第8話:話し合い(前編)
「……で、これどういうゲーム? ハッピーエンドは?!」
ジュリアの部屋に、入ってすぐに。クリスティアンは、彼女から詰め寄られた。身を乗り出して聞いてくる彼女を両手で押さえて、彼は困ったような顔をする。
「ちょっと待って。順番に説明するから……」
「そんなヒマないだろ! ポウムが死ぬイベントとか、多いんだから!」
「来たばかりなら、大丈夫だよ。1番早い死亡エンドは、1週間ここで働いて、イヤになって逃げだすときのやつだから。メルヴィンとのルートだけは、早めにイベントを起こすこともできるけど……。それをすると、僕とのルートが消えるんだ。メルが僕にポウムを紹介したのなら、まだあいつとのルートには進んでない。だから落ち着いて、話を聞いて」
オタクっぽく、早口で説明されて。ジュリアは目を丸くした。
「……詳しいな?」
「僕がどれだけ、このゲームをやり込んだと思ってるの。自慢じゃないけど、やったことがない君よりも、よほどうまく立ち回れるよ?」
少し気を悪くした様子で、クリスティアンが言葉を返す。ジュリアの中にいる孝太は、それを見てムッとした。
(……お前だって、男のくせに)
彼は目の前にいる人間のことを知らない。なので、見た目と中身の性別は同じだと思っていた。そして、クリスの中身になっている日奈も。
(まあ、ゲームに興味持たない人もいるもんね。特にアプグラは、人を選ぶ作品だし。嫌がる人も、そりゃいるか)
孝太がほとんど素で話していたのに、そこには気づかず、1人で勝手に納得する。そして彼は、ジュリアのエメラルド色の目を見ながら続けた。
「言っておくけど、危ないのは主人公だけじゃないからね。君の死亡ルートも多いよ」
その発言に、彼女は顔を青くする。冷や汗が彼女の頬を伝った。
「……マジ?」
「マジマジ。アプグラを、甘く見ない方がいい」
「主人公と仲良くしてりゃ、大丈夫だと思ってたんだけど……」
「ルート中はまったく出てこないのに、エンディングで死んだって言われて終わることもあるよ。あと、お父さんにはあまり頼らないこと。君は病死したお母さんにそっくりで、あの人は君にお母さんの面影を見てるから、代わりにされるよ。お母さんが病死した理由、知ってる?」
「……たまたま、悪い風邪にかかっただけだって言われて……」
そう言いながらも、ジュリアは嫌な予感がしていた。クリスは真顔で、ゲーム中には明かされない設定を告げる。
「お母さんは、君のお父さんの手で地下牢に閉じこめられていたんだよ。美しいお母さんが、他の男の目に触れないように。お父さんはずっと、隠していた。……僕を嫌ってお父さんに泣きついたら、君もお母さんと同じ道を辿ることになる。そんなのは嫌だろ?」
1/伝う
「物に沿って移動する」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




