第61話:密談(前編)
見ればメルヴィンが笑っていた。その言葉に、ジュリアはなんと返していいか分からず、当たりさわりのない笑みを浮かべた。
「……そうですね」
「何を浮かない顔をして……。君も楽しみにしていただろう? 王妃になれば、今より贅沢できると言って」
「ええ、まあ」
曖昧に答えて、ジュリアは肉料理を小皿に取った。革命のことを、メルヴィンは知らない。
(話すわけにもいかねえし……)
彼女はそっと、クリスを見た。彼はワインを飲みながら、彼女に向かって器用にウインクをしてみせる。
(それでいいんだよ。まだ、彼には何も言えないからね)
言葉に出さず、意思疎通をする2人。それを見て、メルヴィンは少しだけ、不満そうな顔をした。
「……仲がいいのは素晴らしいことだが、どうせなら、僕も仲間にいれてくれないか?」
「はは、すまない。だけど、君が気にすることじゃないよ」
クリスは笑ってワインを飲み干す。ジュリアはその横で、料理を口に入れていた。
(それでいいのか)
彼女は兄を観察する。メルヴィンは不満そうだったが、それ以上は何も聞かず、離れていった。その背を見送って、クリスはようやくひと息つく。
「……ありがとう。何も言わないでいてくれて」
「それはまあ、私も分かっていますから」
小さな声で、ささやくように言葉をかわす。顔も近づけて、親しげにしている彼らは、周りから憧れの目で見られていた。
「……こんにちは」
話しこんでいると、いつの間にかフィリクスが2人に近づいてきていた。彼はワイングラスを取って、軽く頭を下げる。
「バルコニーに来てください」
去り際に、彼は小声で用件を伝えた。ジュリアは食べ終わった皿を下げさせて、代わりにワイングラスを持つ。クリスも同じように、空になったグラスを取り替えた。
そのまま2人は、黙ってバルコニーのほうに向かう。バルコニーでは、フィリクスが月を見上げていた。
「よく来てくださいました」
彼は広間にいたときとはまったく違う顔で、2人を迎える。クリスがニッコリと笑って返した。
「それはもちろん。僕たちは仲間なんだからね」
「……最近、シリルを連れ回しているという報告が入っているのですが」
「おや、ダメだったかな? 彼が自分の意志で、僕たちについてきてくれたんだけど」
「シリルは私にも心を開かないような男です。まして、会ったばかりのあなたに……」
フィリクスの表情が険しくなる。彼を見つめて、クリスは柔らかな笑みを浮かべた。
「僕は彼を理解したくて、共に行動しているんだ。君は彼を利用しているだけだろう? その違いだよ」




