↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢(男)と攻略対象(女)、理不尽な乙女ゲームの世界を変える  作者: 文字書きA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/117

第54話:祭りの前・市場(中編)

「これでいいのか?」


しばらくしてから、砕(くだ)いた氷に砂糖水をかけた物を持って、シリルが階段を上がってきた。机に置かれた食べ物は、どれも綺麗に1人分だけ残されている。


「……なんでそんなに気を使うんだ」


口調(くちょう)はキツいが、彼の表情は穏やかだ。クリスはそのことにホッとしながら、氷の欠片(かけら)を口に入れる。かき氷とは似ても似つかないその味は、期待したものとは違っていた。


「……これじゃない」


彼の横で、ジュリアが不満そうに言う。


「ねえ、他の機械はともかくとして、たこ焼き器くらいは作れませんか? 丸いくぼみをつけた鉄板(てっぱん)なら、なんとか……」


「タコもいなくはないだろうしね。単にこっちだと、食べる習慣がないだけで」


「何の話をしてるんだ」


2人の会話に、シリルが割りこむ。彼は自分のために残されていた焼き魚をかじりながら、目を細めて2人を見た。


「夏より作りやすいだけで、今の時期(じき)でもそれだけの氷を用意するのは大変なんだぞ。お貴族様には分からねえだろうが……」


「もっと美味しくできるってことだよ」


クリスは怯(ひる)まず、胸を張った。


「まず、氷は砕(くだ)くんじゃなくて、もっと細かく削(けず)るんだ。上にかける水も、砂糖を入れるだけじゃなくて、味をつけた方(ほう)がいい。今度、僕が見本を作ってあげるよ」


自信に満(み)ちた表情で言いきる彼を見て、シリルは呆れ顔になった。だが彼は、それ以上は何も言わず、魚を食べ進める。


(……こいつ、ツッコむのを諦(あきら)めたな)


その姿を見て、ジュリアは察(さっ)した。シリルはクリスのことが気に入っているから、彼が何を言っているのか分からなくても、飲みこむことにしたのだろうと。


(まあ、それならそれでいいが……)


外から人の声が聞こえてくる。太陽は昇(のぼ)りきっていて、窓から差しこむ明るい日差しで、部屋の中は照(て)らされていた。


「……明日は王宮でパーティーですね。私(わたくし)は、ここで気楽に過(す)ごす方が好きなのですが」


少しして、口の中で小さくなった氷を転(ころ)がしながら、ジュリアはポツリと呟(つぶや)いた。クリスも遠い目をして、口を開く。


「こうしてわざわざ、顔を隠(かく)して移動するのも面倒だしね。いつか、堂々(どうどう)とここに来られるようになるといいな」


(それはお前が王になったくらいで、どうにかなるとは思えねえが……)


笑い合う2人を見ながら、シリルは黙って考える。


(ここのヤツらには、オレが誰と組んでるのかも言ってねえし、何をするのかも明かしてねえからな。革命(かくめい)を起こすのは、オレのエゴでしかねえ)


貴族と平民。その差を恨(うら)まない日は、彼にはなかった。けれど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。