第62話:密談(中編)
「本当に、それだけですか?」
フィリクスが声を低くする。
「あなたには、秘密がある。そのことは、以前から察しておりました。……彼にそれを打ち明けたのでは?」
「まさか」
まったく動じず、クリスは彼を見つめて言った。
「隠しごとなんて、僕にはないよ」
2人が一瞬、にらみあう。ジュリアは黙って、2人の間に割りこんだ。
「……そういえば。あなたは急に、変わられましたね」
フィリクスの目が、彼女に向く。そこでクリスは初めて慌てた。
「違う、ジュリアは……」
「私が何か?」
クリスの前に立ったジュリアは、精いっぱい、背すじを伸ばして胸を張った。
「フィリクス様。私たちにどのような秘密があろうと、それはあなた様には関係のないことです。詮索するのはやめてください」
「……ほう。言いますね」
フィリクスが目を細める。彼は興味深そうに、2人を見つめた。
「関係はありますよ。私は自分の計画を成功させたいのですから。予定外の行動を起こされては困ります」
「街に出ることの、何が予定と違うのです? さしつかえなければ、どうか教えていただきたいわ」
ジュリアは引かない。それを見て、クリスは少し戸惑った。
(この子は、どうして……)
以前はフィリクスを怖がっていたはずだ。なのに、事情を理解した後は、自分なりに戦おうとしている。
(強い子だな)
同じだと、クリスは思った。転生者として、理不尽にあらがう。
(それはもう、私だけの望みじゃない)
力がわく。彼は目に意思の光をやどして、ジュリアの肩ごしにフィリクスを見すえた。しばらく黙っていたフィリクスは、急に様子が変わった2人を見て考えこむ。
(やはりおかしい)
クリスティアンは有能だが、父親の言いつけを破ることはしなかった。そして、ジュリアは。
(美しいが、内面は見られたものではなく、癇癪を起こすと手がつけられなくなる……そういう話ではなかったか?)
今、目の前にいる2人は違う。クリスだけなら、情報の不足で説明はついたが……。
(ジュリア・グラファはそうではない。おそらく何かが起きたのだろう。人の内面を1日で変えるようなことが……。面白い。それが何か、どんな仕組みで起きるのか。解明できれば、私はもっと、力をつけることができる)
フィリクスは転生について何も知らない。ゆえに彼は、考え違いをしていた。とはいえ、それを口に出さない以上、彼の考えが正されることはない。
「では、聞かせていただけますか。あなたがたが、シリルと何をしていたのか」




