第6話:主人公との出会い(前編)
(わー! これ主人公がお手伝い中に割って、メルにお仕置きされちゃうイベントに繋がる純金の花びんだ! 実際に触れるのエグ〜!!)
メルヴィンに屋敷への滞在を許されたクリスティアン(日奈)は、上機嫌で探検を始めた。手元にスマホがあったら、確実に写真を撮りまくっていただろう。
(……なんだあれ)
ジュリア(孝太)はなんとなく、遠くからその様子を見ていた。
(なんか、はしゃいでねーか……? こういうのが好きなのか? ちょっとカワイイ……って、いやいや)
余計なことを考えそうになって、彼は慌てて頭を振る。
(あいつは男だ。そりゃあ俺も、今は女だけど……。心までそうなったつもりはねえ)
ベースが中世ヨーロッパの今いるゲーム世界では、同性愛も結婚しないことも異端とされる。それでもと、彼女は思った。
(せめて、女と仲良くなりてえよな。……このゲームの主人公ってどんなだっけ)
姉に見せられたスチルは、どれも主人公の顔が見えなかった。だから彼は、その顔を知らない。けれど。
「……そうだ、メル。最近、また1人辞めたんだろう? 人手は足りてる?」
クリスの中にいる日奈は当然、キャラクターの顔を覚えていた。彼女は屋敷の中を行ったり来たりしているメイドの中に、見覚えのある少女がいると気づく。そして普段どおりの態度を心がけながら、一緒にいるメルヴィンに聞いた。彼は大したことはないと言いたげな顔で答える。
「ああ。新しく人を雇ったからね。ほら、ちょうどそこにいる。……ポウム! ちょっといいかな」
「……は、はい! なんでしょうか、ご子息様」
呼び止められた少女が、不安そうな顔で立ち止まって振り返る。彼女こそ、乙女ゲーム「Apple∮Gurafa」の主人公。ポウムというのはプレイヤーが変更する前につけられている、初期名だ。
「僕の友人を紹介しようと思ってね。君も知っているだろう」
その顔を見て、感動で震えている日奈のことは知らず。メルヴィンは、彼女をクリスティアンの前に連れてくる。
「もちろん知っております。クリスティアン殿下、ですよね……?」
「そう。この国の第1王子だ。くれぐれも失礼のないように」
そんな会話を聞きながらも。クリスティアンは、ずっとポウムを見つめていた。その姿を見て、ジュリアの中にいる孝太もようやく察する。
(……もしかして、あの子か? 主人公って……)
小柄な体。クセのある茶髪。丸いタレ目は、髪と同じ色をしている。全体の印象は少し地味だが、小動物のような愛らしさを感じる見た目は、彼の目から見ても可愛かった。




