第84話:準備期間(前編)
クリスは使用人を呼んで、空いた皿を下げさせた。3人だけになった部屋で、ジュリアはつぶやく。
「……国王様は、お疲れが出ただけでしょう」
「そうかもね。だけど僕は、どうしても気になるんだ」
クリスの答えに、ジュリアは目を細める。先を知っている彼がそう言うということは、国王はこのまま、ゆっくりと弱っていくのだろうと。
「……革命はどうするのですか」
彼女の問いに、シリルは真顔になって口を開いた。
「兄さん。あの男がなんと言おうと、オレはあなたに任せたい」
彼と目があう。クリスは静かな声で告げた。
「計画に変更はない。……フィリクスは、この機会を逃すまいとするだろう。僕も同じ気持ちだ。お父様がお元気なら、僕がやろうとしていることには反対されただろうから」
「……それでは革命というよりも、改革と呼ぶべきでは?」
ジュリアが横から口をだす。シリルは渋い顔をした。
「それはそうだが、オレ以外の奴らの中には、自分の手で革命を起こすのだと声高に叫ぶ者もいる。元々、オレも含めて王族や貴族に恨みを抱く人間の集まりだ。自分の手で変えることに、価値を感じるんだろう」
「……そうですか」
ジュリアがため息をつく。クリスはイスに腰かけたまま、顔を上げた。その表情は、前より明るくなっている。
「ひとまずは、船上パーティーを無事に終わらせられるようにすべきだね」
「……こんな状況でもパーティーはやるのか」
シリルは嫌そうな顔をして言った。クリスが苦笑を浮かべる。
「まあ、他の貴族たちはやめる気なんてないだろうね」
「そういうものですよね。結局、自分の楽しみのことしか考えていないのでしょう」
ジュリアが続けて言った。シリルが呆れ顔になる。
「本当に、お前たちだけが例外なんだな」
「そうですね。だからこそ、慎重に進めなければならないのです」
ジュリアが続けて話した。彼女はクリスの側に椅子を置いて、そこに座る。
「……ねえシリル。私はパーティーまで、ここにいたいのです。あなたも一緒にいてくれますか?」
「ああ、もちろん」
シリルは迷わずうなずいた。クリスがホッとした顔をする。
「……ありがとう、シリル。1つだけ、頼みごとを聞いてくれるかな?」
「なんだ?」
シリルは彼を疑わない。それを知っていて、クリスはグラファ公爵家への使いを頼んだ。シリルがすぐに部屋から出ていき、そこには2人だけが残される。
「……それで、どうなのですか」
シリルの姿が見えなくなったころに、ジュリアが口を開く。クリスは姿勢を正した。




