第67話:ルート(前編)
その知らせを受けたとき、クリスは1人で部屋にいた。
「……ジュリアが来た?」
「はい。どういたしますか?」
祭りも終わって気を抜いていた彼は、使用人からの報せを受けて背すじを伸ばした。
「すぐにここに通してくれ」
「分かりました」
使用人が頭を下げる。彼女はすぐに、ジュリアを連れて戻ってきた。
「……ごめんなさい。急に来てしまって……」
「かまわないよ。入ってくれ」
クリスは立ち上がって、彼女を迎え入れる。そして彼はドアを閉めた。
「今日はポウムは一緒じゃないの?」
「……一緒のほうが良かったですか?」
不安そうに、ジュリアが聞く。クリスは穏やかに笑って言った。
「前にも話したと思うけど、ポウムはすぐに死亡フラグを立てるからね。できれば常に、様子を見ておきたいんだ」
「……でも。私はどうしても、あなたと2人きりで話したかったのです」
彼女が目線を下げてつぶやく。クリスはその言葉を聞いて、真顔になった。
「……そう。それなら仕方ないね。座ってくれ」
彼にうながされて、ジュリアはイスに腰を下ろす。うつむいたまま、彼女は続けた。
「……面倒な女だと思いますか?」
「いいや。君が不安になる気持ちは、よく分かるよ」
彼女の隣に椅子を寄せて、クリスは優しい声をだす。
「これも前に言ったけど……。僕はポウムに、パットとのルートを通ってほしいんだ。だから彼女が邸に残っているのなら、それはそれでありがたいことだよ。もしかしたら、彼とのイベントが進むかもしれないから」
「……そういえば、そんな話をしていましたね」
ジュリアはホッとして、表情を緩める。そしてようやく、顔を上げた。
「ごめんなさい。あなたは初めから、キチンと説明してくれていたのに……」
「いや、いいんだ。僕が君に、ちゃんと気持ちを伝えられていなかったのが悪いんだから」
穏やかに微笑んで、クリスが返す。ジュリアは心の中で思った。
(疑っちまって、悪かったな)
急に気が抜ける。イスの背もたれに体を預けて、彼女はなにげなく言葉を落とした。
「……でも、私が転生者でなかったら、さすがにポウムを選んだのではありませんか?」
「そんなことはないよ。最初から、君を幸せにするつもりだった。女の子が家の都合で利用されるだけなんて、絶対に許せなかったから」
「カッコいいですね」
「そうだろう?」
2人は顔を見合わせて、笑いあう。室内に穏やかな空気が流れた。しばらくしてから、ジュリアが聞く。
「……どうしてパットなんですか? ポウムとのイベントで、1番好きだったから?」




