりから落ちかけていたパットは、その声に驚いて、さらに体を傾けてしまう。重心が偏(かたよ)って、彼は頭から海に落ちそうになった。


「パット!」


駆けだしたクリスは、キャサリンに目もくれず2人の間に割りこむ。そして彼は、パットの体を掴(つか)んで止めた。彼はクリスよりも小柄(こがら)だったから、難なく助けることができる。


「……大丈夫かい?」


呆然(ぼうぜん)としているキャサリンを置いて、彼は青ざめたパットの体を下ろした。床に座りこんだ少年は、クリスの腕の中で震えている。パタパタと、軽い足音が聞こえてきた。


「……いったい、どうなさったの?」


後から来たジュリアが、3人の前で立ち止まる。彼女は息を切らしていた。クリスはその姿を見て目を細める。


「……こみいった話は後にしようか。こんなところで、話すことでもないからね」


ジュリアと共に来たポウムが、気をきかせて人払(ひとばら)いをする。キャサリンはキョロキョロと、落ち着かない様子であたりを見回していた。


「お逃げにならないでくださいね」


ジュリアは笑ってクギを刺(さ)す。キャサリンは急に動きを止めて、目を伏せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。