↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢(男)と攻略対象(女)、理不尽な乙女ゲームの世界を変える  作者: 文字書きA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/118

第79話:深夜

「おいで、シリル」


「……はい」


震えが止まったシリルの体を抱いて、クリスは広いベッドに向かう。2人は並んで横たわった。


「兄さん……。あなたはなぜ、革命(かくめい)を起こしたいのです? 何もせずとも、この国はあなたの物になるのに」


「それはもちろん、君たちを救うためだよ」


シリルの問いにクリスが答える。優しい笑みを浮かべたままで。


「それに良いこともある。この国を僕たちが支配すれば、君のことを弟のように扱(あつか)っても問題はないだろう? 正式な弟にはなれないかもしれないが、君の望みは少し叶う」


「……はい」


彼の言葉に、ウットリとするシリルを見下ろして、ジュリアは口を開いた。


「私(わたくし)も入れてくださいな」


彼女がベッドにもぐりこむ。客室のベッドは、3人が横並びになってもまだ余裕があった。


「……あ。姉、さん……」


シリルが幸せそうに笑って、目を閉じる。しばらくして、彼の寝息が聞こえてきた。


「まったくもう、あなたという人は……」


「あまり責めないでくれ。こうするしかなかったんだ」 


彼を起こさないように、ジュリアとクリスは小さな声で会話をする。


「わかっています。……でも本当に、これでシリルは味方になってくれたのですか?」


「そのはずだよ。後は僕たちが、彼を1人にしなければいい。だから君も手伝って」


「……なら、公爵家で彼を雇(やと)いましょう」


「いや、そうじゃない。メルヴィンに目をつけられる危険性があるからね。彼には今までどおり、王宮と下町を往復してもらう。ただ、しばらくは、シリルはここに留(とど)まるだろうが……」


「もしかして、楽しんでます?」


ジュリアは冷たい声をだした。シリルが気まずそうに、目線をそらす。


「まあ、少しは」


彼は眠るシリルを見つめた。その目には確かな愛がある。


「本当は、これは主人公(ポウム)のイベントなんだ。僕も大好きで、回想で何度も見返したイベント。シリルのルートじゃないと、出てこない」


クリスの声が上ずっている。ジュリアは思わず、口走った。


「……やめろよ」


分かっている。彼はこのゲームが好きで、キャラクターをみんな愛しているのだと。だから、彼女は。


「お前の1番は、俺だろ」


振り向かせたかった。繋(つな)ぎとめておきたかった。そんな思いが、ジュリアの口を勝手に動かす。クリスは目を丸くして、彼女を見ていた。数分の沈黙。その後に、彼は泣き笑いのような顔をする。


「……君は本当に、素敵な人だね。僕にはもったいないくらいだ」


「今さら気づいたのか?」


「まさか。ずっと前から、知ってたよ」


2人の視線が絡(から)みあう。クリスの目には、うっすらと涙がにじんでいた。


「……もう休め。俺が見ていてやるから」


ジュリアは彼を楽にしてやりたくて、そう言った。クリスは無言でうなずいて目を閉じる。その口から寝息がもれるまで、彼女はずっと見守り続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。