↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢(男)と攻略対象(女)、理不尽な乙女ゲームの世界を変える  作者: 文字書きA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/118

第69話:自分勝手

「……そうですか」


ジュリアは渡された資料を真剣に読んだ。クリスは黙って、その様子を見守る。


「……よくここまで思い出しましたね。設定資料集なんて、何度も読むような物じゃないでしょう」


しばらくしてから、ジュリアは言った。細かい字で書きこまれたことは少し内容が前後していたが、それでもとても参考になった。資料を彼に返しながら、彼女は続ける。


「正直、覚えきれる気がしません。また、困ったときに見せてください」


「うん、分かった」


紙の束(たば)を受け取って、彼はそれを引き出しに入れる。そしてカギをかけ直した。


「……小さなときから、ヒマがあれば書いていたんだ」


引き出しを見つめながら、クリスがつぶやく。


「好きなゲームの世界に来られて、嬉しくて。最初はただ、舞いあがってた。だけどあるとき、考えたんだ。僕だけが幸せになるんじゃなくて、みんなを幸せにしてあげたいって」


「それで設定を書きためたと?」


「うん。誰かの役にたてばと思って」


背を向けたまま、彼は目線を下げて言葉を落とす。ジュリアはその顔が見たくなった。


「……少なくとも、私の力にはなりましたよ」


「……そう?」


クリスはようやく振り返る。彼の表情は穏やかだったが、その目はどこか悲しげに見えた。そんな彼が気に入らなくて、ジュリアはハッキリと思いを伝える。


「ええ、そうです。あなたはそのために、私に資料を見せたのでしょう?」


「……うん、でも……」


彼はまだ迷っていた。目線をあちこちに動かしながら、手を組み替えて、クリスは小さな声をだす。


「思いどおりには、ならなかった」


「当たり前です。私たちにも、自分の意志はあるんですから」


ジュリアの鋭い口調が室内に響(ひび)いた。クリスはやっと、彼女の目を見る。エメラルド色の瞳には、強い意志の光が見えた。


「……君は強いな」


感じいったように息を吐いて、彼は気の抜けた笑みを浮かべる。


「それにとても格好いい。……これからも、頼りにしてるね」


「どうぞ、ご勝手に」


口ではそう言いながらも、ジュリアは内心、嬉しかった。クリスはだんだんと、彼女に何もかも打ち明けてくれるようになっている。


(最初はそれでいい。そうやっていつか、俺にハマって……抜け出せなくなってくれたら、俺の望みも叶うからな)


彼女はゲームのキャラクターを、全員幸せにしようとは思っていない。ただ、彼を手に入れるために。同じ方向を見ていると、彼に思わせておきたいだけだ。


(いいだろ、別に。ここの奴らは、どいつもワガママな奴ばかりだ。それなら俺も、やりたいことをやってやる)


そんなことを考えながらも。表には出さず、ジュリアは美しい微笑みを浮かべた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。